日吉とキスした

でも、した後すぐ、悲しくなった

罪悪感を覚えたから、どうしようもなく




から、どうしてこんなことを跡部はできたんだって

こんなに苦しいのにそれが出来た跡部は

やっぱり、私のことはもう







気に対する共謀作戦3






パコンパコンと耳に音が届く

もう夕暮れで薄暗い外だけど

ここからはテニスコートが良く見える




放課後遅くの交友棟

ここも薄暗くて人気はない

自分の今の気分を表しているようで




「誰みとるん?」

「えっ」




バッと後ろを振り返る

聞き覚えのある声とイントネーション

案の定そこに立っていたのは同じテニス部の彼




「え、忍足?…部活は?」

「委員会。今終わったんや…っては?マネージャー。」

「あー私は体調不良で、サボリ。」




どっちやねん、と忍足に突っ込まれる

他の人ばかり見ていて

忍足がいないことに気づかなかった




「なぁ、、ちょい聞きたいことあるんやけど。」

「聞きたいこと?」




カタンと椅子を引いて、忍足は私の前に座った

ああこんな風に話すの久しぶりだ

というか、跡部と付き合うキッカケになった人なんだよな




だから、一応仲は良いと思うけれど

ちょっとつかめない人だといつも思う

だから今も何の話なのか全然分からなくて





「回りくどいの面倒やから、ハッキリ言わせてもらうわ。」

「え?うん、何?」

「自分、跡部と別れた?」

「……急に、なんで?…別れた…つもりはないけど、」

「じゃあ何で昨日、日吉とキスしてたん?」




…見られてたんだ

そりゃ見られててもおかしくないけど

よりによってこいつか




「…別に、忍足とは関係ない…。」

「冷たいなぁ…一応二人の馴れ初めを知ってる身としては気になるんや。」

「…じゃ止めなかったあんたを恨んでやる。」

「へ?…なんや、跡部と喧嘩でもしたん?」

「してません…別に。」

「そうなん?最近跡部、なんか元気ない感じしたんやけど。」

「跡部、が?」




…元気ない?あの俺様が?

…元気ないなんて、正直言いたいのはコッチなのに

そりゃ酷いこと言ったのかもしれないけど




それなら、どうして跡部自身は何も言ってくれないの?

あの昼休みの部室でのことをどうして何も言わないの?

