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跡部ちゃんと話して

とりあえず今は、ただのオトモダチになった

けれど、跡部は、私のことが好きで




私は…どうしようか

とにかく、今は自分が落ち着く方が先

それから…全ては、考える




なのに




また、面倒くさいことになった

今まで跡部愛人のレッテルを貼られていた私は

今度は…“バケモノ”だなんて噂がまわっていた




どうやら昨日の出来事が出回っているらしい…

言いふらしたのは彼女だろうか

まぁ都合のいいように脚色されているのだろう

(自分がやったってとことか)




友達もぎこちない笑みを向けてきたから

思わず「無理に話かけなくていいよ。」

なんて言ってしまった




「まぁーいいけどねぇ…今は一人の方が。」




ジローはというと、「バッカじゃないの。」

と一言いって、寝てしまった

全くおっしゃるとおり“バッカじゃない”だ

…いや、事実といえば事実だけど




噂というものは、どんどん誇張されていく

嫌でも聞こえてくる言葉が煩いし、視線もうざい

こうなったら次の授業はサボろう

そう思い私は教室を出た




太陽の日が降り注ぐ廊下を一人歩く

服一枚隔てても熱いな…

一人長袖のシャツを着ているのは結構目立つけど、仕方がない

そんなことをぼんやり考えていたら




…彼女が、いつの間にかまた目の前にいた




「バケモノって…言ったの、私よ?」

「…それで?」

「…景吾と、別れたんでしょう!」




廊下に響き渡る声で、彼女は叫んだ

やめてほしい…視線と声が一層高まる

よっぽと頭にきてるらしい…目の前の彼女は




「…もしかして、あなたも?」

「―――アナタのせいよ!!!何で、私までっ」




…跡部はあの後彼女にも別れを告げたんだろう

しかし私とも別れたことを伝えた

だから納得できない




「そんなこと、私に聞かれても」

「っそればっかりッ…何様なの!化物のくせに!」

「ばけもの…」

「階段から落ちて平気なんて、化物以外の何なの!」




何でアンタみたいのと…彼女は吐き捨てる

何がまだ気に入らないというのか

…もしかして…跡部の奴




「どうしてっ…アンタなんかっ…景吾は好きなの…!!」




あぁやっぱり…

跡部は彼女をフって、私とも別れたことを伝え

…オマケに、それでも私の事が好きだと言ったのだろう




「絶っ対認めない…!」

「八つ当たりじゃん…」




ポツリと、聞こえないように呟く

昨日の出来事を誇張して広めたのは

ただの嫌がらせか

そりゃ、嫌がらせ以外の何者でもないのだろうけど




―――バケモノって、言われるの結構キツイんだけどね




「何、黙ってんのっ」

「 っ」




また、今度は前からだけど、突き飛ばされた

簡単にしりもちをつく、避ける気もなかったから

それで気が済むなら、好きなだけやればいいと思って




「…何よ、長袖なんか着て。もしかして、本当に何か隠してるの?」

「…」




狂気じみた笑顔

彼女は跡部云々より

自身のプライドを傷つけられた事にキレてるのかもしれない

私は思わず、庇うようにシャツの袖をつかんだ



でもそれがいけなかったらしい




「…何、腕隠して…ふん、…病気で肌がボロボロとか?」

「…」

「…だって、つい最近まで普通に半袖だったでしょ。」

「…何を・…ッ」





…やばい、クラクラしてきた

さっきから、太陽の光を浴びっぱのまま動けないため

結構肌にも体にもキていた




なんでこんなに日当たりがいいんだ、ここの廊下

日陰に行きたい、この場から去りたい

そして…目の前の人間から逃げろ、そう警告音が発している




僅かにフラつく足で、私は立ち上がった

もう何を言われても無視するつもりで

彼女の横を通り過ぎようとしたけれど



気づけば、あっという間に腕をとられ

…シャツをたくし上げられていた

肌が、直に太陽の光に晒される




一瞬の間をおいて

腕に痛みが走る

漏れそうになる声を飲み込む




何だ、何もないじゃないなんて顔をして

彼女は私の腕を見ていた

まだ目に見えて腕に変化は無いから




でも早く、彼女から逃げないと

皮膚が、焼かれるのが分かる

早く日陰に、光からさえ逃げれれば




「な、何のよっその顔、ただ、腕を見ただけ…」

「―――痛ッ」




振り払い、腕を隠す、バレてない

もう見せれない、多分赤くなってきてる

彼女はその様子に動揺しながらも離れようとしない

マズイ人が集まってくる…どうしようか





「・・・何してん、自分ら!!」





集まりかけている人並みを割って

彼女と私の間に入ったのは

ジローでも跡部でもなく…忍足だった

忍足は私と彼女の間に割って入った




?大丈夫か?顔色、悪いで。」

「あ…忍足…」

「お、忍足君、何…」

、体調崩してん最近。…、保健室行こか?」

「…うん、そうする。」




皆が道を開ける

忍足はこの私の状態を見て、この状況を見て

どう思ったのだろうか














保健室に先生はいなかった

良かった…見せられたら困るから

というか日陰に入ったことで、結構もう治ってると思う

ろくに血を、栄養分を採っていないというのに頑張るもんだ




問題は、この人か

