Z w i l l i n g 25
日曜日の朝
景吾に出かけてくる、と書置きだけ残して
一人そこにいた
「はぁ…」
バス停のベンチに腰をかけ
一人ため息を吐いた
何しているのだろうと、自分に言い聞かせながら
景吾に言われて安心した筈だった
景吾の気持ちが分からなくても
いつも傍にいるからって、そう言ってくれた言葉に
だから大丈夫、そう思ったのだけれど
何故か、不安な気持ちが消えなかった
胸がざわついて仕方が無かった
だから、だからなのだろうか
とにかく無性に
彼に会いたいと思った
「仁王君に会ったら…何か…」
何の根拠もないけれど
今のごちゃごちゃした感情を変えてくれる気がして
私は立海前のバス停で蹲っていた
そこの角を曲がって真っ直ぐ行けば、立海なのだけれど
正直、特別用があるわけでもなく行きづらかった
練習試合では迷惑をかけたわけだし…どうしようか
「ねぇ。」
「…はい?」
「跡部、だっけ?アンタ。」
「…あ…あーっあっと…テニス部の。」
「切原赤也っす!」
「切原…くん。」
「んで、何してんの?」
会うのは三回目か
確か、元気がよくて
真田…副部長に怒鳴られてた
「またテニス部に用っすか?」
「いや、えっと…用って程のことでも…」
「? 来るなら案内するっすよ。」
「えっと…」
じいと不思議そうに彼は見てくる
どうしようかと迷う、と
彼にぐっと腕を引かれた
「とりあえず、いきましょーよ。」
「う…うん。」
「あれ、ちゃん。」
「ゆ、幸村君。久しぶりです。」
「一週間ぶりくらい?今日はどうしたの?」
「あ…えっと…ちょ、ちょっと通りがかって。」
「そうなんだ?俺ら部活だけど、ゆっくりしてきなよ。」
にこっといつものように笑顔を見せ
幸村君は歓迎してくれた
その様子に少しほっとする
「今日は一人ですか?弟君の方は?」
「柳生君。…あっと、景ちゃ、景吾は今日はウチです。」
「そうですね。確か氷帝は今日は練習ありませんね。」
よく知ってるなあ…誰に聞いたんだろ
と疑問に思ったところで
私の視線は別の方に奪われた
「…あ。」
「…きとったんか。またお使いか?」
「あ、えと今日別に、用はない、です。」
「ふうん。練習見てくんか?」
「…いいなら…あっ別に、偵察とかじゃないよ!?」
いつの間にか来ていた仁王君に声をかけられ
動揺しつつも、答える
そして慌てて言った、そしたら彼は
「できるとも思わんな。」
「…そ、そうだけど…」
それは嫌味なんだろうけど
薄っすらと笑みを浮かべた彼の顔に
それ以上言い返せなかった
それからフェンスを挟んだところで
私は立海テニス部の練習を見学させてもらった
と、いってもテニスのことは相変わらず殆ど分からないが
「ちゃん。」
「幸村君。…休憩?」
「うん。…ねぇ、一個聞いていいかな?」
「何?」
「仁王のこと、好きなの?」
少し間を置いて、かぁと顔が熱くなるのが分かった
幸村君は少し驚いたような顔をして、直ぐ笑顔になって
言った
「可愛い…。顔真っ赤だよ。」
「そ、そんなんじゃなくて!からかわないで…」
「ごめんね。にしても仁王かあ…羨ましいね、ちゃんに思われるなんて。」
「だからそんなんじゃ…」
そう言って、幸村君は手の甲で私の頬を撫た
景吾以外の男の子にそんなことをされるのは初めてで
びっくりして後ろに下がろうとした時、声がした
「ゆーきむら、何しとんじゃ。」
「…みつかちゃった。」
「え…あ…仁王君。」
「もう休憩終わり?」
「…おー。で、何しとんのお前さんは。」
「何でもないよ。先戻ってるね。」
ごめんね、と小さく言って幸村君はコートに戻っていった
私は少しぼうっとしながら
目の前にいる仁王君を見ていた
「…隙が多いやつじゃな。」
「え、そ、そう?」
「ああ。危なっかしいちゅうか。」
「…景ちゃんにも、よく言われる。」
「…そうか。」
「…仁王君は…」
危なっかしい、だから景ちゃんは傍にいてくれる
じゃあ、仁王君は?
勝手な思いすぎて、実際に聞いてみることなんて出来ないけれど
「目が離せんの。」
私の髪に触れる手が凄く暖かくて
その言葉が妙に嬉しくて
私は無意識の内に微笑み言っていた
「…今日、終わるまで、待ってていい?」
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