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「……アンタ、何してんの?」






リョーマのこんなに驚いた顔を見るのは
多分これが最初で最後だと思う
私は笑って返した






「いや、ちょっと、途中までいい感じだったんだけどネ。」
「腕、刺されたの?」
「うん、リョーマと同じとこ…自分でやったんじゃないけど。」
「――――…親父に聞いたんだ?」
「細かくは聞いてないけどね。」






リョーマは、自分で自分の腕を傷つけた
それは夢を捨て切るためだったのだろうか
それはリョーマにしか分からないことだけど






「ゲームは私の勝ちだね。」
「―――…本気だったんだ。」
「南次郎さんに聞いてた?」
「アンタが来て、俺をつれてくって。」
「そ、ゲームして勝ったら。」
「あいつら、全部倒したわけ?」
「昔の教訓でね。鍛えてるから。」
「―――――でも、刺されてんじゃん。」
「はは。」






リョーマの部屋だろうか
殺風景なその部屋の入り口で
私は座り込んだ






―――多分、私はおかしいんだろうな、と思う
ここまでして、得るべきものなのか
答えは、ノーだろう






蝶一人増やすために、ここまでする必要はない
でも、私は頑なに求めてしまう
今まで、なんでも直ぐ諦めてきたせいだろうか






直感を信じるとか、そういうことよりも
今諦めたら
全てが最初に戻ってしまうような気がして、全て失うような気がして







それがどうしようもなく恐い
だから、絶対に
諦めることができない―――相手に少しでも気持ちがあれば







「病院、行った方が…」
「大丈夫。」
「何言ってんの?」
「腕だし、たいしたことないよ。」
「…血、結構でてると思うけど。」






リョーマが未来を断ち切る為に自分で腕を傷つけた
それに気づいた時、とても悲しいと思った
だから、自分も、無意味な事だけど、同じ傷を負おうと思った






だから、この傷はわざと
というか、多分、アイツ等も本気じゃなかった
多分皆リョーマの事大事に思ってる人達なんだろうなぁ






リョーマが私に近づいてきて
私の腕の傷口にタオルを押し付けた
ぐんぐんと血を吸い、赤く染まっていくタオル






「俺の怪我より、ずっと痛そうだね。」
「…そうかな。」
「ねぇ。」
「なに?」
「アンタ、おかしいよね。」
「―――――――そうかもね。」






本当に、おかしいかもしれない
暫く間をおいて、リョーマの声が聞こえた
『テニスは、もういいよ。』






「アンタの方が気になる。」
。」
?」
「教えたでしょ、私の名前。」






にこりと笑ったとこで、意識が曖昧になってきた
血、流しすぎたかなぁ
ギリギリのところで、近づく足音を耳に捉えた












* *













「いやーちょと危なかったね!」
「ちょっと、じゃねぇよこのアホ。」
「大馬鹿者ですね。」
「信じられんな。」
「ほんま、無茶したらアカンで?」
「…………すみません。」






自室で私は療養していた
と、いっても腕の傷はそこまで酷いことはなかったから
まあちょっと血は流しすぎたので貧血を起こしてしまっただけで






そして、跡部・観月・手塚・忍足に説教され中
彼ら以外には心配させないよう、帰ってきたことも知らせてない
―――リョーマもまだ親のところである






「で、結局そのリョーマとやらはどうなったん?」
「どうするが、自分で答えを探し中。」
「さよか。」
…貴女のそういうとこ、いい加減直しなさい。」
「え?」
「お前はこだわりすぎなんだよ。」
「う…」
「全員がお前を心配しているということだ。」
「うん、ごめん。」







ぽす、と頭を枕に埋めた
繋いである点滴を見つめる
幸せモノだなぁと、不謹慎にも感じていた





暫くして
ある夜、リョーマから連絡が入った







『…じゃ、明日来て直ぐ皆に紹介するね。』
『うん。』
『どうかした?』
、傷は。』
『平気。』
『リョーマ。』
『何?』
『うち、結構テニス巧いのいるよ。』
『――――――ふぅん。』
『生意気な声。』
『何ソレ。』
『はは。』










彼の、自分で選んだ道への
第一歩










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