Z w i l l i n g 26
「…あ…っと、今日はごめんなさい。」
「…何が?」
「えっと、突然お邪魔して…迷惑だったんじゃないかと」
「んなことないじゃろ。」
「そ?ありがとう。」
その言葉が素直に嬉しくて
にこ、と笑顔を見せた
じっと見つめられてから
彼は口元に少し笑みを浮かべた
「…跡部には何か言うてきたんか?」
「景ちゃんに?」
「ああ。」
「出かけてくるって書置きだけ。」
「それでええんか?」
「…子供じゃないし、ね。」
そう言って私は笑って流す
本当は、こんなことするのは初めてだけど
言う必要はないと思って、何も言わなかった
「明日も、部活?」
「いや、明日からは暫く休みになる。」
「え?そうなの?」
「文化祭があるんじゃ。準備に忙しくなる。」
「あーそういえばウチももうすぐだったかな。」
言われてやっと思い出す
そういえば文化祭がどうのとか
クラスの子が話していた気がする
「仁王君、何やるの?」
「んー喫茶店とか…の、裏方。は?」
「まだ何やるか決まってなかったと思う。」
「ふうん。」
「…立海は、文化祭、いつ?」
「来週のじゃったかな。」
「来週か…」
ポツポツと話しながら
バス停までの短い道のりを送ってもらった
それはあっという間で
「今日は、ありがとう。」
「いんや。」
「あー…嫌じゃなかったら…」
そう言って私は携帯を取り出し
連絡先を聞いた
教えてくれたアドレスと番号を携帯に登録する
「ありがとう…じゃあ、また。」
「気をつけて帰りんしゃい。」
「うん。」
丁度来たバスのステップに足をかけつつ
もう一度私は振り返り軽く手を振った
彼は軽く手をあげ、返してくれた
「ただいま…」
玄関でメイドさん達に出迎えられた後
書置きを置いていったリビングに入った
景ちゃんの姿は無くて
おかれたままの紙だけ手に取った
ふ、と無意識の内に小さくため息を吐いて
部屋に戻ろうとした
「――どこ行ってた?」
「景ちゃん。」
「…おかえり。」
「えっと…ただいま。」
「…」
「…」
別に、悪いことをしてきたわけではない
ただ、何故か
景吾の視線に苛立ちを感じている自分がいた
「立海だよ。」
「立海?」
「うん、練習中だったんだけど。」
「…。」
「偵察とかじゃないよ?ただ、ちょっと立ち寄っただけ。」
笑みを作りながら
それだけ答えた
じっと、景吾の目を見ながら、答えをまった
「…そうか。迷惑かけんなよ。」
「かけないよー。」
小さくため息を吐いた後
夕飯の準備してもらう、とだけ景ちゃんは言って
リビングを出て行った
広いリビングに独り立ちすくむ
新しいアドレスを入れた携帯を握り締め
書置きを握りつぶして
私もリビングを後にした
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