まる瞬間2







教室は薄暗くて

そして生徒の声は遠くからしか聞こえてこなくて

なんともおあつらえ向きな空間が広がっていた






「手塚を…見てた。…体育の時も…いつも…」

「…いつから?」

「…一年。」

「今も?」

「…今は、」





分からない。嘘じゃない

見てはいるかもしれないけど、クセというか

不二が疑っているような感情で見ているわけじゃない





でもさっきの手塚の台詞に

私はこんなにも取り乱している

私は手塚が“好き”だった?

今は?






「別に、不二が思っているような感情で見ていたワケじゃなくて…」

「…僕が思っているような感情って?」

「…手塚が、好き、とか」

「手塚が好きなの?」

「ち、違う、手塚はただ、憧れてただけで…」






そう彼は憧れの存在であって

それでもその思いも封印した

不二と向き合いたくて





結局手塚への気持ちは好きではなく

ただ憧れだったんだって

不二と付き合うようになってから思って

それなのに




「手塚への気持ちを誤魔化して、僕と付き合ったの?」




そう言って不二は…微笑んだ

その笑顔に

私はとっさに何も言えなかった




「…さっき手塚と話してるときに告白でもされた?」

「え?」

「話した後から雰囲気おかしかったもんね、今も。」

「違う、ねぇ不二、」

「…それが本当なら手塚もよくやるよね、僕と付き合ってること知ってて。」

「周助!」





彼は、そこまで言い切って背を向けた

いつにない饒舌な不二の言葉に

何て言って振り向かせたらいいか分からない





「ちょ、待ってよ!そんな勝手な、」

「何が?」





不二は目線だけこちらに向けて答える

その目は完全に笑ってなくて

笑顔なんてとっくに消えてて




悲しませてしまった

ダメだ

ちゃんと、誤解をとかなきゃ





「誤魔化してなんか、ないよ。」

「…」

「私はちゃんと周助が好きだから、だから付き合った。」

「…信じろって?」





詰まった、言い返せなかった

だって

さっきの手塚の言葉に動揺してる事は事実で




本当に手塚への気持ちは憧れ?

整理できてた?

本当は、ごまかしてた、だけ?






「…言い返せないってことは図星だったみたいだね。」

「…っ、ちが、」

「さっき手塚となんて話してたの?」

「…一年のときから憧れてたって…」

「そしたら、手塚は?」

「…お、俺もだって。私のこと…」

「…じゃお互い諦める必要なんてなかったんだね。」





周助の言葉がのしかかってきて、顔が上げれない

今顔を上げたら間違いなく、泣いてしまう

泣きたいのは私の方じゃないはずなのに




。」





呼ばれても、顔は上げられない

何もいえないし、何を言われるかも分からないし

…違う「別れよう」の言葉が浮かんできている

それが怖くて反応できない





、顔上げて。」

「…。」





無言で首を振る

声を出したらきっと震える

泣きたいのは僕だよ、そう言われる気がして





「何が嫌なの?いいから、話せないよ…」

「…っごめん、…でも…」





声が震える

生暖かいものが頬を一筋伝った

”別れる”のは





手塚はあくまで憧れだよ

その手塚も私に憧れていたなんてありえないって

それに驚いていただけで、思ったのに



でも不二の言うことがあまりにリアルで





「周助怖いよ…」

「…、」





いつもそんな風に責めないのに

いつもからかうように微笑んでいるのに

私はあなたが好き、それは本当なハズなのに






「怖い。」






私はそれだけ言って教室を飛び出した

どうしてかは分からない

ただ頭の中が本当にぐちゃぐちゃで









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