蝶34
「あれ?リョーマ知らない?」
幻霧館
準備中
お出迎えのある子はそろそろ動き出す時間
きょろきょろ辺りを見渡し
目当ての人物が探しながら
近くにいた白蝶に声をかける
「リョーマさんですか?」
「今日お迎えある筈なんだけど」
「今日はまだ見てないですね…」
「アイツ…」
基本的にお客様管理は各々で
でもリョーマとか下の子は一応注意してみてる
一応それは教育係達の仕事でもあるのだが
「もー…すぅ(息を吸う音、からの)岳人ーーーー!!!」
辺りに響き渡る音量で叫ぶ
アイツらちびっこにはこの音量でないと聞こえない
騒いでるだろうから
そして何より探しに行くのが面倒なので
少し待てば
バタバタと足音が近づいてくる
「なに!びっくりすんじゃねーか!」
「岳人、リョーマは?」
「え、知らない」
「今日お迎えあるよね」
「そうだっけ」
「岳人?」
「ひ、日吉もだろ!!」
それが?という目線で岳人を睨む
自分の仕事と気づき慌てる彼
彼の教育係だった忍足は基本放任だからな…
「日吉も今日お迎えでしょう」
「う…よ呼んでくるよ!」
「どうせ寝てるだろうからね急いで」
「くそくそ!アイツ!」
「宜しくねー」
よし一個片付いた
遅刻だけは困るから
白蝶も誰か行かせとこう
適当に傍にいた白蝶にお願いし
自分は今日の予約リストを確認する
後は開店を待つだけか、と思ってたところでまた
「〜」
「仁王?」
「帯が汚れとった〜」
「はぁ?今?」
「ん」
「もーーーなんで昨日終わった時に言わないのー」
「酔っ払いやったけ」
「強いだろお前」
けろっと言う仁王をまた睨む
どいつもこいつも
落ちない汚れを付けた帯を受け取りため息をつく
「帯は大事なのものって言ったでしょ」
「でも汚れるじゃろ」
「汚すのはいいの」
「?」
「ちゃんと気をつけて汚したなら直ぐ別のを用意しておく」
「…はーい」
反省してるかコイツ
でもまぁ多分大丈夫だろう
仁王の教育係の不二である厳しい筈だし
「誰か白蝶にお願いするから」
「えーじゃないん」
「忙しい」
「ち」
「仁王」
「なぁ」
「何」
「俺も名前で呼ばん?」
さら、と仁王が言う
思わずそちらを見れば
予想以上に真面目な目をした彼がいて
もう一度彼が言ったことを頭の中で繰り返す
景吾との話、聞いたのだろうか
私が彼だけを唯一名前で呼んでいた理由
なんて答えようか
色んな答えが頭浮かぶ
さて、どうしよう、思った所で再び遮られる
「さん」
「え、日吉?どうしたのお迎えは…」
「あの、店の前に…」
「店の前に?」
『何人か男がいる』
お迎えに出た日吉から言われた言葉
どこの輩だ
興味本位で女の子がいる事はあるが
男は珍しい
しかも一人じゃないと
なんだろう
仁王に一緒にいくと言われたが
玄関先だ、大丈夫と一人で向かった
そして
その彼らが誰か分かるのは
直ぐの事
**
「…」
「…」
「…」
「着物似合うなぁ…」
「ありがとう」
従業員用の部屋の一室
四人と向かい合い座る
数日ぶり
「えーとりあえず、びっくりしたよ白石君」
「ほんま、急にごめんな」
「大丈夫だけど、オサムさんには?」
「言うたよ、一応」
「千歳さんはいないんだね」
「あー声は掛けたんやけど…」
アイツ気ままやねんと相変わらずの明るい笑顔で金太郎君
それから明後日の方向を見たままの光君に
緊張気味の謙也君、この四人
「やっぱ迷惑やった?」
「来た理由による」
「…理由、」
「うん、働きに来たのか…観光か」
「働きに来た…いや、」
働かせて下さい
そう言って白石君は
正座したまま頭を下げた
はっとしたように金太郎君がそれに倣う
それを見て謙也君も慌てて頭を下げる
光君だけは苦虫を噛み潰したような顔だったが
「…びっくりした、顔上げて?」
「…」
「あのね、それなら大歓迎だから」
「ええの?こんな勝手言うて…」
「ダメだったらそもそも店の敷居またがせないし」
にこーと笑う
そう、迎えるつもりがないなら
店の外で話して終わらせる
元から迎えるつもりでいる
だから声を掛けたわけだし
大阪に居た時
「すまん…」
「ただオサムさんにはちゃんと話てね」
「ん、分かっとる」
「とりあえず今日は疲れたでしょ」
「や俺は大丈夫だから」
「俺も!」
「あ、俺も。」
やっぱり白石君に続く二人
可愛いな
光君は…とりあえず今はそっとしておこう
「じゃあ、営業終わったら皆に紹介するから」
「分かった」
「それまで簡単にここの説明と、」
「アカン白石!足しびれた!」
限界!といった風に金太郎君が声をあげる
何やっとんねんと謙也君が突っ込む
それに苦笑し
「座ってても暇だよね」
「あ、すまん気にせーへんといて」
「ううん、ちょっと見てまわろっか」
「ええの?」
「邪魔にならないようにこっそりね」
多分彼らが来たことは皆に知れわたっただろう
仕事があるから誰も来ないだけで
大阪でのことも知れ渡ってる
いつもの拾った子と違って
彼らの反応が不安だが
迎える気は変わらない
正式な紹介はさっきも言ったように営業後
とりあえず
こっそり邪魔にならないよう店を見てまわる事にした
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