蝶28
それは、
一本の電話から
「はい、もしもし?」
『、ちょっと頼まれてくれるか?』
「太郎さん。何ですか?」
『大阪に行ってほしいんだ。』
「…大阪?」
**
「ってことでちょっと大阪行ってくるね。」
「…大阪ってなんだよ突然!いつ?どんくらい!?」
お給料日のミーティング時
全員そろって丁度いいので皆に報告
太郎さんから言われた経緯はこう
太郎さんの知り合いが
大阪で同じようにお店をだしているらしい
そこへ私に行って欲しいと
「岳人、落ち着き」
「だって、ゆーしっ!」
「実際どのくらい行くん?。」
「1週間くらいかな?」
どうも大阪のお店を吸収するらしく
今働く従業員をこっちへ引っ張ってこいと
その前に従業員がどんなもんか見て来いと
「1週間って長いC〜」
「一人で行くなんて危ないにゃ〜」
「じろーにえーじも、子供じゃないんだから。」
従業員の中には移動したくない子もいるだろうし
その選別も兼ねてすべて任された
人数もこちらと違ってだいぶ少ないらしい
「…大丈夫なんですか?」
「なにー観月まで。」
「…変なもの連れてこないで下さいね。」
「分かってるよ〜」
「でも本当に気をつけてね?。」
「不二、うん、だいじょーぶ。」
意外に心配されて逆に戸惑う
いつも通りちょっと拾いに行くノリだったのだけれど
でもまぁ嬉しいことだけれども
「…いつ行くん?」
「仁王ーうん、今から。」
「今から!?急だね、寂しいよ。」
「ちょっと幸村、そんな永遠の別れみたいに…」
「ふふ、ごめんねつい。」
まぁ急だけど、いつと決まっていたわけでもないし
気になるし
さっさと行って来ようと思って
適当に荷物をつめたキャリーを引っ張って
久しぶりの遠出だなと思いつつ
皆に見送られながら玄関にたった
「。」
「ん?なに?景吾。」
「何かあったら電話しろ。」
「…うん。ありがと。」
行ってきますと返して
幻霧館を後にした
**
「えーっと…うわぁ東京並みのややこしさ。」
大阪につき
さっそく駅で迷子
とりあえず太郎さんの知り合いへ電話する
『もしもし』
「あ、えっと幻霧館のものです。」
『あーちゃんやったっけ?』
「はい。」
「もう駅?ちょっと待っててな。」
今いる場所を伝え電話を切った
独特ななまり
忍足がいるからそんな新鮮というわけでもないけど
でもちょっと
自分がいつもと違う場所にいることを
だんだん認識してきた
「既にホームシックってか…」
「ちゃん?」
「あ! …えっとオサムさん?」
「せや、はじめまして。すまんなぁこんなとこまで。」
「いいえ…宜しくお願いします。」
若いな、そう思って深く帽子を被った彼を見て思う
元々店には違うオーナーがいたと聞いている
けどその人が突然いなくなり代わりに彼がやっているとか
「早速いこか。寝泊まりは?」
「近くのホテルを取りました。」
「せやなぁ一応寮あるけど狭いからなぁ」
「そうなんですか…」
他愛もない話をしながら
また電車を乗り継ぎ
お店に向かった
そう時間はかからず目的地についた
テレビとかでもよく見る界隈から
少し離れた所にお店はあった
幻霧館に比べればだいぶ違うそれ
ビルの一室
錆びれひんやりした階段を登っていく
――なんだか、嫌な記憶が蘇りそうで
慌てて私は頭を振った
その様子にオサムさんが気づく
「どないした?」
「あ、何でもないです。…皆さんはもうそろってるんですか?」
「ああ開店準備中やで。」
「そうですか。」
今更、どうしてだろうか
妙に緊張してきた
大勢の前にたつのなんて慣れてるはずなのに
いや違うか
知ってる人と
知らない人たち
ぼうっとそんなことを考えながら
オサムさんが扉に手を掛けるのを見た
ぎいと重い黒い扉が開いた
「あっおかえりー!」
「ただいま金太郎。」
一番最初に飛び出したのは
元気のいい男の子
…随分若く見えるけど、この子も働いてるの?
「この子は主に雑用や。」
「あ、そうなんですか。」
「誰?このねーちゃん。」
私の視線に気づいた彼が
そう説明してくれた
そして金太郎と呼ばれた彼に見つめられる
「はじめましてです。」
「?」
「来る言うといたやろ昨日。」
「あー! あ、白石!お客さんきたで!」
奥に人がいたようで
金太郎君が大声で呼んだ
白石、と呼ばれたその人
「…はじめまして、です。」
「…はじめまして。」
にっこりと人好きのいい笑みを浮かべる彼
でもなんとなく
今までいろんな人を見てきた直感
一筋縄じゃないかない
なんか面倒なことになりそうな気がする
そんな、気がした
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