蝶21
「観月!!」
「大丈夫―――!?」
「ぅわッ」
「……煩…」
思い出に浸っていた所で、突然襖が全開にされた
流れ込んできたのは、年齢若い軍団の一部(何だそれ
岳人にブン太に木更津兄弟、んで英二か
「観月さん、お酒苦手だからね。」
「他は完璧なのになぁ、ダメだぜぃ。」
「でも、俺も強い酒苦手だにゃ〜」
「いや英二お前まだ酒だめじゃん。」
「えーそれ言うなら岳人もでしょー」
くすくすと笑みながら言う木更津兄弟を筆頭に
皆観月を取り囲んで好き勝手言っている
あーあ観月ちゃん青筋たってますって
「はーい!みんなお仕事はどうしたのかな〜?」
「「もう終わったー。」」
「じゃ早く寝なさい。それ以上騒ぐと怒られるよ。」
「誰にー?ってか別に誰も怖くないしー♪」
と言った瞬間
パンッ
っと勢いよく襖があけられた
「英二。」
「げッ手塚!」
「お前、片付けていけと言っただろう。」
「にゃ〜…えっと、それは観月が心配で…」
次に襖をあけて入ってきたのは
英二の担当である、手塚
やっぱり、片付けサボってきたか
「さっさと来い。」
「にゃ〜〜ッだって観月だけズルイ〜と〜」
「…やっぱりそれが本音でしたか。全く…」
「あ;心配だったのも本当たよっ?」
「…それから、ブン太、岳人。忍足が探していたぞ。」
「「げ。」」
忍足はブン太、岳人の担当
ちなみに木更津兄弟は観月なので特に問題は無し
あーあ皆サボってきちゃって
「くぉら…。お前ら何やってんねん皆して…」
「おわ、忍足っ。さ、サボってたんじゃねーぞ!これはな、観月が心配で…」
「はいはい、岳人、いいわけやろ。」
「うん。」
「素直やなぁ…」
「だって観月だけ、一人占めずるいぜ。」
「まぁあぁ…そりゃブン太の言うとおりやなぁ。」
「いやいや君達。」
忍足パパも登場し、また人口密度が高くなる
ほら、観月ちゃんキレちゃうから
一応突っ込んでおいたけれど
「…少し、昔話をしていただけですよ。」
「昔話?」
「一人前の蝶になりたかったら、さっさと片付けてきなさい。」
「観月さんは厳しいね。」
「あなた達もです。淳、亮。」
「俺たちはちゃんと片付けてきたよ?大部屋だったし。で、昔話って何?」
「……。」
あ木更津兄弟も知らないんだ、なんて私は思った
ここにいる人達の過去は、知られていたり、知られてなかったり
大抵は、みんな詮索することはないから
「僕の、ここに来る前の話です。」
「…観月って、ずっとここにいたわけじゃねぇんだ?」
「違いますよ。ブン太君。」
「高校は行ったんでしょ?不二と一緒だったって聞いたし。」
英二が聞く、でも手塚と忍足は黙っている
二人は知ってたか
別に観月がいいならってことで、私は黙っているけど
「えぇ行きましたよ。その後は科白町で働いていました。」
「え、ここの前に働いてたの?」
「ええ、科白町の…」
「殴りこんだ!!!」
「「え???」」
「観月が働いてた場所に、私が殴りこんで、観月を強奪してきたのです。」
「「強奪〜??」」
「…」
観月がいいって言うのなら、別にいいんだけど
なんとなく
なんとなく私は自分の武勇伝を語りたくなってしまったので
「殴りこんだってマジかよ?」
「マジ。ぼっこぼこ。…ちょっとマズかったけど。」
「あん時は観月ももボロボロやったなぁ。」
「え、ゆーし知ってんの?」
「まぁな。」
「…そういうわけです。あの時の約束を僕は守ってるんです。」
「約束って…何?観月さん。」
敦の問いかけに
何だっけ、と無責任に私も聞いた
観月は珍しく、少し微笑みながら言った
「ヒミツです。」
「「えぇっ!?」」
「ぷっ」
「何それーーー!!」
ぎゃぎゃあ騒ぐチビっこ達をよそに
私は笑い
観月は立ち上がった
「観月、もう大丈夫?」
「薬が効いてます。敦、亮。暇なら片付け手伝いなさい。」
「「…はーい。」」
「ブン太、岳人。戻るでー」
「「はぁーい。」」
「英二、行くぞ。」
「むー…、、また後でねっ」
「はいはい、いってらっしゃい。」
それぞれ連れ立って、部屋を出て行く
苦笑交じりに息を吐いて
私は行灯の火を消した
「。」
