Z w i l l i n g 32











「オレンジジュースで良かったか?」

「うん。ありがとう。」





立海の文化祭、仁王君のクラスの喫茶店

丁度当番の終わった彼と一緒に休んでいた

メイド服を着た女の子が忙しそうに動いている





「根強い人気だね、メイド。」

「好きじゃねえ皆…」

「可愛いね。」

「きたいんか?」

「…遠慮しとく。」





ふと、からかうように彼が笑う

苦笑いを返してから

セルフで持ってきてくれたジュースを口に含んだ





「今日は…ちぃと雰囲気が違うの。」

「…髪切ったから?」

「それもあるが…」





じいと、初めてあった時の様に見られる

今日朝一番に会った時の間は

そのせいだったのかな





「凄く可愛いよ。」

「わっ、幸村君!?」

「こんにちは。ごめんね、デートの邪魔して。」

「幸村…」

「冗談だよ。怒らないで。」





にこにこと笑いながら

幸村君は私の隣に座った

手にはカルピスを持っている





「今朝はありがとう、学校案内してくれて。」

「仁王が終わるまでだったしね。全然構わないよ。」

「ごめんね、ちゃんと来るって言ってなかったから…」

「ツメが甘いねえ仁王は。」

「うるさいの…」

「…」





本当に連絡もせず来てしまったから

来てから仁王君が午前中当番だと知った

それで涼ちゃんが幸村くんを呼んでくれて、案内してくれた





ちゃん、放っとくと誰かに連れてかれそうだったし。」

「え?」

「可愛いから。雰囲気変わってなおさらね。」

「…そんなに違うかな?」

「仁王もそう思ったよね?」

「…んー。」





少し間を空けてから

彼は相槌を打った

私はまた苦笑しながら、窓に映る自分を見た





髪がさっぱりしただけだと思うし

化粧は…前は適当だったからな

あとは、気持ち的なものだろうか





「…何かあった?ちゃん。」

「何もないよ?今日が、楽しみだっただけ。」

「そっか。…じゃ、僕そろそろ行くね。」

「うん。あ、涼ちゃん楽しんでる?」

「赤也達に振り回されてるよ。帰る頃メール頂戴って。」

「わかった。涼ちゃん宜しくお願いします。」

「二人も楽しんでね。」





終始笑顔で、ひらひらと手を振りながら

幸村君は教室を出て行った

それを見送ってから、私は仁王君に視線を直す





当番が終わってから

一緒に回ろうと言ってくれたのは仁王君

断る理由はなかった、そうできたらと、思ってたのは事実





「…なんか、今日変かな?」

「いや、んなことはない。」

「ない…けど?」

「ちと、無理してるように見える。」

「…」





飲み干したジュースのカップを置いて

私は外に出ようと促した

彼は拒むことなくついてきてくれる





「仁王先輩、その人彼女さんですか?」

「綺麗な人ですねー」

「その制服氷帝?」





廊下ですれ違う子達に声をかけられる

人気あるんだなぁ

他のテニス部の子達もそうだったけど




仁王君はちょっと困ったように

そうじゃないと小さく返して

足早にそこを抜けようとした





私はそんな姿に気づかれないように笑って

同時に少し悲しくなって

自然と、彼の空いた左手を取った





彼は少し驚いたように、私を見て

何も言わず

握り返してくれた





その手が思ってたよりずっと暖かくて

涙が出そうになった

少し顔を伏せていたら、仁王君に腕を強く引かれた





それを拒むこともなく

引かれるまま

見慣れぬ廊下を、駆け抜けた










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