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不二がこの世界で働こうとしたキッカケ
それは弟の夢を叶える為
幼い頃に両親と別れ、親戚の家で二人は育った







愛されなかったわけではないが
所詮はお邪魔者だった
弟に辛い思いはさせたくない…だから不二は愛情を注いだ






弟が留学をしたいと思っていることは知っていた
だから不二は嘘をついた
別れた両親から援助金がもらえるから、行っておいでと






自分を犠牲にしているつもりはなかった
それこそ本当に願うことだった
寧ろ自分のエゴでもあった







――――――その話は、幻霧館に入って直ぐ聞いた
聞くまでもなく、不二は話してくれた
吐き出すように









「本当はね、結構しんどかったんだよね。」
「…しんどかった?」
「…一人になったなぁって。あの空港で一人思ってて。」
「うん。」
「裕太がいたから、辛いことも辛いと思わなかったけど。
   どんなにその裕太のためでも…一人、だったから。」
「そっか。」








不二は淡々と話す
話しつつ、隣に居る、と名乗った彼女と話す
話しながら、するすると自分の中に入ってくる人だと、思った






何気なく虚を付くことばかり言うけれど
嫌味もなく、その言葉に苛立ちも感じない
ただ、横に居ることが心地いいと思う








「…は、なんで、あの時二度も僕に声かけたの?」
「………美人だなぁっと…。」
「…それだけ?」
「スゴク綺麗だと思ったから、もっとちゃんと、笑って欲しいと思ったからかな。」
「…そっか。」
「そうだよ。」











* *














未だ縁側に腰掛けたまま
私と不二は話していた
昔話を








に声掛けられたとき、本当に凄く嬉しかったんだよ。」
「ほんと?」
「うん。」
「そっか。」
は僕の笑った顔が好きだって言うけど、僕はの笑顔のほうが好きだよ。」
「…ふふ。褒めても何もでませんよ。」








誤魔化すように笑う
不二は楽しそうに笑みながら、見る
そして思い出す






本当はと空港で出会ったあの時、どうでもいい気分だった
二度目会った時騙されているんじゃないかと疑った
疑ったけど、それでもいいやとも思ったのも事実







でもは、そのままだった
変わらない笑顔で
仕事を教えてくれた







あとは…








「…見つけた。また、ここですか。」
「あれ?観月ちゃん。」
「観月ちゃんじゃありません。…で、周助、さっきから向こうに置いてある貴方携帯が鳴り続けてますよ。」
「え、本当に?」
「煩いんでさっさとでて下さい。…弟君帰ってくるんでしょう、彼からじゃないですか。」
「…ありがと。―――、戻るね。ありがと。」
「ううん。日にち決まったら連絡して。」
「うん。」









同じく赤蝶である、観月、高校の時の同級生だった
彼がいたことは結構驚いた、お互いに
ちなみに自分の教育係も彼だった(凄く嫌そうだったけど)







すれ違いざま、不二は観月にもう一度小さくありがと、と言った
観月は目を合わせるわけでもなく、言葉を返すわけでもなかった
二人を見て、私は満足そうに笑った








「…気持ち悪い笑みを見せないで下さい。」
「気持ち悪い…相変わらず顔に似合わず毒はくんだから…」
「綺麗なものにはなんとかって言うでしょう。」
「わ!自分で言った!」
「はいはい。貴女もさっさと部屋に戻りなさい。」
「はーいって、私しゃ子供か…」
「十分子供ですよ。おやすみなさい。」
「年下のくせに…おやすみー。」










彼らが知り会いというのは後で知った
まあ若干仲は微妙だったが、その時の驚きようは見てて大変面白かった
まぁそれはまた別の話







立ち上がり
星の見えない空を仰ぎながら
私は戸を閉めた










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