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だけが悪いんじゃない、跡部も悪い。」




心配して部屋で待ってたジローにそう言われた

私は顔からベッドに突っ伏した

部活の時みたいな気持ち悪さはもう無い




「私が悪い。自分が嫌い。もーヤダ。」

は…跡部が、好きなんだよね。」

「…」

「好きだから、しんどいんだよね。」

「…だって、」




認めちゃいけないって思っていても

認めたら余計辛くなるってわかってるけど

もう遅くて




どうして好きな人を騙さなきゃいけないのか

こんなことをしてるのか

どうして私は普通じゃないのか




何度も何度も自問してきたこと

好きになんてなったせいで

やめたい、本当はやめてしまいたい




、跡部に…本当のこといえばいいよ。」

「何バカな事言ってんの…」

「跡部なら、分かってくれる気がする。」

「ジロー…」

「そしたら、そんなに苦しまなくてもよくなる。」

「理解してくれるわけないよ!」




勢いよく体を起こして

椅子に腰掛けるジローを睨む

ジローはものすごく、悲しそうな顔をしていた




「泣かないで…きっともう少しの我慢だから。」

「…跡部を利用してたことには変わらないよ。」




たとえ無事に今が過ぎて、落ち着いたとしても

私が普通でない事には変わらない

跡部を騙してきた事は消えない




それでも

ジローはただ黙って

何も言わずに抱きしめていてくれた




どうすればいいのか、どうしたらいいのか

もう跡部から血を取るのをやめるか

でもそうすれば自分は、



答えは、出ない














「あ…おはよう、もう大丈夫なの?」

「おはよ。うん、もう平気…どうかした?」

「えっ?あ、えっと…」

「…?」




三日ぶりに登校した

なかなか学校に行く気になれなかった

跡部のことも、何も全てが嫌で



それでも何とか来た

このままこうしていても仕方ないって思ったから

何も答えは出ないから



でもどうも様子がおかしくて

この子だけじゃない

今日は朝から妙に視線を感じる



しかもご丁寧に耳に届いてくる声が




『やっぱ”愛人”だったんだね』

『本当に付き合ってるかと思ってた』

『別れたって事?』

『だって本命だって言うしね、新しい彼女。』

『でも愛人なら、別れたもなにもないんじゃない?』




何を、意味してるんだろうか

愛人なんて皮肉った陰口は今更

…それより、新しい、何?




「…ね、私が休んでる間に何かあった?」

「え…えっと…何かっていうかね、」

「うん。」

って変な噂あるじゃん?跡部くんと…」

「愛人?…今更それがどうかしたの?」

「う、うん。」




なーんか、ヤな予感がしてきた

聞かないほうがいいような

でも今避けてもしょうがないような






「…跡部に、新しい女でもできた?」

「えッ、知ってたの?」

「…」

「だってほら私もだけど…が本命だと思ってたから…」




…跡部に

新しい女?

本命の彼女?




「…。」




友達の声をぼんやり聞きながら

そのまま廊下に突っ立っていたら

聞きなれた声が背後からした




「…あと、べ。」

「体調、もう大丈夫なのか。」

「部活、今日から出るよ。三日も休んでごめん。」

「あぁ…無理するんじゃねぇぞ。」




久しぶり、三日ぶりの跡部

いつもどおりの会話

いつもどおり




「跡部。」

「…あ?」

「お幸せに。」



にこりと

跡部と、その隣で不安げに自分を睨む

可愛らしい女の子に笑みを送った




そのまま振り返えらずに教室に入った














お昼休み

ジローを引っ張って屋上まで来ていた

今にも泣き出しそうなグレーな空だった




「ジロー…なんで言わなかったの。」

「…だって、むかついたから。」

「今更でしょ…彼女が出来るなんて。」

「最近は違った。だけだった。」




ジローは怒られ、拗ねた子供のように言う

別に怒っているつもりはないのだけれど…

ひとつため息をついてから、続ける




「んー…じゃあ私は嫌われたってことかな。」

「跡部絶対の事まだ好きだよ、なのに他の…。」




ふっと自嘲気味の笑みが漏れる

丁度いいじゃないか

昔に戻ったのだ




これなら私も

彼の気持ちを気にすることなく血が奪える

私は遊びの一環なのだから




跡部には他に女がいて

私はオマケ

でもそのかわりに血を貰う

昔と一緒




ただ、今

どうしようもなく

胸が痛くて痛くて、苦しいだけで




、これでいいの?また、昔みたいに跡部と付き合うの?」

「…それ以外どうすればいいの…?」

「…」

「ずっとマシだよ…気持ち裏切って騙し続けるよりずっと!」




そう、これでいい

もう気に病まなくていい

そのハズなのに




「…でも…ただ…」




…本当は跡部が好きだから

昔みたいに割り切って付き合うことなんて

きっともう出来ない




…」

「…な、に…」

「俺が普通の人間だったらいいのに。」

「…え…?」

「そしたら、に血、いくらでもあげるのに。」

「……ばぁか…」




普通の、女の子だったら

そしたら、何も気にせず

好きになれるのに?




何故か、それ以上に

自分はただ逃げているだけなような気がした

自分がただ、臆病なだけな気もした














「さっきの空はどこいったかなー…」



今にも降り出しそうな雲行きだったのに

放課後になった途端

超快晴




「最低。もーーーサボるよ!?」

「何叫んどん…。」

「マネージャーがサボるとか言っちゃいけねーんだー」




部室の前で仁王立ちしてたら

忍足と岳人がいつ間にか来ていた

むっと不貞腐れたような顔を二人に向ける




これが、空元気とかいうやつなんだろうか

叫んでなきゃやってられなかった

全部がうっとうしくって、めんどくさくって




ゆっくり照り付けてくる太陽が凄くイライラした

朝より、聴力がよくなっている気がする

視力も、嗅覚も、随分パワーアップしてくれている気がする




「冗談っす…ほら早く着替えないと遅れるよー」




自分の考えを振り払うように

誤魔化すように二人に言葉を投げかけてから

足取り重くコートへ向かった




でもやっぱり…というべきか

私の中の吸血鬼の血は

大人しくはしてくれなかったのだが









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