Z w i l l i n g 10






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「こ…んにちは。」

「? こんにちは、鳳君。」




部活中、部室前で会った目の前の女性はにこりと笑った

挨拶が詰まってしまったのは

一瞬跡部先輩かと思って驚いたから




初めてあった時も

口をあけて、間抜け面で、固まってしまった

あまりにも似てると思ったから





「今見ればそうでもないんだけどな…」

「え?」

「あ、なんでもないです。跡部先輩待ってるんですか?」

「そうだよ。鳳君は何してるの?」

「ガットの張替え…ちょと抜けてきたんです。」





学年が違うせいで、あまりこの人とは会わない

似てるけど、跡部先輩との雰囲気は違う

女性なんだし、性格も違うみたいだし、当然かもしれないけど





「…景ちゃん、ご機嫌ナナメだね。」

「…何かあったんですか?」

「さぁ…部活時間前までは、そうでもなかったんだけどな。」

「…ああ、そうなんですか。」





そういう話も、慣れたと思う

始めは、なにを言っているのか分からなかった

シンクロなんて、知らなかった










『気持ち悪ィ…』

『えっ、跡部先輩大丈夫ですか?』

『あー…』

『体調悪いなら帰った方が…』

『別に俺が悪いわけじゃねぇから。』

『…はい?』





懐かしく、昔のことを思い返す

一個前の学年の頃、部活の前の部室で

跡部先輩がロッカーに寄りかかりながら呟いていた





『携帯取ってくんねぇ?』

『え、あ、はい。』

(ピピ)『…。』

『…』





もしもし、とも言わずに

跡部先輩は電話の相手の名前を呼んだ

きょとんとしながらその様子を俺は眺めた





『何食ったお前。』

 『ごめん。賞味期限切れてたパン食べちゃった…。おかしいなぁ』

『おかしいなぁじゃねぇよ、バカ。』

 『薬飲んだから、もうすぐ収まると思う。気持ち悪いね。』

『冷静に言うな。布団から動くなよ。』

 『うん、動きたくない。』





すぐ傍にいたせいで、相手の声も聞こえた

意味不明の会話だった

あいては彼女?彼女に何の関係が?





『おはよーさん。』

『あ、忍足先輩。おはよう御座います。』

『ん?何しとるん、跡部。』

『あ、えっと、なんか先輩体調悪いみたいで。』

『それで電話?…ああ、ちゃんか。』

『跡部先輩の彼女ですか?』

『彼女じゃねぇよ。』





電話を終えた跡部先輩が不機嫌そうに答えた

ああ…「」…そういえば

跡部先輩の双子の姉…クラスメイトが話していた気がする





『あの…その、お姉さんとなんの関係が?』

『お姉さんはやめろ。でいい。』

『え…あ、はい。』

『跡部とちゃんはシンクロしてるんよ。』





あまり説明する気のない跡部先輩の変わりに

忍足先輩が軽く笑みを浮かべながら答えた

ソレを聞いた瞬間、少しぞっとした





そんなこと本当にあるのかという感動か

ちょっと気味が悪い…そのどちらのせいかは分からない

けど、“興味”は持った




『宇宙人…?』

『は?』

『うちに帰ったら、合体したりしないんですか。』

『馬鹿じゃねぇの、お前。』





間髪入れず

真面目な顔で跡部先輩に突っ込まれた

忍足先輩は笑っている




だって、本当にそう思った

2人は本当は1つで

今はばらばらだけど

家に帰ったらまたくっつく

だから全ては共同、共用、…なんだろう





『双子なんやから、あながち間違ってないんやない?』

『どのレベルまで遡るんだよ。』

『不便じゃないですか、嫌じゃないですか?それ…。』

『…思ったことねぇな。』





顔をそらし、跡部先輩は背を向けた

でもその少し間を置いて続けた言葉も聞こえた

『安心できる。』




先輩とはその頃まだ面識がなかった

当然2人が一緒にいるところは見たことが無かった

けど、安易に想像が出来た













先輩は愛されてますよね。」

「誰に?」

「跡部先輩。」

「そうかな。」

「両親とかより愛されてる気がします。」

「あはは。あながち間違いじゃないかも。両親ほとんど家にいないし。」

「そうなんですか。」

「コノ通り、私は一人じゃなにもできないしね。」





そういえば、運動も勉強もできないって言ってたな

クラスメイトが

本当だろうか





2人は元は一つだったんだから

頭もいいのだって、運動ができるのだって

同じじゃないんだろうか




「あはは、双子だからって、そんなわけないよ。」

「…そうですか。」

「そろそろ戻らなくていいの?」

「あ。怒られる。」

「頑張ってね。」





そう言って手を振る彼女に、特に疑問は抱かなかった

でも

俺は宇宙人説を未だ信じている







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