蝶30
3日
ここに来てから
それだけ経った
今いるのは彼らの寮の一室
というか、ここから出させてもらってない
所謂監禁というやつだろうかこれが
携帯は彼らの監視の下使ってる
幻夢館側に不審に思われないように、と
そして常にだれか一人は一緒に居る
つけっぱなしになってるTV
ご飯は貰える
トイレだってお風呂だって入れる
(監禁じゃなくて軟禁ってやつ…?)
窓から見える景色も見飽きた
視界に入る薄汚れたビルと空
―こういう景色を、私は知ってる
「―金ちゃんは監視役にならないんだね。」
「…アイツじゃムリやろ。」
「そうだねぇ…単純そうだし。」
「…」
今いるのは財前、光君だったか
彼は基本何も話さない
ヘッドホンをつけ携帯が雑誌を見てる
声は聞こえてるみたいだけど
まぁ楽しそうではないね
当たり前か
こんな事をする目的は聞かせてもらってない
推測するに
お店を潰させたくないんだろうけど
私をここに閉じ込めてどうするのか
1週間たって帰らなければ不審に思うだろう
残りの二人は、何をしてるんだろう
今日まで3日間それは繰り返し聞いてる
当然答えは返ってこない
でもそれが分からなければどうしようもない
逃げるのは正直簡単だ
鍛えてるから
でもそれじゃあ意味がない
私は、この子達を助けたい
そう思ってしまったから
…今のこと何もできてないけど
「―ねぇ光君。」
「何…何も答えへんで。」
「私を閉じ込めててもどうにもならないよ?」
「…」
彼の顔が歪む
彼も分かってるんだろうな
他の子も、きっと
でもそうせざるを得ないのか
1週間
白石君はリミットを聞いた
という事はそれまでに何かしようとしてる
お店を、潰させない為に?
そのためには何をする?
「…危ないマネはダメだよ?」
「…」
「それだけは伝えておいてね。」
「…」
「私は大丈夫だから。」
そう言って目を閉じて横になる
眠気なんてないけど
目をあけていると、余計な事を考えるから
嫌な嫌な記憶が
蘇りそうになるから
…皆、元気だろうか
**
結局1週間
暇でおかしくなりそう
太った気もする…なんて言ってる場合じゃないか
一応リミットだけどどうするんだろう
オサムさんもあれから見てない
でも今日でお店はもう使えない
くらくらする頭を抑えて
起き上がる
部屋には誰もいなかった
「…?」
そう思ったら、外から話し声
ばたばたという足音が部屋に近づく
…謙也君と、誰の声?
勢いよく部屋のドアが開けられた
謙也君と、
はじめて見る顔
「…お前らなんばしよっと…?」
…?何弁?
背ぇ高いなぁ
はぁと目の前の彼はため息をついた
「だって!帰られたら困るやろ!」
「こんなんしても意味なか」
「じゃあどうしたらええねん…つか千歳今までどこおったん?」
「色々。白石は今どこおると?」
「稼…あ、え、でかけとる。」
ああ、もう一人の従業員か
そういえばふらふらしてるとか言ってたな
そして言いかけた謙也君の言葉
「…やっぱり皆お店取り戻そうとしてるの?」
「…え」
「そぎゃんたい」
「千歳!」
「そっか…でも…ムリだよ?」
無駄だと言いたいわけじゃない
その気持ちは分かる
でも、1週間でなんとかなる額じゃない
それくらは私にもわかる
きっと皆も分かってる筈
それでも、諦められないのか…
「そんなんお前に言われんでもわかっとるよ」
「白石」
「白石君…」
「悪いけど、リミット伸ばしてもらえへん?」
「…連絡させて」
「ええよ。余計な事言うたらあかんよ?」
「分かってる」
伸ばせるかどうか分からないけど
そもそも手続きしてるのオサムさんじゃないのか
それでもここでムリだと言い張ってもしょうがない
謙也君から携帯を渡される
オーナーへとかけた
音はスピーカーにさせられて
「…もしもし、太郎さん?」
『かそちらはどうだ?』
「リミット、延ばす事できますか?」
