Z w i l l i n g 34

















髪を、染めた

景ちゃんと同じ色をしていた髪を

そして住む場所さえ、あれから本当に変えた






ちゃん。」

「…侑ちゃん。」

「一人暮らしは順調なん?」

「うん、家具も丁度そろえ終わったところ。」

「あの駅前のでっかい高級マンションやろー?さすがお嬢やなぁ…」

「そんなことないよ。侑ちゃんもがっくんとか連れて遊びに来てね!」





放課後の廊下で、ちょっと久しぶりに侑ちゃんに声をかけられた

彼はテニスバックを肩に、きっとこれから部活だろう

一方の私は当然、帰ろうとしていた所だった





「帰るん?」

「そうだよ?」

「最近は、寄っていかへんな?」

「んー。用事、あるしね。」

「仁王とは順調なわけやね。」

「…うん。立海寄ってくから、またね?」

「ん。気ぃつけてぇな。」

「侑ちゃんも部活頑張って。」





何か言いたそうな彼、分かってる

涼ちゃんも、岳人も、チョタ君も、ジロー君も

皆、私を寂しそうな目で見るようになったのも、知ってる





でも私は幸せだった

景吾がいなくても

自分を好きだと言ってくれる人がいるから














「…はぁ」




電車に乗って、バスに乗って、少し走って

あがった息を整えながら

私は立海のテニスコートを目指した





「…お疲れ様、仁王君。」

「あぁ…いつも来させてすまんの。」

「いいの、帰宅部だもん私。」





フェンスの傍に居た彼に声をかければ

いつもと同じ台詞を言って、同じように軽く髪を撫でてくれる

そして皆にも軽く挨拶をしてから、私は少し離れたベンチに座って彼を待つ





それが、今の日常

平穏で

間違いなく、幸せだった










「じゃあ、また明日ね。」

「ん、またメールする。」

「分かった。」





部活が終わり、帰り道

帰りだけは、いつも送ってくれる

遠くなるからと、はじめは断っていたけれど





そしていつもの場所で別れて

彼の後ろ姿が見えなくなるまで見届ける

この瞬間が、やっぱり、どうしても、寂しい





家に帰っても、当然誰もいないから

一人暮らししたことを後悔しているわけではないけど

そんなことを思いながら歩いていたら、携帯が鳴った





「…家から。」





誰だろうと思って出ると、電話口からは久しぶりの母の声が聞こえた

出張から一時帰宅したから、夕飯を一緒に食べようと

既に迎をよこしたとのこと





正直、母と食べるのはどっちでも良かったけれど

一人で食べるのもなんだし、と私は迎を待つことにした

景吾も、いるんだろうか














「びっくりしたわ。が一人暮らしするんなんて。」

「…そう?」

「そうよー。」





あれから直ぐ迎えがきて、夕飯の支度も出来上がっていた

母親と向かいあって座って

隣りには、居ないかな、と思っていた景吾もいた





「一人暮らしはどう?」

「楽しいよ。」

「寂しくないの?」

「平気だよーもうそんな子供じゃないんだから。」

「あら、でもあなた甘えっこだったじゃない。」





にこにこと、いつもより饒舌に母は話す

けれど、そんな母に甘えていた記憶は殆どない

勿論ここにいない父にも…昔の家でも





「本当、景吾にベッタリだったでしょう。」





一瞬、ピタリと手が止まる

景吾の方は見なかったけれど

景吾も止まった気がする





「そ、だった?」

「ええ。妬けるくらい。お互い信頼しきってた感じだったわ。」

「…ふぅん。そうだったかな。」





嘘、そうだったかな、なんて

本当は覚えている

というか、景吾といたことしか覚えていない、殆ど





だって私にとって景吾が何より一番で

自分を守ってくれる人で、絶対的な存在で

誰よりも”わかる”ことができたから





「景吾も、よくの一人暮らし了解したわね?」

「…が決めることだろ。」

「そうだけど…傍から離すと思わなかったのよ。」





ふふ、と母親は楽しそうに話すけど

聞きたくない

だって、もうそうじゃないから





別に私は景吾の一番じゃないし

もう傍にいないし、いなくていいんだし

…何も、どうせ、わからないから





「別に本当の姉弟じゃないんだから…遠慮することないのよ?」

「「―――は?」」

「…なんてね、冗談よ。」





笑いながらいうことじゃない

てゆうか、何言っているんだろう、この人

私と景吾は双子なんだよ、姉弟なんだよ





「…言ってなかったけど、私、恋人いる。」

「え?本当?侑士君!?」

「ち、違うよ。違う学校の、人。」

「あら、知らなかった!今度あわせて?」





なんとなく、言ってみた

母はまた楽しげに、パパにも教えてあげなきゃね

なんて言ってる、と思ったら






「景吾は?恋人、いるの?」

「…」

「…」






引越しすることは、親がOKをしてくれたあと

景吾に伝えた

散々間をあけた後、そうかとだけ景吾は答えた





それ以来

学校でたまに顔を合わせる以外

ほとんど話すことはなくなったいた





だから、勿論

そんな話も聞いていない

少なくとも学校でも、誰かといる姿は見ていない






「…いる。」


「やっぱり!どんな子?景吾も家連れてらっしゃいね。」

「気が向いたらな…。」






え?





手に持っていたフォークとナイフが

本格的に止まった

咀嚼していたものを、ごくんと飲み込む





味も何も感じない

ただの異物が、胃にごとんと落ちた感じ





だって

いまなんて言った?





いる?

だれに?

なにが?





「…景ちゃん…彼女…できたんだ。」

「…ああ…。」

「好きな子?」

「…そりゃ…そうだろ。」

「大切な人?」

「付き合って間もねぇのに、そこまで考えてねーよ。」

「………そ…。」





その後何を話したか殆ど覚えてない

それから直ぐ食事を済ませ

私は自分の家へと帰った











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