Vampiяe 2
吸血鬼
ハーフ、とかではない
ただ人間の血の方が濃いだけで
正真正銘の吸血鬼
だから年がら年中血をほしがってるわけでもない
ある時期にのみ通常より血が必要となるだけ
そして自分にとって今がその時期
いつになれば、とはっきりは分からないが
暫くすれば血を飲まなくても普通に生活出来るように戻れる
まあ飲もうと思えばいつでも頂けるのだけれど
「ジローはいいなあ」
「うーんそうだねぇ…薄いからねぇー」
今日もいるのは校舎裏の中庭
テスト期間に入り授業(テスト)があるのは午前中まで
テスト勉強を学校で、と銘打って中庭でサボリ中
「薄い」とは吸血鬼の血のこと
ジローは同じ母方の先祖から吸血鬼の血を引いている
しかし血を濃く持つ私に比べて圧倒的にジローは薄い
だから私ほど血は欲しくならない
「早く血を飲まなくてもよくなりたい。」
「きっともう少しだよ。」
「ちょっと怖い。今よりもっと欲しくなったらどうしよう。」
「血のことに詳しいのはひいばあちゃんだっけ?」
「うん。でも死んじゃってるからもう。」
普通の人間としても、成長期である今
それがイコール吸血鬼としての血も濃くなっている時
聴覚や嗅覚などの五感が、より際立ってるのも感じる
人間の血と、吸血鬼の血を持つ私が
最も純粋な吸血鬼に近づく時
…極端に血が吸血鬼側に傾く時
本当に厄介だ
血への渇望だけでなく
平気だった太陽の光などが
苦手なものへと変わってしまう
「どうして、お母さんは普通の人間なのに…」
「だけが、吸血鬼だったばーちゃんの血引いたんだよね。」
「ん。…だからお母さんには相談しにくいんだよね。」
「ばーちゃん…自殺だっけ?」
「ん…」
曾祖母は、強まる力に畏怖し自殺した
だからこの時期の詳しいことは分からない
この血に関して書物とか記録が残ってるわけでもない
世間にバレるのを恐れ、全ては口頭で伝承されてきた
おかけで、親類にこの血を受け継いでいる人がいるかどうかすら謎
多分いるんだろうが、知らないのだ
成長期、このくらいの年齢になる時に
一時的に吸血鬼の血が強まり、血が必要になる
というのも、曽祖母が誰か同じ血を持つ人から聞いいたこと
それを私の母が聞き、聞かされただけ
「何事もなく終わればいい。」
「大丈夫だよ。何か起こるなんて、言ってなかったでしょ?」
「うん…でもあくまで、多分、なんだよ、確証はない。」
「…大丈夫。きっと直ぐ元に戻れるから。」
「ん…」
きっと、今だけ
今を乗り切れば…
普通に戻れる…
でもどうしても必要なその血は…
そう
跡部から勝手に奪っている
愛人、という立場を利用して
騙し続けている
成長期へと入ったその時から
その引け目が…
その最大の秘密が
跡部の気持ちを、受け入れられない理由
この程度ですまなかったら
どうなるんだろうか
もっともっと血が欲しくなったりして
八重歯が伸びたりして(今は吸う時だけ)
羽が生えたり?
…力が、暴走したらどうしよう
「ってこになったらどーしよ、ジローちゃん。
」
「なら大丈夫だよ。俺、傍にいるし。」
「ジローは、いっつも、大丈夫って言うね…」
「本気で言ってるよ?」
「うん分かってる。安心する。」
テスト前のざわつく教室内
実はクラスも一緒のジローと話す
てかジロー寝そう、テストだっつの
「…あ、先生来る。」
「え、マジ?…あー無理俺まだ聞こえない。」
「誰か他の先生と話してるね、もうすぐ来るよ。」
この無駄な聴力
どうせならテストに役立つ能力がよかった
なんて逃避気味に思いつつ、テストを受けるために席に戻った
ちなみにテストの結果はどーでもいい
え、だって、ほら
今は自分のことでせいいっぱいだから!
