Z w i l l i n g 31
「ん…」
携帯のバイブ音で、目が覚める
重い瞼をあければ、そこは真っ暗で
あのまま眠ってしまったと気づく
体も気分も重い
そして、何も感じない
ひとり
『もういい。』
自分が景吾に言った言葉を思い出す
もういい、私のことはもういい
もう守らなくていい、傍にいなくていい
「愛してくれなくていい。」
だって
先に私を突き放したのは景吾
景吾だから
どうしてシンクロしなくても一緒なんていえる?
どうして本当は傍にいないのに、いつも一緒なんていえる?
何も繋がりなんてないのに、どうして
言葉だけの、慰めでしかない
景吾の言葉は
だって、景吾に得られるものなんてない
私といても、何も得られるものなんてない
私を迎に来たといったあの時も、きっと両親に言われただけ
優しい子だから、きっとそう
それでも私の方は、景吾に多くのものをもらった
私は変われた
だから、もう一人でも大丈夫
私は一人で、ちゃんと歩いて
好きな人を見つける
景吾の邪魔にならないように、一人で
愛せる人を
愛してくれる人を
景吾とは違う、守ってくれる人を
「…さよなら。」
景吾を、開放してあげよう
きっとそのために
シンクロしなくなったんだろうから
携帯をひらき、さっきの着信履歴を見る
相手は涼ちゃんだった
そのままリダイアルボタンを押す
『…、大丈夫?』
『大丈夫。ごめんね迷惑かけて。』
『それは構わないけど、跡部と話した?』
『必要ないよ。もう大丈夫だから。』
『、』
『文化祭、楽しみにしてるね。』
『…分かった。あんたがそれでいいなら、それでいい。』
『うん。』
次の日の朝、久しぶりにきちんと化粧をした
景ちゃんがいつだったかやってくれた時のように
昨日、あれから切った髪をきちんと整えて
そして綺麗にアイロンの入った制服を着る
鏡の前でしっかりと笑みを作る
ひとりでも、だいじょうぶ
「行ってきます。」
「お帰りは何時頃になりますか?」
「ん〜、ご飯食べてくるかもしれないし、分からないや。」
「遅くなるようでしたら、ご連絡下さい。お迎えに参ります。」
「ありがと。」
「行ってらっしゃいませ。」
景吾とは会わなかった
少しだけ、逃げるように
家を後にした
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