Z w i l l i n g 29












行くところなんてなくて

結局いつもの自分の家に戻ってきた

自室に飛び込んで、使用人達の言葉を毛布で塞いだ





「…自分の、家、か。」





それさえも、本当は

どうだか、というところ

私は、この家では育っていないのだから





私と景吾が生まれた時、その時は今のように裕福じゃなかった

母と父は両方とも有名な財閥の娘・息子だったけれど

親同士の仲が悪く、二人とも駆け落ち同然で結婚したから





おかげで、私達が生まれる時は何もなかった

その厳しさ故、景吾と私はバラバラになった

一人でも苦しいのに、二人も育てるのは不可能だったから





私の方は、唯一連絡をとっていた母の父に預けられた

けれど当然、歓迎なんてされるわけでもなく

私は育つにつれ『捨てられた』という事を認識していった





その家の私は

厄介者

邪魔者

疎まれ者






自分の親が誰なのか

何故ここで誰もに嫌われながら居なければいけないのか

自分は何なのか、本当に分からなかった





学校にも行っていた、自分とは不釣合いと思われるお嬢様学校

噂は流れるもので、そこでも当たり前のように嫌がらせと陰口

唯一話しかけてくれていた母の父も、忙しい人で滅多に家に居ず





「私、何なんだろ。」





それが、中学に上がるまでの

私の口癖だった

そして、中学生になるその時






。』






小さく、申し訳ないような、愛おしい様な

聞いたことのない声色で、その女の人は私を呼んだ

母親だった





親同士が和解し、それまでの経緯を全て聞いた

そして一緒に居た父と、母は

私を引き取りに来たと最後に言った





何を言ってるんだろう、

冷めた心でただ、そう思った

今更、選択する気も全く無い





自分の両親とも認識できないその人達は

私を勝手に捨てたのだから

今回も連れてきたきゃ勝手に連れていけばいいと

そうとしか思わなかった





『私達の所に、帰ってきてくれる?』

『…はい。』





私が言った言葉は、それだけ

そこに喜びも憎しみも期待も何もなかった

だった、のだけれど





『そうだ、紹介するわね?』

『…』

『貴女の弟…といっても双子だから同い年なのだけど。』

『とても似ているから、吃驚するかもしれないよ。』





嬉しそうにそう言った父と母は

後ろに引っ込んでいたその人を

私の目の前にやった





刹那、時が止まった気がした

男と女、双子とはいっても

そんなに似ている筈が無い、そう思ったのに





不覚にも、父親だというその男の言うとおり

私は驚きで

固まってしまった






『お前が、?』

『おと、うと?…名前は?』

『景吾。』

『けい、ご。』





それが、彼と最初に交わした言葉











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