「いー根性してんじゃねーか?あ?」
「「ごめんなさい…」」
私とジロー只今お説教され中in部室
理由は簡単
この前のテスト結果、もう笑っちゃう感じだったから
「もうちょっといけるかなって思ってたんだけど…」
「どっから沸いてくるんだその根拠のねえ自信。」
「まーまー跡部、次はがんばるC☆」
「そーそー跡部、どんまいだよ!」
「あ゛ぁ?」
「「ごめんなさい…」」
怖い
部長だからってそこまで気にしなくても…
って言ったら余計怒られる黙ってよ
「堪忍してやりや、反省しとるみたいだし。」
「てめーは黙ってろ忍足、甘ぇんだよ。」
「忍足やさしーさすがー」
「やさC☆」
「お前ら…」
結局さんざん説教くらい
テストの見直しを命じられて解散になった
よかった、説教くらったのが部活前で…
「っだーーーーーあっちぃ!疲れた!、水!!」
「はいはいがっくんは元気ですね〜」
「なんだよーそのガキ扱うみたいな言い方!」
「そんなことないですよ〜」
じたばたして不服そうな岳人にドリンクを渡す
確かに今日は暑い…でもまだ平気、太陽光なんぞに負けるか
けれどジローが心配になり、探す
昔から何かにつけてジローの世話を焼いていた
私と違い“血”は薄い、けれど同じ血を持つ近い存在だから
この程度大丈夫だと分かっていてもどうしても心配で
「ジロー…平気?」
「元気ー!跡部と打ったんだー♪」
「そっかそっか。」
「はジローに甘いなぁ、羨ましいわ。」
「だってジローは弟みたいなもんだから。」
「確かにあんま恋人同士って感じではないなあ。いつも一緒やけど。」
そう言う忍足に、曖昧な笑みを返す
忍足はホント妙に鋭いから怖い
跡部とのこともジローとのことも
まあだからってこの血のことに気付くわけないけど…
そんな時だった
フワリ、と
目の前が一瞬ぼやけた気がした
ついでに体が浮いたような感覚
貧血?私の場合貧血って言っても
もっと切実に血が足りないことになるのだが
でも血ならついこの前跡部からもらったばっか…
ついでにさっきより太陽の光が痛い
ぐっと足に力を入れる
気を抜いたら、座り込んでしまいそう
おかしい
この涸渇感、渇望感
間違いなく、体が血を欲しているときと同じ
「?どうしたん?」
一番近くにいた忍足が声をかけてくる
その声に休憩中だった皆の視線が集まる
困る
「ううん…なんでも、ない」
理性ではまだ、そう答えられる
しかし本能では違う
足りない
貧血剤を飲もう
いくら跡部という存在がいても
そうやたらと奪う気になんてなれないから
気休めに飲んでるそれ
でも
今欲しているのは
新鮮な血
「!」
「ジロー…」
「気分悪い?熱射病になっちゃうから休んでなよ。」
「あ…」
異変に気づいたのか
ジローが寄ってきて声をかける
それに忍足も加わる
「やったら早よ水分とって日陰いっとき。ええやろ跡部?」
「あぁ…部室行ってろ、無理なようだったら車よこす。」
「う…ごめん。」
本当に体調が悪いわけではない
けど傍から見れば体調不良な子に違いない
どのみちここに居ても辛いがから部室に行こう
途中ジローが支えてくれた
「…どうしたの?」
小声で
耳元でジローがささやく
「わかんない、ちょっと太陽がきつくて…後、血が、足りない。」
「跡部から血もらってからそんなにたってないよね?」
「血が、あっちの血が、もっと濃くなってきてるのかも。」
「…いつ気づいたの?」
「今。」
「…とりあえず、部室行こう。」
薄暗い部室はひんやりとしていて、今はほっとした
太陽の光がきつい
前からそりゃ得意ではなかったが
まだ真夏でもないし、いつもは全然余裕だった
それが今ではなんだこれ
そして何より血への渇望感
「、とりあえず俺の中に残ってるのあげるから。」
