蝶15
私はその日、空港に居た
でも自分が飛行機に乗るためではない
太郎さんが海外に行くというので、見送りに来たのだ
で、見送った後
滅多に来ることもないし、時間も少しあるし、ということで
暫く見学デッキにて、ぼんやりとしていた
老若男女
大きな鞄、小さな鞄を持ち
楽しそうな笑顔を浮かべている人々…うん悪い雰囲気じゃない
目の前のガラスの向こうでは
翼の生えた大きな機械が、何度も離着陸を繰り返している
時期が時期なのか、同じように観察している人はあまりいなかった
「………土産でも買って帰るか。」
ポツリと呟いて
立ち並ぶ店に向かおうと、くるりと身を翻した処で
――――――グキ
「…痛っ……だから、ヒールは、嫌い…」
「――――――…大丈夫?」
足を挫いて、手をついた状態のまま
上から声が降ってきた
そして差し伸べられた手を見つつ、ついと顔を上げた
外から入る強い光りで、ハッキリと顔が見れなかった
だから、一瞬女かと思った
その中世的な顔
怜悧さの漂う、整えられた顔立ち
完璧ってこういうことか
と思わせる笑顔
「…ありがと。大丈夫。」
「…誰かの見送り?」
「あぁ…うん。見られてた?」
「なんか、目キラキラさせて見てたから。」
「おっ、お恥ずかしい…。でキミも見送り?」
一瞬、彼は虚をつかれたような顔をした
何か言ったかしら、と私は考え
気づく
「あ、キミって呼び方か。…私のこと年下って思ったんでしょ。」
「…うん。」
「よくそう思われるー。でもキミの方が年下でしょー。だからキミ。」
「…呼び方は別にいいけど、よく、分かるね。」
「まぁ色々と、見分け慣れてたり。ん〜二、三歳っ私のほうが上と見た。」
「嘘、そんなに?」
「だって…」
耳元まで口を寄せて
彼の年齢を言って見た
当然
「…正解。」
「ふふ。」
「すごいね。」
「まぁね。――――…で、どうしたの?」
「え?」
「なんか、嬉しそうな、悲しそうな…どっちかっていうと悲しそうな顔してるから。」
私はニコリと笑んだ、嘘ではない笑顔だ
彼は一瞬真顔になり、それから笑んだ
さっきまで見せてた笑顔とは、ちょっと違う笑顔だった
「アイスでも食べない?」
ちょっと気になった
だから、ちょっとお茶に誘ってみた
アイスは子供っぽかっただろうか
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