「わっ!――びっくりしたーまだいたのか…観月、どうしたの?」
「有難うございます。」
「え?」
それだけ言って
観月は私の手を片手で、少しきつく握った
『死んでも、守るから。』
「死ぬまで、貴女のそばにいますよ。」
「……ナンカ、それ凄そう。」
「厳しくいきますからね。死ぬ際まで。」
「やっぱ?」
「ええ。」
「あはは。」
私は笑った
なんだか嬉しかったから
と、思ったらもう誰もいないと思っいた廊下からまた声がした
「死ぬまでってすごいの。」
「…っびっくりした…皆気配消すのやめてよ…!」
「仁王君。」
「大丈夫なん?」
「ええ、ご迷惑おかけしました。」
「や、俺は別に。」
じいと、向かいの部屋の障子にもたれながら
仁王は観月に視線を向けていた
ああ確かこんな目で不二とかも見ていたなと思いつつ
「…何があったか気になるんですか?」
「気にならんと言ったら嘘じゃけど、別に聞く気もないけぇ。」
「気になるって顔に書いてありますよ。」
「ほおか?」
口をはさもうかどうしようか
別に喧嘩をしてるわけではないだろうけど
喧嘩にはならないだろうけど
ああやっぱりはさむか
そう思って腰をあげようとしたとき
仁王がまた口を開いた
「あんたは品が良さそうやったけぇ、何でここにおるんか気になった。」
「それはどうも。」
「同じようにに連れてこられたんか。」
「ええ。」
「酒も弱いのにどうやって赤蝶にまでなったん?」
嫌味で言ってるわけではないだろう
仁王の敵対心は今に始まったことではないし
…と言ってもハラハラするのには変わりないが
観月は何も言わず、じっと仁王を見ている
すっと部屋から出て、廊下にいる彼に近寄った
そして不敵に笑む、観月のいつもの笑顔
「親に捨てられたんです。」
「…」
「片親だった父親に売られました。」
「…」
「それからに、助けられたんです。だからここにいるんです。」
「…死ぬ、まで?」
「ええ。」
その話は、観月がここに来て
少したった頃に聞いた
その店にいた経緯を
高校を出て、普通に働こうとしていた観月を
東雲、あの店のオーナーに預けた
その時に得たお金を持って、観月の父親は消えた
「。」
「え、あ、うん何観月。」
「敦達がサボってないか先に見てきてもらえますか。」
「…OK。任せてー。じゃあね仁王も。」
「…ん。」
後は観月に任せよう、そういう意味だろうし
ひらひらと手を振って
振り向かずに、廊下の先の階段を下りた
それを見送り
観月は再び仁王に顔を向ける
をわざと行かせたのは気づいただろう、少し怪訝そうな彼の顔
「接客はお酒を飲むだけじゃありません。」
「…」
「ただそれよりもの為に何かしたいなら、先ず貴方自身が幸せでありなさい。」
「…どういう意味じゃ…」
「が望むのは、稼ぐことじゃなく貴方が笑ってることです。」
「…俺は、」
「好きなんでしょう、が。」
「…」
ふ、と観月は笑う
馬鹿にした笑みではないが
元々鋭い仁王の目が、更に鋭くなる
「…お前さんは?」
「好きというより大事ですね。」
「どう、違うんじゃ。」
「さぁ、どうでしょう。」
「…」
「貴方は貴方らしくいればいいんです。」
「…別に、気負ってるつもりはないんじゃが。」
「負ってるでしょう。」
彼女が好きだから
跡部のように、絶対的な存在に憧れた
早く役にたちたくて、上に上がりたかった
その気持ちはよく分かると観月は思った
自分のここへ来た最初は
彼女への恩返しだと、稼ぐことに必死になった
でもそうじゃないと
彼女と過ごして、ここで過ごして
分かっていった
彼女の幸せは
自分達、蝶が幸せでいること
この場所で笑っていること
その為には確かにこの場所が必要
だから稼ぐことも必要
でも自分を見失ってはいけない
すっと、観月も彼女の後を追うように
階段へ向かった
仁王はじっとその売ろし姿を見送る
「は…古株にはかなわん。」
「老人にみたいに言わないでください。」
「聞こえとったか。」
「暇なら貴方も片付け手伝ってください。」
「…りょーかいじゃ。」
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