蝶9
歓楽街
幻霧館の外の世界、科白町である
相変わらず,どぎついネオンが喧しい
「ねぇねぇ、私、ハタから見たら何に見えると思う?」
「変。」
「あっくん…言うにコトかいて変って…」
「って、年齢不詳だからね。童顔といえば童顔だけど。着物着てるとそうでもないし。」
「これで実際年いってたら、どっかのクラブのオーナーに見えんだろうけどな。」
「景吾ならそう見えるかも…こうその偉そうな雰囲気が…」
「あ?」
「いえ。」
宣言どおり
先日ウチに尋ねてくれちゃった、カシオペアのオーナーの店に向かい中である
私と、跡部、不二、亜久津の四人
私はとりあえず着物、一応これ正装なので
三人は色、柄様々なスーツ
着物は諸事情により却下
でも間違っても、サラリーマンには見えない
…うん、普段着物ばっか着てるけど
ちゃんと普通の服もサマになってる
「で…あっくん、アンタなんでライダースジャケ着たまま?」
「あー?バイク外に止めてきたンだよ。用事終わったらさっさと帰りてェからな。」
「あ、そう。…既に帰る気満々ね。」
はーとため息を吐きながら、町中を歩く
人が、多い、それ系の人、客らしき人、キャッチ
異様な四人には視線も集まる
けれど私達が一体どこの誰なのか、分かる人は極わずかだろう
基本的に外に出たとしても、いちいち名乗ることなど当然しない
だから顔が分かり、どこの誰かわかるのはお客さんぐらいだ…そういうもんだ、ここの町は
当然、今から行くカシオペアも
あのオーナーが、自分が誰だかバレてないと思うように
私の顔も知らない(ウチのオーナーの顔ならともかく)
「お…、カシオペア発見。」
「どれ?」
「あの青い看板。」
「それで、どうするんだ?ここから。」
「とりあえず、私一人で行く。で、携帯に電話入れるから、それから来て。」
「あ?一人で行くのか?危ねーから俺ら呼んだんじゃねぇの?」
「あっくん、タバコ臭い…そんなしょっぱなから喧嘩売らないから大丈夫。」
そう言って、ひらひらと手を振って別れた
長居する気はない
用は何故勝手に入ってきたかと、ウチの蝶を勧誘したことを注意するだけだから
看板をくぐり、お店へのエレベーターをあがる
そして、煌びやかなドアをぐっと押した
時間的に、既に店内では結構盛り上がり始めていた
「あのー…さっき電話した、ですけど。」
「あぁ、初回のお客様ですね。お客様がお越しです!いらっしゃいませ!」
「「「いらっしゃいませ〜!」」」
対応したホストの声に合わせて、元気よく他のホスト達の迎えの声があがった
関係ないホスト君達を巻き込むのは、幾分申し訳ないと思う
いや…カシオペアがどんなお店か分かってて働いてるなら、気にすることはないのか
「初回ですので、焼酎の飲み放題となっております。割りモノはどうされますか?」
「ウーロンで。薄めでお願いしまーす。」
「畏まりました。」
…手際がいい、愛想もいい、顔もいい、ここは流石か
そしてお酒を作るうちに、どんどん自分のテーブルにもホスト達が集まってくる
その中の、口元にセクシーなほくろのある、長い銀髪の髪をした一人が、挨拶を始めた
「ハジメマシテ。名刺、受けっとてもらえる?」
「はーい。…雅治クン?」
「ん。お姉さん、名前、なんちゅーんじゃ?」
「だよ。」
「…可愛い名前やの。」
「ありがと♪」
って普通に会話してる場合じゃないよ、私
なにやら顔はいいが、妙な喋り方をするホスト君と話しつつ、お酒を飲む
そしてじっと店内を見渡す、別に、至って普通だ、盛況
「さんって着物好きなんですか?若そうなのに、よく似合ってますね!」
「あぁ、うん。浮いてない?」
「全然、素敵ですよ!」
「…よぉ似合ぉーちょる。」
「ありがとう。ねぇ、えっと、あのさ、人気ある人の指名って出来る?」
「ん。誰がええ?」
ちょいちょい時間もたち、売れっ子ホスト達が集まりだすところで
私は行動に移り始める
巻き添えくらわすなら、やっぱナンバーワンでしょう
「ナンバーワンの、えっと精市…さん?付けてもらえるかな。」
* *
「はじめまして。さん。初めてのお客様でしたね。」
「ごめんね。でも本当にナンバーワンに来てもらえるなんて、ちょっとだけでも嬉しい。」
「僕も会えて嬉しいです。お着物、よく似合ってますね。」
「ありがとう。……ねぇ、突然だけど、精市さん、このお店好き?」
「え…?」
――――――周りクドイことは言わない
一番始めに言ったように、長居する気は無いから
ほら、この台詞で、一気に温度が下がりましたよ
「…さんって…何者ですか?」
「えぇ?ただの客だよ〜」
「…嘘ですよね?このお店が始めてでも、なんだか度胸が、座り過ぎています。」
にこりと柔和な笑顔でナンバーワンは言った
うん、鋭い。不二タイプね、と私は暢気に思う
さっきの彼の視線も痛いなぁ、変なしゃべりの
「えーっと、雅治クン。そんなに見つめられると照れるなぁ。」
「すまんの。あんまり可愛いかったけ。」
「そう?ありがとー♪」
違う――――――…警戒してる
このナンバーワンもそうだけど、どうもこいつらほかとは違うなぁ
まぁとりあえずそれは置いといて…
「じゃあ、雅治クンは、えーーと、ずっとこのお店で働いてるの?」
「そうじゃよ?」
「精市さんも?」
「そうだね。」
「へぇー凄いねぇこんないい男が長く居てくれるなんて繁盛、繁盛だね!」
適当言い方をして誤魔化しつつ
明らかに不審な疑問を投げかける
ほうら、他のホストが席を立った、さぁどこへ行く
「なぁ、ちゃんって、普段なんの仕事しとるんじゃ?」
「雅治。」
「っと、ごめんしゃい。いきなりだったの。」
「いいよ。そんだけ気になったんだよねぇ。あははやっぱ変かなぁ。」
「変じゃないよ、凄く可愛いのに、不思議なこと聞くから、ちょっとね。」
「そっかぁ、でもその疑問は、あちらの方に答えることになりそうだなぁ……」
「………オーナー…。」
真打登場
待ってました
そして、私は携帯をするりと取り出した
「今晩はお客様。カシオペアオーナーのアマガワです。楽しんで頂けてますか?」
「えぇ、とても。アマガワさん。」
「でしたら、少しお邪魔して宜しいでしょうか…?」
アマガワさん、今日はお店に来た時みたいに着物じゃないのね
なんて心の中で突っ込みつつ
私はこっそりと携帯のボタンをプッシュした
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