どうして




「そんで、お前もな。」

「私…?」

「ああ、元気ないやろ。」

「…」




どうして、いつも聞いてくるのは

いつも気付くのは

…彼以外の人なんだろう




「何あったが知らんけど、」

「…」

「…浮気なんて、やめとき?跡部あぁ見えて…」

「知らない。」

?」

「アイツのことなんて知らない。」




言い捨てて、勢いよく立ち上がる

また目には涙がたまってきてる

いつからこんなに涙腺がゆるくなったんだ…本当に情けない




「気にしてないで、なんでもないから。」

!」




言いながら、走ってその場から逃げ出した

忍足が呼ぶ声が聞こえたけど、無視した

逃げて走って逃げて走って…最近こんなんばっかだ













「日吉っ」

「…先輩…?何、してるんですか?」

「一緒に帰ろ。」

「…体調不良じゃなかったんですか。」

「だから保健室でサボッてたの。」

「…着替え終わるまで待ってて下さい。」




あの後なんとか化粧室で涙を止めた

もうコートに人気はなくて

日吉は一人自習練をしていたとこだった




「お待たせしました。」

「うん…」

「…また泣いてました?」

「…ねぇ日吉、私が悪いの?私跡部に酷いことしてる?」

「…いいえ。先輩は何も悪くありません。」

「本当に?」

「俺は先輩の味方ですから。…細かいことはどうでもいいんです。」




とめたはずの涙がまたでてきた

もう我慢するのも面倒くさくて

今はただ単純に日吉の言葉だけを受け止めた




そしてそのまま部室の前に突っ立ったまま

さっき忍足に言われたことを日吉に話した




「昨日の、忍足に見られてた。そんで跡部、元気ないって。」

「あぁ…行動早いですね、忍足先輩。」

「…気づいてたの?」

「昨日見られてるのに気づいてワザとしました。」

「…やっぱり、どっか見てる気がした。」

「…すみません。」

「いいよ、別に。」

「…いえ。」




日吉が

ちょっと複雑そうな顔をした

あまり見ない表情だった




日吉が昨日とこか見ていたのは気がついた

その視線の先までは分からなかったけど

その上のワザとなのは分かってた




だから

別に謝らなくてもいい

共犯なんだから




「…やっぱりすみません。昨日のこと。」

「キスしたこと?」

「別に、後悔はしてません…けどすみません。」

「…なんで謝るの?後悔してないなら。」

「自分だけの意思で、するもんじゃない気がしたから。」

「…。」





なんか少し、日吉の素みたいのが見えた気がした

タメ語で

困ったように顔を曇らせる顔は本当に普段見なくて





「いーの。だって…だって、跡部もしてた。」

「……」

「してたのに、何も言わない…なのに忍足は…」

「忍足先輩が?」

「跡部が最近元気ないって…」




どうして私がそんなこと言われなきゃいけない

悲しいのは私だ、こんなことして

涙が止まらないのに




「…先輩のほうが、可哀相です。」

「…言われたら、言われたで…なんか惨め…」

「わがままですね。」

「うるさい…」




ふっと日吉が笑った気がする

それと同時に頭を撫でられて

昨日キスした時みたいに日吉の方に引き寄せられた




あやされているみたいだった

嫌だとも思わなかったからされるままになっていた

悪くないと、味方だと言ってくれた事がなにより救いで




味方だとかそういう問題じゃないのも分かっているけど

辛いのは本当だから

寂しいのも、本当だから







「いい根性してんじゃねぇか。」







声が聞こえた時

本当に心臓が止まるかと思った

ここまでは予想していなかった





「あ、とべ…」

「あ…」




日吉が一人、気の抜けた声を出していたから

また何か謀っていたのかと

日吉のほうに視線を送れば




「…まだ残ってたんですか。」

「…どゆこと、日吉。」

「…さっきまでレギュラーでミーティングしてたんですけど、もう帰ったと思ってた。」

「…へー…」




半ば現実逃避気味に話していたのが

跡部にはカンに障ったらしい

まるでコソコソと逢引していて、それがバレた時のように




「束縛が嫌で、他の男と抱き合ってんのか?。」

「…。」




言い返せない

言い返せないというか、言葉が出ない

混乱する





「跡部ー?って日吉ももいんじゃん、何やってんだ?」

「うるせえ、岳人。ちょっと黙ってろ。」

「あぁっ?何だよっ!」

「何騒いどん、岳人。」




ひょいと部室の中から顔をのぞかせたのは岳人と忍足

さっきの忍足との会話を思い出す

同時に、ああそうだこの部室の中でって




「とりあえず離れろ、。」

「え」

「話がある、逃げんな。」

「ちょっ…」




いきなり動いた跡部に腕を取られる

それがどうしても嫌で

思わず、また、反抗してしまった




「…嫌だって!話あるならここですればいいじゃん。」

「…あぁ、じゃあしてやるよ、」

「なに、また日吉と何してたか聞くの?」

「あぁ、何してた?ンなとこで、」

「見たままだよっ、話てた、ダメなの?」




きっと情けない顔をしていると思う

でも泣くのだけは嫌で必死でこらえていた

そのせいか、喧嘩腰のセリフしかいえなくて




「え、ちょ、侑士っやばくない?これ;」

「…ええんやん、好きにさせとき。他の奴には言うなや。」




まだ気付いていない宍戸達のことを指しているのだろう

岳人は動揺しながらも従う

というかそんなこと報告しにいくような状況でもない




「話すのに、抱き合う必要があんのか手前は。」

「っ…離して、もういい離して、」

「またそれか。質問に答えろ。」

「跡部こそっ…言わなきゃいけないことあるんじゃないの!?」

「言わなきゃいけないこと…?」

「しらばっくれるの?…ここで…ッ…」




油断したところで、また腕を振りほどこうとする

でもやっぱり跡部の力に勝てるわけなくて

むしろ余計に強く腕を握られる

嫌で、痛くて、腕を捩るけど




「…、お前、」

「離して、帰る、もう話したくないッ」

「待てッってんだろーが、人の話聞けっ!」

「嫌ッ!」





もう滅茶苦茶だった

素直に、彼が言いかけた言葉を聞けばよかったのに

私は何に反攻していたのだろう

、また無理やり腕を振り払って





「…日吉ッ」

「っ」





口から出た名前は日吉だった

ぐちゃぐちゃの頭で…私も謀っていたのだろうか

日吉は直ぐに動いて腕を取ってくれた




「…忍足に聞いたら?日吉と何してたか。」

「…あ?忍足…?」



なんだかもうヤケで

いきなり話をふっかけられた忍足は

ちょっと不快そうに眉根を寄せていた




そう、見たことを言えばいいじゃない

だって同じ事だもん

あなたがしてたことと




「…忍足、おめー、何見た?」

「何て…てか俺も巻き込むなや…」

「…首突っ込んできたの忍足だもん。」

「いや、まー…えー?」

「忍足お前、何見た?」

「…あー…や、」

「…言わないなら見せてあげよーか?」




そばにいて、腕を掴んだままの日吉を見上げる

どうしようか思案する顔

だよなぁ流石に本人の前だもんね




でもね、私思ったんだ

もうどうでもいい、どうにでもなれって思った頭の中で

「跡部も同じ思いをすればいい」って




巻き込んでごめん

でも最後まで付き合って

顔を近づけて、目が合ったらそのまま閉じた




私はね、跡部が好きなんだよ

そう思いながら日吉と

二回目のキスをした




そして

離れて

言った






「ねぇ、今跡部はどんな気持ち?」










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