Z w i l l i n g 19






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「なんか、もう無理かも。」

「…急に何なん?」





部活前に偶々忍足に出くわし

一緒に下駄箱に向かう中

涼はぽつりと呟いた






「昨日さ、と私の知り合いとデートしたわけ。」

「ああ…この前言とったやつか。」

「そ。」

「で、その結果は?」





そして昨日あったことをざらっと話す

そして

冒頭の台詞に至る





「わざとさ、幸村にの苦手なことさせたんだよね。」

「苦手なこと?」

の苦手な味のケーキ勧めたり、苦手な映画見せたり。」

「…嫌がらせやん。」

「うん。」

「…。」





は断ることなかったし、それは性格上予測できたけど

何より、跡部もそれを止めることをしなかった

それは、それだけを想ってるからで





「そら、あんさんの目論見しっとたから黙っとったんやない?」

「そうかもしんないけど…」

「ど?」

「なんかねー…駄目なのは私かも。」

「…意味わからんのやけど。」






跡部は、確かに何も口を挟まなかった

その代わり、出来る限り、目立たないように

に気を使っていた





それは、確かに、まさに

弟、そのものの姿で

ああ、そういえば、元々普段からそんな感じだったかなとも思って






「…普段からそうやから、もうこのままでいいってことか?」

「違う。」

「なら、なんなん。」

「引き離すのは不可能って思った。」

「…元々やないの。」

「尚更思った。私には無理、パス。」





お手上げ、といわんばかりに

手をあげた

本当に、そう思ったのだ





『不毛』今でもそう思っている

でも、自分では完全に割り込むことの出来ない空間

それがあの2人には出来上がってしまっている





「今回私がしたことは、ただ再認識させただけな感じ。」

「再認識?」

「お互いの存在と、お互いの気持ち。」

「気持ちって、どんなん?」

「…このままじゃ、駄目?…かな。」

「結局それなん?…まぁどうししょもないか…」





あの2人のため、と思ってしたことが

寧ろその2人に余計なことしてごめんと謝りたくなるような結果に終わった

はぁと涼は小さくため息を吐く






「…なるように、なるやろ。」

「そうだね。」

「…ご苦労さん。」

「どうも。」






それだけ言って二人は別れた

…本当は、あの2人が誤った道を突き進もうとしても

逆に応援してしまうんじゃないか

というくらいに気持ちが変化してしまっていた





分かってるんだ

お互いがお互いを好き、なこと

そしてそれがダメなこと

でも、好きなこと

どうしようもないこと





多分、自分がこれ以上何をしても変わらないだろう

それこを、あの2人が自ら

片割れ以上に好きな人が出来ない限り









**









「跡部君。」





部室に行く途中

遠慮がちにクラスメイトらしき人に呼び止められた

あまり機嫌が良くないため、少しうざった気に振り返った





「…何か用か?」

「あ、あの…校門の所で人が待ってるよ。」

「俺をか?」

「うん。跡部君呼んで来て欲しいって。」

「…分かった。」





誰だ、一体

見当は付かなかった

けれど放っておくわけにも行かず

仕方なく足早に校門に向かった





「…幸村?」

「…覚えててくれて嬉しいよ。」

「…何か用か?」

「あれ、警戒されてるかな?」





にこ、と先日遊びに行った時と同じような

掴みどころの無い笑顔を見せられる

眉根に皺が寄るのを隠すことなく、言葉を返した





「してねぇよ。部活があるんだ、早くしてくれ。」

「ああ、そうだね。ごめん。直ぐ終わるよ。」

のことか?」

「うん。」





にこ、ともう一度笑顔を見せて

幸村は言った

「彼女に惚れたって言ったらどうする?」





「…俺はどうもしねぇよ。」

「…そうかもしれないね。」

「…」

「君が、分かり易く敵意を向けてくれればよかったんだけど。」

「…どういう意味だ?」





そのまま校門で話しているため

通り過ぎて行く生徒達の視線を感じる

幸村は立海の制服そのまま故に、余計に目立つに違いない





「この前デートした時、跡部君哀しそうで、辛そうだったから…」

「は…?」

「本当にちゃんのこと好きなんだなぁってしみじみ思ったよ。」

「しみじみって…知り合ったばっかだろ。」

「そうだけどね。」





いったい、いきなり何だというのだろうか

しかし、幸村自身にからかっているという所が見えないせいで

余計に…苛立ちを感じた






「でも…ちゃんは、別に好きな人がいるよね。」






君とは別に、そう幸村は言った

跡部は何も答えない

涼に聞いたのか






「君は気づいてるよね。」

「…分かるわけないだろ。もう話は終わりか。」

「うん。…ごめんね、余計な口挟んで。」

「…どうして、わざわざ言いにきた?」

「君達が気に入ったからかな。」

「そうとは、思えねぇ内容だったな。」





ふ、と口の端を吊り上げ

笑う

目は笑ってないと思うが





「それかやっぱり僕もちゃんに惚れたからかな。」

「さっきのは冗談じゃなかったのか?」

「どうかな。」

「眼中にねぇよ。」

「ヒドイなぁ…。君の言うことは合ってるだろうから、余計酷いよ。」





幸村はそう言ってまた笑う

ふん、と跡部は笑みを消して

背を向けた






「…守ってあげてね。」

「…言われるまでもねぇよ。」






誰を?それは言わない、聞かない

決まっているから

自分が守るべきものは、生まれたその時から





たとえ

相手に

自分以上に大事なものができたとしても





そう、間違いなく

その時は

そう思っていた








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