「…いい、いくらジロでも貧血起こすよ…」
「じゃあ今すぐ跡部からもらうの?きついんでしょ?」
「それは…」
血が欲しい、薬なんて代替物ではなく
でも理性がそれを阻む
ただせさえ罪悪感を感じる行為を
跡部、から、奪うことを
「・・・、とりあえず、はい。」
「え、ちょ…」
ソファに寝転がってる所に、ジローが横からかぶさる
身体がほしがっているのは事実で
あぁ拒みきれないと思った瞬間
薄暗い部室の中に光がさした
「…跡部。」
「…何やってんだ?ジロー」
「熱測ろうとしたの。跡部、やっぱきついみたい、帰り送ってあげて?」
「ちょ、ジロ、待っ」
「…そのつもりだ。、お前はそのまま寝てろ。」
「じゃあ俺戻るね、なんかあったら呼んで。」
「ジロっ」
見られるとこだったと冷や冷やしている間に
ぽんぽんと話を進めていくジロー
…跡部からそのまま帰りにもらえ、と言いたいのか
でもそれは
ぱちりと跡部と目が合う…何も言わない
「…あ…」
結局何も言えず、ドアは閉められた
クラリとまた視界が揺らぐ
体が傾くままに身体をソファにうずめた
「もー…なんなんだよー…」
思考がまとまらない
もうすっかり慣れた跡部家の高級車の中
そう感じていた
結局あれから目が覚めたらもう部活は終わっていて
そのまま跡部に送ってもらうことになった
太陽にやられたダルさは寝たことで解消されたが
血の乾きは一向に解消されない
むしろ
跡部が隣にいるせいか
より渇きを感じる気がする
…その人を見れば、血の良し悪しは分かる
健康で病気は一切ない
一定の年齢を越した
清潔な肌をした人間の血
それが供給源として求めるもの
そして血液の補給の仕方はよくテレビで見るのと同じ
首筋のぶっとい血管から頂く
お風呂とか、運動した後とか血流がいい時のがいい
痛みは全く感じさせない
ただふわりとした酩酊感と脱力感が残るだけで
記憶にも残らない、傷も残らない
「…、お前…」
「…え?」
跡部は、条件にピッタリだった
条件を満たしていて
疑われる事なく触れられる関係
その跡部が何か言い足そうな
聞きたそうな
複雑な視線を私に向けていた
・・・そう、昔の跡部はもっとよかった
出会った時はただ単純に犠牲になる人間を探していた
跡部はその時、女の子はまさに来るもの拒ます
だからこの上なく丁度よかった
愛してくれなくていい、ただ血を頂戴
…最低な話だと思うのだろうか?
…でもそうじゃなきゃ私は生きていけない
「…最近、跡部、よくそんな顔するね?昔はそんな顔しなかった。」
分かっている
跡部の最近の告白が本気だってことは
昔は冗談でただ台詞として言っていた言葉が
いつしか本当になっていたのはいつからだったろうか
…自分がこんなんでなければ
素直に受けいれていたのだろうか
「好きな女を心配するのがいけねぇのか?」
「…ごっこでしょ…恋人なんて…そう、付き合う時言ったじゃん。」
「昔の話だろ、今はほかに女もいない。」
「…困るんだよ…困る…だって私…」
「葵?」
普通じゃない
騙して、その綺麗な血液を奪ってるんだよ
それを知っても私が好きだといえる?
私だってね
本当は
本当は、
でも…その気持ちを認めてもいけないし
言う資格もない
騙し続けて、奪い続けてきたから
「…、家だれかいるか?」
「…いない。親帰ってこないし今日。」
「じゃあ家よってけ。薬も出す。」
「うん…」
本当に私は最低だ
相手の気持ちも、自身の気持ちも自覚しておきながら
酷いことをしていると認めておきながら
結局私は欲求にまけ
血を奪うから
でもどうすればいいかなんて…分からない
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