Z w i l l i n g 9
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屋上での一件後、翌日
朝のHRのあと、忍足は岳人に昨日のことを話していた
机にうな垂れながら
「あー…もう、マジ、ホンマに落ち込むわ。」
「まだ言ってんのかよ。にフられたこと。」
「お前…ハッキリ言うやないか。」
「お前が言ったんじゃん。つか、ちゃんと言ったわけじゃねんだろ?」
「そうなんやけど。」
あの後、ご飯の後
は跡部に聞こえないように
小さく言った「ごめんね。」と
俺が何を言いのか、はちゃんと分かっていた
その上で、逸らして、それでも
ちゃんと「ごめんね」と、いわばトドメをさしてくれた
自分が、恋愛対象として見られていない
…跡部は、それを分かっていたんだろうか
だから、俺がの傍に近づくのを許していたのだろうか
「あのシスコンめ…て…そこまで分かるわけないか。」
「え?」
「跡部って、のこと溺愛しとるよな。」
「んーまあ…でも俺は逆な様な気もするけど。」
「が、跡部を?」
「うん。」
「んー…」
まぁ、それでもおかしくはないが
は跡部と違って、勉強も運動も苦手で
人付き合いも苦手で、いつも跡部に守られるようにしている
「まぁそんなん関係なしに惚れたんやけどなー…」
「最初っから、相手にされてなかったんだろー」
「岳人クン…案外酷いこと言いよんな。」
「のタイプはきっと跡部みたいな人だって!」
何故か自信たっぷりに
岳人は満面の笑顔で言った
忍足はそれに苦笑して、頷くしかなかった
「フられたんだって?“侑ちゃん”。」
「イヤミか…酷い女やな。」
「慰めなんて期待してないでしょ。忍足君。」
部活に向かおうと廊下を歩く忍足を
そんな一言で涼は引き止めた
少し楽しげに、意地悪く笑みながら
「から聞いたん?」
「ちょっと様子違ったからね、昨日の屋上で。」
「さすがー…て言うとこか?」
「やっぱ双子だからかな…」
「なん?」
フォローもせずに
涼は脈絡のないことを言い出し
忍足はげんなりしつつも、普通に聞き返した
「姉の恋愛対象になってないって、弟は分かってたのかな?」
「…そんなんまでシンクロするんか。」
「気持ちの変化だから、そうなんじゃん。」
「なんや、それ。跡部には分かってたんちゅーか。」
「さぁ…」
「なぁ」
更にげんなりしつつ
忍足は岳人と話していたことを思い出し
想い人であった人の親友に聞いてみた
「跡部が空を溺愛しとるんと思う?」
「は?」
「それとも逆やと思う?」
「んー…後者かな。」
「あーやっぱ?」
「でもさー…正直分からない。分かるようで分からない。」
「…」
涼の言ってることが、理解できないわけじゃなかった
単純そうに見えて
あの双子は案外複雑な気がする
見たままでないような気がする
けれど
どれだけ見ても、どれだけ話しても
「見たまま」しか分からなかった
「まぁ、いいんじゃない。」
「まぁな。ええけど。」
「愛し愛されでしょ。」
「…が他の男好きになるとか、あるんやろか。」
「それは跡部もでしょ。まぁアンタはフられたけどね。」
「お前、ホンマ酷い女やな…。」
「褒め言葉として受け取っとく。」
にこりと微笑んで
涼はの居る図書館へ向かい
忍足はため息を吐きつつ部活へ向かった
「。」
「涼ちゃん。用事終わったの?」
「うん、たいしたことじゃなかったからね。」
「そ?」
いつもの図書館の窓辺で
はテニス部を眺めていた
こうしてみてると、やっぱり「が跡部を」の方なのか
「ねぇ、。」
「なにー?」
「跡部のこと好き?」
「景ちゃん?」
「うん。」
「大事な人だよ。当然。」
今更何―?と笑いながら答えるに
違和感は特に感じない
好き、じゃなくて大事か、とも思ったけど
好きより大事の方がオオキイような気がして
「そっか。ごめん愚問だったね。」
「ええー?」
「私なんか本借りてくる。」
「あーそう?いってらっしゃーい。」
不思議そうな顔をしながら、は涼を見送る
この変化は、本当に
ただのキッカケに過ぎなかった
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