Z w i l l i n g 30
昔離れ離れになった双子の弟
それが景吾
キツイ筈の視線、でも怖くなくて、じっと視線を合わせた
女の私より綺麗な気がする
そりゃ私は化粧もしてないし、顔色も悪く
髪も伸ばしたい放題
一方の彼はきっと女の子にとったら凄く魅力的で
何より目を引いたのは、自信に満ちた、真っ直ぐな目
急に自分が情けなく感じるほど
双子なんて関係ない
所詮は、他人だと、そう思いたいのに
彼は目線を外すことなく、じっと自分を見てきた
『…準備。』
『え?』
『引っ越す準備だ、手伝う。お前の部屋は?』
『…2、階の端。』
急に口を開いたと思った彼は
そう言って2階に向かった
私は慌ててその後を追った
『荷物、これだけか?』
『うん。』
『…少ないな。』
『そうかな…。』
欲しいものなんかなかった、もらうものもほとんど無かった
だから、私の部屋は酷く殺風景で
女の子の部屋とは思えないだろう
『ここら辺のものは?』
『…いらない。必要ないから。』
『…』
急に無言になったと思ったら
彼がまたじっと視線をこちらに向けていた
私はベッドに腰掛けながら、戸惑いつつも視線を合わせる
そして
次に言われた言葉に
一瞬言葉を失った
『悪かった。』
何が?という疑問が浮かんで、消えた
…分かった気がしたから
彼の、感情が、何故か伝わってきた気がしたから
『…景吾が、迎えに来てくれたんだよね。』
『ああ。お前を迎えに来た。』
悲しくて、暖かい感情
本当に暖かくて、嬉しくて
泣いた
彼は何も言わず抱き締めてくれて
そんな風に抱き締められたのは初めてで
それまで溜めてきた全ての涙が出ていく気がした
それから直ぐにその部屋を出て
景吾と一緒に全ての家具や雑貨を新しく揃えた
両親と一緒に出かけることはなかった
その頃からもう既に
私の中では景吾だけで
自分を救ってくれるのも、守ってくれるのも景吾だけで
本当に愛してくれるのも景吾だけだと思っていた
景吾も言ってくれたから
彼に見合うために、自分自身も変えていった
『変?』
『似合うんじゃねーの。』
『景吾に似てるもんね。』
『関係ねぇだろ。』
笑いながら、言う
久しぶりに、髪を切った
腰まであった髪を、ギリギリ肩につくぐらいに
前髪も切り、すっきりと顔を出した
後は、化粧ッ気の一切無い顔
化粧品だけはとりあえず揃えたのだけれど
『俺がやる。貸してみろ。』
『え?景ちゃん出来るの?』
『お前よりうまくできる気がする』
『…まあ。てか器用だねぇ、なんでもできる。」
『関心してねえで、できるようにしろ。』
化粧道具をひろげ
髪をくくられる
鏡越しに目線があって、思わず笑う
それから手際良く、化粧を施し
あっという間にナチュラルメイクが仕上がる
まじまじと私は鏡を見つめる
『…別に化粧なんてしなくてもいいけどな。』
『そう?』
『ああ。』
『景ちゃん、買い物行こう。』
『このまま行くか?』
『うん。』
町へ出れば、視線を浴びた
何より似ていた顔が目立って
女の子からの視線は景ちゃんへだろう
自分なんてどうでもよかった
綺麗にするのは、景吾のため
一緒に並んで、恥ずかしくないように
『制服、届いてたか?』
『うん。』
『もうすぐね、入学式。』
久しぶりの、両親との食事
にこりと、父と母は笑いながら言った
もうすぐ、中学の、氷帝学園の入学式だった
何事もなく安穏に過ごせるは思ってなかった
ただでさえ学校にはいいイメージを抱いてなかったのもあるし
予想は、していた
『双子?』
『かっこいー…』
『女の子と男の子なのに、似てるね?』
最初はただ、好奇の目
そして当然のように、景吾は注目を浴びていくようになる
それを見て、私は思うようになった
景吾の邪魔をしてはいけない
私は何もする必要はない
それから私はまた変わった
勉強をやめた、体育などのスポーツに参加することもやめた
化粧もやめて、髪は整える程度になった
景吾だけが、居ればいい、幸せならいい
再び、殻にこもった
けれど、それは全然怖くなくて
昔みたいに悲しくも、辛くもなかった
『さっき、聞いたシンクロの話だけど。』
『何?』
『マジなの?』
『うん。』
『どのくらい、正確に?』
『間違ったことはないよ。』
殻にこもってから、できた唯一友達と呼べる友達
涼からの疑問だった
私は特に隠すこともなく、答える
シンクロ
それが私を安心させる理由
再び始まった陰口も、そのおかげで気にならなかった
遠くに居ても、傍にいなくても
一人じゃないと思えた
だから、十分だったのに
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