黙ってここまで

…保健室までつれてきてくれた、忍足




、先生呼んでくるから、そこでジッとしとき。」

「あ、ばなくていいよ。大丈夫!」

「せやかて、さっき…」

「大丈夫だから。」




そう言って笑みを作る

忍足は怪訝そうな顔で見た

私はとにかく、誤魔化すことにする




「ビビらせて、その隙に逃げようとしたの。」

「ならええけど…なぁ、あの噂は、何なん?」

「ああ化物って?…昨日、さっきの彼女の前で、階段で転んで。」

「一番上からって…聞いたで。」

「…まさか。…彼女、跡部が好きなの、それで…嫌がらせ。」




それで、忍足は納得したようだった

…噂、に関しては

何故なら、忍足の視線は私の腕に注がれていたから



「…何?」

「…さっき、その腕、真っ赤になっとったように見えたで?」

「…気のせいだよ。なんともないでしょ?ほら。」




ああ彼の方は気付いてたんだ

目ざといなあ、なんて言ったら失礼ですけど

ホラ、と言いながら私は腕を見せていおいた




「それより、何で庇ってくれたの?」

「何でってあたり前やろ。」

「…そ、か、」

「…つか、その前から騒ぎには気づいとったんやけどな…」




やっぱり、そうだよね

彼女結構ヒステリックに叫んでたし…

…でも、忍足は噂は信じてないにしろ、何かを疑ってる




忍足は、私と跡部の奇妙な関係にも

ジローとのただ仲が良い、だけじゃない関係にも

全てに微かな違和感を抱いていてるんじゃないか

なんて、考えすぎか




「ねえ…忍足は、何が知りたいの?」

「え?」

「…疑ってるよね。忍足って鋭いもん。」

「…何か、隠してることあるん?」

「…跡部と、別れたんだ。ただの友達になったの。」




誤魔化した、まさか本当のこと言えるわけないし

でも、ズレてはいるけど話をそらすために

それらしいネタはふってみた




跡部とのことは

前も忍足に突っ込まれていたことだったし

でも、別に忍足はさして驚いた様子を見せなかった

彼女が叫んでいたことから推測したんだろうか




「…忍足、授業始まっちゃうから、教室戻ろ?」

「あー…せやな。」




逃げるように言い、私は忍足と保健室を出た

授業はサボるつもりだったけど、こうなれば仕方がない

忍足もそれ以上、何も聞いてこなかった




「あ、そうだ…忍足、ありがとね助けてくれて。」

「ん、礼言われることやない。…なぁ、。」

「なに?」

「何かあったら、何でも言い。俺でよかったら、やけどな。」




忍足はいつもの笑みを浮かべ

私の頭をぽんぽんと叩いた

びっくりして、無言で見詰め返してしまったけど




「…ありがと。」




素直に

嬉しくて

私も笑ってそう返した














教室に戻ったら、友達に詰め寄られた

大丈夫?何あれ?とまくし立ててくる

どうやらさっきの彼女との廊下の騒動の話らしい




バケモノ云々の話に触れる人はもう一人もいなかった

結局皆、そんな真実味のない話より

さっき彼女の叫んでいた“跡部どうの”の恋愛ネタの方が気になるらしい




私はとりあえず、もうただの友達ということだけは言っておいた

もう、あの彼女とも関わることはないと思う

こんな騒ぎになってしまった以上




とりあえず残りの授業をこなす事にした

今日は誰にも捕まらないようさっさと帰ろう

そして急に襲ってきた眠気と戦いながら、授業に専念した















ピリリリ…




「ん……電話…?」




学校から帰ってきてから、即効ベッドに突っ伏していた

眠気と疲労感が酷かった

昨日、今日と無駄に体力を使ったせいだろう




既に暗くなった部屋の中、鳴り続ける携帯を探す

ベッドに寝転がったまま見つけた携帯をあけた

ディスプレイも面倒で見なかった




「…もしもし?」

『…遅ぇ。』

「んー…あと、べ?」

『…寝てたのか?』

「あー…うん、眠くて。」




電話の相手は跡部だった

珍しい、携帯にかけてくるなんて

あまり携帯で連絡をとることはなかったから




跡部の話は、例の彼女のことだった

廊下での騒動が、跡部の耳にも入ったらしい

それか忍足から聞いたか




跡部は普通に謝ってきたけど

跡部が悪いわけじゃないし、適当に流しておいた

腕も治ってるし、問題はない




…それでも、跡部がこうやって電話をくれたのは嬉しかった

けれど、襲い掛かる異様な睡魔には勝てず

電話を切りもせず、通話中のまま寝入ってしまった




跡部の声が微かに耳に響いてくる

それでも、目は覚めてくれない

けれどその中…廻らない頭の片隅で思う




――――おかしい



何故、まだ体はもっているのだろう

吐いてしまうから、貧血剤は飲んでいない

跡部から血ももらっていない




でも間違いなく今成長期で

血は限りなく吸血鬼に近い

なのに




階段から落ちた傷を治し

光で焼けた肌を治し

まだ普通に生活している




でも、きっと、もう限界な気がする

大人しくしていたって

結局は足りなくなっていただろう血、栄養分

けれど無駄に使ってしまった力




ああ、眠い

体が重い

これは、きっと、体が

もう駄目だと訴えている証拠なんだろう








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