Z w i l l i n g 14










「…」

「どうしたんすか?柳先輩。」

「…さっきの子だが。」

「氷帝のお使いで来てた?」

「名前は聞いたか?」

「ああ柳生先輩に、確か跡部。」

「そうか。」





やはりな、と言った様子の柳に

赤也はなんすか?

とまた質問する





「彼女は跡部景吾の双子の姉だな。」

「双子?」

「双子っ!?」





そばにいた丸井が

乗り出し聞く

そして続ける





「跡部景吾って、有名だろぃ。」

「有名って、強いってことっすか?」

「ああ。」

「ふーん、面白そうじゃないっすか。」

「練習試合するんだろぃ?」

「えー俺試合できないっすかね?。」

「どうだろうな」





皆、それぞれの思いで

期待に胸を膨らませる

試合への好奇心と

双子の片割れへの好奇心で















「えっと…屋上へ続く階段は…と。」





思ったとおり

校舎内はしん、と

静まり返っている





少し薄暗いそこは、さびしげにも見えた

自分の足音がけが小さく響く

廊下には赤い光が差し込む





「あ、見つけた。」





屋上へつながる階段を上がり

そっとドアノブに手をかける

よし、鍵はあいてる





ゆっくりとドアノブを回す

こんな時間、誰もいないよね

ドアをあけると、夕日の眩しさに少し目を細める





そして




目が合った






どのくらい沈黙が続いただろうか

先に口を開いたのは

彼の方だった





「…誰じゃ。」




…「じゃ」?

なまってる?

…えっと、とりあえず生徒いたんだね





「えーっと…」





やっと言葉を発したが

その後が繋げなかった

何故か、何かが喉に詰まったかのように

言葉がでてこなかった





「…ここの制服じゃないの。」

「…あ、はい。」

「…ふあ…眠…今何時…」

「…5時…くらいかな?」

「…マジでか。」





眠っていたんだろう

横になった体制のまま

不思議ななまりで彼は話した





ずっと動かしていなかったように

固くなった足を動かす

少し、彼との距離を縮める





なんとなく

本当に

なんとなーく





思いあたった名前を

言ってみた






「…に、おう、君?」

「…」

「…やっぱ違うよね、ごめん。忘れて下さい。」





さっき、テニス部の丸井と呼ばれた彼

仁王がいない、と言っていた

彼がテニス部かどうかも定かではない

でも本当になんとなく、その名前が出てきて





「お前さん、誰?」

「…跡部、です。」

。」

「はい。」

「俺、お前、知ってるか?」

「知らないと思います。」

「お前は俺知っとるんか?」

「知らないです。」

「…」





また目が合ったまま

お互い無言

おかしな会話




夕日が赤い

彼の髪、何色?

黒じゃないよね?




ちょっと目つき怖い

鋭いなあ

すごく、観察されてる気がする





なんか…

なんだか

景吾みたい





「…あの、テニス部に用があって。」

「…」

「うちの顧問の先生からの頼まれごとで。」

「…」

「書類を、立海の顧問の先生に渡して来て。」

「…」

「それから、ちょっと、屋上に上がりたくなって…」





一人、説明してみる

なんとなく黙ってられなくて

彼はなにも言わない




ああもう帰ろう

さっさと帰ろう

と思った所で






「仁王雅治。」

「え?」

「名前じゃ。」

「…あれ?」

「誰も違うとは言っとらんぜよ。」

「(ぜよ)」





そこまで言って

やっとにっと笑顔を見せた

まるで悪戯っ子みたいな





読めない

もっと何か隠してるような感じ

怖いような、気になるような





「仁王君…」

「お前は、か。マネ?」

「ううん。部員の、姉…双子だけど。」

「ほお。双子。」

「うん。」





何故、私はここまで話しているのだろう

普段だったら、絶対自ら双子の話はしない

でも、彼も特に何も突っ込んではこなかった





「つうか、俺、遅刻じゃ。」

「丸井君って人が、仁王君いないって言ってた。」

「おーそれで俺の名前知ったんか。」

「うん。」

「よう俺って分かったの。」

「んー…カン?」

「見事じゃ。」





そう言って

さっきよりも少し

優しそうに笑った





なんだろう

ちょっと怖いんだけれど

初めて会った気はしなかった
















なんとなく、一緒に昇降口まで歩いてきていた

置いてあった靴を履いて、彼が履き替えるのを待つ

そして並んで外に出た






「跡部。」

「え、あ、はい。」

「いや弟も跡部か。」

「…そうだね。」

「じゃったら。」

「…はい。」

「…お前さん面白いの。」

「…(どこが?)」

「顔にでとるぜよ。」

「(ぜよ)」





笑っている気がするが

長い前髪に隠れて目は見えない

変な人だなあ





「…練習試合じゃったっけ、お前さんは来るんか?」

「え?」

「来んのか、来るのか。」

「行かない…行くかもしれない。」

「そうけ。」





本当は、行く気はなかった

けれど、彼に聞かれて

別に来いと言われたわけではないけれど

なんとなく否定できずなかった





「さて、怒られに行くか。」

「怒られるの?」

「おお真田に。」

「顧問の先生怖そうだったもんね。」

「…」

「…何で笑ってるの?」

「いや、何でもないきに。」

「…」





くつくつと彼は笑う

はじめ冷たい感じがしてたが

さっきから笑ってばかりな気がする





「ひとりで帰れるか?」

「うん。」

「じゃあ、またの。」

「…また、ね。」





気づけば、すぐそこに校門はあって

彼は小さく気をつけて帰りんしゃい。と付け足した

私はそれに小さく笑顔で応えた





そのまま真っ直ぐ帰り、氷帝学園に戻った

榊先生に渡したことを伝え

私は景吾を待った





。」





暫くして、部活が終わり

景吾は一番に私のところへ来た

お疲れ、と私はいつものように言う





…お前、今日…」

「ん?」





立海へ行った事だろうか

そう思ったが、何故か言葉を濁したまま

景吾は何も言わなかった




どうしたのか、と思って景吾の顔を伺う

…何か、凄く複雑そうな

苦しそうな顔を景吾はしていた












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