Z w i l l i n g 23
「。」
「…景ちゃん?」
「俺以外いるか。」
「…そ、ゆ…意味じゃ…なくて。」
なんでここに?試合は?
自販機の前でうずくまったまま、視線だけを上にあげる
言葉が喉に詰まってでてこなくて
そんな私を見て、景吾はしゃがみこみ
手と腰に手をかけて、私を立ち上がらせようとする
私は思わずその腕に縋り付いた
「ごめんねっ…私のせいだよね…。」
「…何がだ。」
「試合…まだ終わってないでしょ?」
「俺が勝手にしたことだろ。」
「景ちゃん…」
「…どうした?」
へた、とまたそこに座り込む
腕を背中に回せば、景吾はしっかり応えてくれる
しがみつき、言葉を繋ぐ
「景ちゃん、私のこと…分かる?」
「…だから来たんだろ。」
「景ちゃん…ごめんね、ごめん。私、」
「…分からないんだろ。」
「…うん。怖いよ。どうして。」
「…大丈夫。」
きっと、そんなこと景吾にだって分からない
何故、私だけ景吾の気持ちが読み取れなくなったの
どうして、ごめんなさい、怖い
迷惑かけたくないのに、迷惑かけてる
私は、全然変われていない
幸せな場所にこれたのに、それを与えてくれた人に
どうして
「。」
「…?」
「不安なのは、今だけだ。」
「…どういう意味?」
「直ぐに慣れる。」
「…このままで、いいってこと?」
「それが普通だ。」
「…だって、私達は」
「お前は俺の姉…それだけで十分だろ?」
「それは、そうだよ…。」
そんなこと、分かってる
それで十分だって
分かってるけど
「分からなくたって、俺はどこにもいかねぇよ。」
「…」
「だから、安心しろ。」
「…うん。」
する、と腕を解いた
景吾が立ち上がり、私も一緒に立ち上がる
そして手を引かれるまま、コートに戻った
「ごめんね…私のせいで。」
「ちゃんが悪いわけやないやろ。」
「うん…」
「大丈夫なんか?」
「うん、もう、大丈夫。」
とりあえず、皆に謝った
これが練習試合でよかった
…いや、いいことなんてないだろうけど
私はちらと立海の方のコートを見る
向こうも帰りの準備をしているようだった
私はすうと小さく息を吸った
「私、謝ってくるね。」
「立海か?」
「うん。せめて部長さんに。」
「別にええやろ。」
「ううん。」
景吾に聞かれたら、多分止められると思うから
景吾が先生に連絡を取りに言っている今のうちに
忍足達が止めるのを聞かず、立海のコートに足早に行った
「…あ、の。すみません。」
「あ、ちゃん。久しぶりだね?」
「あ…この前はありがとう。立海だったんだね。」
「こちらこそ。ごめんね涼が言ってると思ってた。」
幸村君はすぐに気づいてくれて
にこと、あの時と一緒の柔和な笑みを見せてくれる
それにつられて、他の人たちの視線も集まってくる
「あっ…ごめんなさい。あの…今日の試合…」
「?何が?」
「ごめんなさい…景吾が抜けたの私のせいなんです。」
「…どういう意味?」
どう、説明したらいいだろうか
私が気分が悪くなった、それは間違いない
昔のことを思い出して…
そこまで話すのは逆に重すぎて迷惑だろう
「あ…私が、気分悪くなって…それで、動けなくて。」
「跡部君が…それを知ってたの?」
「え?あ、そうかな…試合前から気づいてたのかな…。」
「でも、あなたは彼の試合中ベンチにいませんでしたよね?」
不思議そうに、柳生君が口を挟む
ああ、そっか
私はそこでやっと、自分が勝手に喋ってたことに気づく
シンクロのこと、話してない、どうしよう
何て言ったらいいんだろう…寧ろ余計なこと言わない方がいいのか
そう迷ってる時だった
「。」
「景ちゃん…」
「跡部君。」
うわ似てる、なんて台詞が
どこからか聞こえてくる
そういえば、2人で並んだことは無かったっけ
「お前は関係ねぇっつたろ。」
「ごめん。でも…ごめん。」
「…もう、いい。」
「…えっと、それで、話の続きいいかな?」
ああ、そうだったと幸村君の言葉に反応する
そして、どうしようかと
また視線を泳がしていたら
「何で分かったか、か?」
「うん…だって跡部君は試合中で、ちゃんいなかったでしょ?」
「俺にはコイツの状態が、どんだけ離れてようが分かるからだ。」
さら、と景吾はそれだけ言い切った
幸村君は、当然きょとんとしてる
それはそうだ、ただ聞いただけじゃ、只のキザな台詞だろう
「えーっと…それはどういう…」
「…シンクロというやつ、ですか?」
「柳生。」
「…ああ。」
「さすが双子ですね。」
「柳生、シンクロって?」
「お互いがお互いのことを、手に取るように分かるという事です。」
気持ちも、状態も
まるで、自分の体の一部のように
双子や兄弟など…ごく稀にある現象
「へぇ…そんなこと本当にあるんだ。」
「どのくらい正確なんですか?」
「間違った事はないつもりだ。」
「それは凄いね。」
なんだろう、今、この話が辛い
だって、今
私には分からないから
彼らの会話を
耳で聞き、視線は落としていた
けれど誰からか自分への視線を感じて、顔をあげた
「…大丈夫か?」
「…え?あ…仁王、君。」
「顔が青いぜよ。」
「…」
「泣いとったんじゃ、なか?」
仁王君が、静かに聞いてきた
確かに、泣いていた、それも景吾に連動したんだろうか
目にかかった髪を、仁王君は優しく払ってくれた
「だ、大丈夫…。」
「そうか。」
「…試合、ごめんなさい…。」
「もういいじゃろ。の、幸村。」
「うん。」
淡々と、仁王君は答える
それでもやっぱり申し訳なくて
私は目を合わせられずにいた
「。」
「景ちゃん…」
「行くぞ。」
「あ…う、うん。」
ぐ、と景ちゃんに腕を引かれた
普段なら、素直に付いて行くところだけど
何故か、その時は躊躇した
「?」
「あ…な、なんでもない。行くよ。」
答えた後、私は振り返った
仁王君と、目が合った
言葉が喉まで詰まって、それ以上出ない
景吾の視線を感じる
悪いことをしているわけじゃないと思うけど
なんとなくその視線が痛くて、私は踵を返した
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