蝶2
「―――…よぉ。暇人。」
「昼間はみんな暇人。あんた今日お出かけないの?」
「俺の客は大抵昼間忙しいんだよ。」
「知ってるー」
「じゃあ聞くな…白蝶頭。」
「それで、なんか用?黒蝶。」
「その呼称で呼ぶなっつてんだろ。」
「そいつは失敬、景吾サン。って自分が先に呼んだんじゃん。」
「…ふん。」
真昼間の幻霧館
跡部は色無地を着て、ふらりと私の仕事場である一室に来ていた
彼の腰に巻かれる帯は黒…別に喪服と言うわけではない
白蝶、黒蝶とは、ここの館で決められている呼称である
色で、ランク、立場を分けているのだ(それを表すのが帯)
例えばー
白(シロ)蝶とは、ここで働く女性全般を指す、事務仕事、掃除、警護も担う
黄(キ)蝶と呼ばれる者は主に問題児、ランクは五位
青(アオ)蝶は、まだ働き出して日が浅い者などを指す、ランクは四位
紫(シ)蝶は、ランク三位の者
赤(セキ)蝶は、ランク二位の者
そして跡部…黒(コク)蝶が最高位、ここのランクに載せられるのは、一人のみ
ここでは、ホスト=蝶と呼ばれる
あくまで呼称であって、名前で呼び合うのが基本であるが
そしてもう一つ外と違うのが
「まーそこまで昼間から頑張ってもね、外とは違うし。」
「その分地位も保ちやすいだろ。」
「あら景吾さんからそんな言葉が出るとは。地位が揺らいできたの?」
「は、暫くは蝶の変動はねぇよ。」
「素晴らしい自信で。」
ここでは、売り上げ(稼いだ金)=給料ではない
自分のランク=給料である
つまりいかに顧客を増やし、指名してもらうかが勝負
自分の客がたまたま数人来れなかったりすると
あっという間に蝶の変動…ランクの上下が入れ変わる
それでも青蝶と黒蝶の差はかなり大きいが
「今日は拾いにいかねぇのか?」
「んー…今は安定してるしねー人数も。」
「そりゃますます暇人だな。」
「うっさいなー…はいはい邪魔するなら行った!他にも仕事はあるん…」
「葵〜!」
「…――――また(起床時は)煩いのが…何?ジロー。」
「遊んでたら青帯破っちゃった。」
「…君は蝶という自覚が薄いね?青帯は一番大事だってんでしょうが…」
「ガキか。」
「む〜跡部のアホ〜」
「あ゛ぁ?」
「はいはい、喧嘩しない…。新しいの用意するから。」
こんな風に、跡部の用に落ち着いた蝶もいれば
ジローのようにまだ幼い蝶もいる
まぁ年齢差もあるだろうが
私はさっき呼ばれたとおり
白蝶頭、ここで働く女性達のまとめ役である
…当然だが、恋愛は一切禁止、が規則である
「誰と遊んでたの?」
「エ〜ジ。」
「珍しく起きてると思えば…またよりによって英二と暴れるか。」
「うん。テンション高かった。」
「それで破いたのね…。はい、新しいの。」
「さんきゅ〜葵。でも破いたのエージだからね〜!」
「はいはい。暴れるなら外でねー」
ひらひらと障子にもたれ掛かりながら
ジローに手を振った
跡部が隣で小さくため息を吐いた
「ジローはあんたが教育係でしょ。」
「破いたのは菊丸だろ。菊丸の担当は…誰だった?」
「不二。あ、でも手塚のが適任だから今は手塚。」
「じゃそっちに注意しろ。」
「……。」
「どうした?」
「いや、ちょっと思い出してた。」
さっき言い忘れていたが“拾う”というのは
用はスカウトのことである
外の世界から、こちらの世界に入ってきそうな人間を探す
それも白蝶…否・リーダーである私の役目だった
そしてふと、ジローをここに入れた時のことを、思い出していた
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