『どうかしたのか?』
「もう少しこの人達を見たいんです。このお店で。」
『…そうか分かった。後1週間延ばそう。』
「すみません手続きはオーナーが?」
『ああ。』
「宜しくお願いします。」
オサムさんではないのか
まぁなら良かったけど
『』
「はい」
『…平気か?』
「はい勿論。大丈夫です。」
『…そうか。なら引き続き任せた。』
「はい。」
『店の方にも連絡入れておけ。』
「はい。じゃあまた連絡します。」
プツと通話が切れる
そのまま謙也君に返した
「オサムさんは?」
「俺らと一緒やで、稼ぎ行っとる。」
「ちゃんと教えて、どういう事?」
「白石、話なっせ」
「…」
―――ここのオーナーは元々別の人だった
けれど経営がうまくいかず友人だったオサムさんに助けを求めた
白石君、謙也君、光君、千歳君はその時からの従業員
オサムさんが来てからお店の調子は良くなった
従業員も増え、売上も伸びた
けれどある日突然、そのオーナーは消えた
「権利書やらなんやらそれごと盗られたらしくてな」
「…お店盗られそうになったってこと?」
「金欲しかっただけや。あいつは店自体に興味はなかった」
「―それでオサムさんがお金払ってお店を奪い返したの?」
「…せや。でもなぁそない大金すぐに払われへんから、」
結局オサムさんは借金をして
…奪い返しただけじゃ意味がない
それからもお店を維持するためにはお金がかかる
払いきれなくなって
結局お店は手放すことになった
それで、今に至る
「皆で稼いで、お店をまた買い取ろうとしてるの?」
「…バカだと思うやろ」
本当は店を続ける余裕なんてなかった
けれど店を潰せば、自分達従業員の行く場所はなかった
だからムリして、借金してでもお店ごと守ってくれた
「俺らはオサムちゃんのおかげでこうして生きてられるん」
「…」
「恩返しや。オサムちゃんだけには苦労させられへん」
ここも、奪われたくない
そして皆の為にした借金も返したいと
…幻夢館にいる子達と同じだろうな
居場所のない子達
皆オサムさんに手を取られて
居場所が出来た、それで
「…オサムさんは知ってるの?」
「知らんよ。」
きっと、オサムさんと皆の意思は違う
オサムさんは皆の為に太郎さんに預けた
皆はオサムさんの為にお店を取り返そうとしてる
言うのは簡単だけど
だからと言って直ぐに納得はできないだろうな
…暫く付き合おうか
きっと自分達で気づく筈
今ここで私が言ってもしょうがない
その気持ちは分かる
「あと1週間…諦めないんでしょう?」
「…諦めへんよ」
「だったら、もう一度携帯かして」
「何するん?」
「幻夢館にも連絡する」
「…謙也」
また謙也君から携帯をもらう
余計な事を言うつもりはない
それでもスピーカーボタンを押す
『お電話ありがとうございます。幻夢館でございます。』
「あ、私です。お疲れ様」
『さん。お疲れ様です。』
「あー蝶、だれかいるかな?出来れば上のコ。」
『あ、はい待ってください。』
時間は夕方に近い
皆もう店にいる頃だろう
―できれば、アイツが出ればいいんだけど
『…?』
「あ」
『あ?』
「あはは、何でもない。」
『…お前今日帰りじゃねぇのか?』
「あーそれが後1週間いることになって。」
『は?なんでだよ。』
「もう少しここでこの子達見てたいの」
『居座る気か』
「まさか〜」
本当に出た景吾
相変わらずだな
懐かしく感じる
普段1週間も離れる事ないからな
お店から、皆から
『…ガキ共が煩えんださっさと帰ってこい』
「あと1週間だけ。宜しく頼むよ。」
『…分かった。伝えておく。』
「宜しくね跡部。」
『―――ああ。』
プツと電源を切る
少し、落ち着いた
…いや、余計落ち着かなくなった気もする
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