まる瞬間1









「手塚!」

…何だ?」

「次の体育1組と合同でドッヂだって、体育委員に伝えといてくれる?」

「あぁ分かった。…お前体育委員だったか?」

「不本意でねー」





宜しく。と私はヒラヒラと手を振った

一組の体育委員を探すのが面倒で

ちょうど良く手塚を発見して頼んでしまった











。」

「!不二。」

「また苗字で呼ぶ。」

「…学校ではいいでしょ。(女の子の目怖いし)」

「僕は平気だけど?」





そういってまた笑みを深くする

端正な顔にその笑みはよく似合う

そんな彼が私の恋人なのだけれど





彼とは二年で同じクラスだった時からの仲で

席が近くてなったのがキッカケで

気づいいたらよく一緒にいて





でもキチンとき合いを始めたのはつい三ヶ月ほど前から

…その原因は自分にあるのだけれど

その理由はまだ彼も知らない






「…手塚と話してたみたいだけど、どうかした?」

「え、ああ、次体育合同だから一組と二組。ちょっと伝言をね。」

「そう。次…、がんばってね体育委員さん。」

「…それはめんどくさがりやの私に対する嫌味だなあ。」






軽口をたたいて

そのまま着替えるために不二と別れた














〜」

「なにー?」

「ドッヂ1組対2組だって。男女別。」

「はーい…」





同じく体育委員であり仲の良い友達と一緒に

気持ち肌寒い中グラウンドをとぼとぼあるいた

どうせなら体育館でやればいいのに…





先生が来て、準備体操をしゲームが始まる

とっとと当たって外野でちゃお

そう思い、私はワザと前のほうによった



どうやらそれがいけなかったらしい





「…大丈夫?」

「哀れみはいらない…」

「だってかわいそすぎる。」

「ひど…。」

「ごめんごめん。」





ってことで見事に右手中指を突き指してみました

…まぁ戦線離脱はできたからいっか





コートから少しはなれ、ゲームの様子を見る

ふと、私は男子たちがゲームをしているほうへ目線を送った

そして視界に入れた一人、さっき伝言を託した相手






「…手塚。」






…不二と付き合うのが遅かった理由はなんのことはない

私が別に気になる人がいたからだ

それが彼





一年のころからずっと憧れていた

あくまで憧れ、だったから遠くで眺めているだけ

話したこともなかった





そんな手塚と話せたのは不二のおかげだった

同じテニス部である不二の

結構あっけなかった、普通に会話していた

もちろんずっと憧れていました、なんて言ってないが





「手塚…」





もう一度その名前を呟く

軽く胸が締めつけられる気がした

不二と付き合おうと決めたとき

キチンと整理をつけたはずなのに





不二は手塚とは全然違った

彼はいつも笑顔で、一緒にいて落ち着く

反面、何を考えているか分からないと思うときもあるが





でも不二はあっさり私に告白してきた

そのときの表情はいつものように笑顔だったけれど

目が見たことないくらい真剣で





?」

「…へ?」





自分の世界にトリップしていたら突然話しかけられた

友達かと思ったらそこにいたのは手塚だった

慌てて平常心を取り戻す





「突き指したそうだな、大丈夫か?」

「え、あ、うん!全然オッケイ。」

「日本語がおかしい。」

「厳しい…」





男子チームは一回戦が終わって休憩中らしい

女子はまだ逃げ回っている子がいるようでまだやっている






「お前そんなに運動神経悪かったか?」

「ふんだ。」

「…子供だな。」

「うるさいなー…ちょっとしたミスだよ。」

は変わってるな。」

「何突然…ほめてる?バカにしてる?」





不二に告白されて私は一度断った

私の心を占めていたのはまだ手塚だったから

けれど





不二と話せば話すほど

手塚と話せば話すほど

私の中から手塚への以前のような強い憧れは消えて

逆に不二への思いが強くなっていった





だから、手塚への思いただ憧れで

きっと好きという感情を抱いてるのは不二の方なんだって

そう思ったら一気に不二に惹かれていった気がする





そして私は不二の告白を受けた

…そして手塚とは普通にお友達になっていた

今みたいに軽口言えるぐらいの仲に





「…手塚、なんか不思議だね。」

「何がだ?」

「こうして今、こんな風に手塚と話すの。」

「…そうだな。」

「うん。…今だから言えるけど…」

「なんだ?」

「私ねーずっと手塚のこと憧れてたんだよ。」





そばでこんな風に話せる事が

今更ながらやっぱり嬉しくて

つい私はそんな告白してしまった





「…そうか。」

「そうかって…それだけ?もっと喜べよー」

「ああ。」

「んな、無表情で、ああって…もっとこう喜びを」

「俺もだ。」

「…へ?」



「ずっとお前が気になっていた、一年の頃から。」





向こうのコートから、誰かが手塚を呼んでいる

でもそんな声もすべて遠くて

私は呆然とその場に立ち尽くしていた


いつもなら気づくだろう視線にも気づかずに











、お疲れ様。」

「…不二。お疲れ様、って部活は?」

「行くよ。ただ、その前に用事があって。」





体育終了後からずっと頭が回ってなかった

ずっと手塚の言葉が脳内をぐるぐるしてる

そのまま放課後を迎えていた





「用事って?」

「…、体育の最中、ずっと何見てたの?」

「え…?」





ぎょっとした、そのまま言葉が出なかった

いつのまにか教室には私と不二だけが残されていて

不二の声だけがそこに響いていた






「なにって…なんで、」

「その時間自習でね。だからずっと見てた、後でからかってやらおうと思って。」

「…」

「そしたらずっと男子のほう見てたね?って男好きだった?」

「なっ失礼…そんなんじゃな、」



「じゃあ誰見てたの?」






ああ怒ってる

彼はいつも笑顔の裏で怒る

冗談で終わらしてくれればいいのに




きっと誰を見ててかは気づいてる

でも理由はきっと知らない、まだ

…知ったら、もっと怒るのだろうか?





「別に…誰かってわけ、じゃ、」




やっぱり素直に言えなくて

さっきの動揺がまだ消えてないから

ああ言い訳したってごまかせる筈ないのに





「嘘はいいから。怒るよ、。」





もう怒ってる

笑顔が消えてしまった

少し、怖い





「…見てない、誰も見てない。」





今はもう聞かないで、少し待って

ただでさえ混乱してるから

ね、普段はもっと心広いでしょう

少しぐらいちょっと誰かを見てたくらい、許して





「…答えるまで何度でも聞くから。」

「部活遅れる…手塚に、部長に走らされるよ。」

「走れば良いでしょ。」

「…でも、」

「だからいいって。」

「…駄目だよ。」

「じゃぁ話してくれればいい。」

「手塚怒るよ。」

「どうでもいいよ。僕も怒ってるてるし。」

「でも、」

「そんなに気になるの?…その後手塚と話してたもんね?」






やっぱり、気づいてる

ああ心臓が痛い

何て言ったらいいか分からない





「…」

「…手塚を見てたの?」

「それは、」





有無を言わさないその声と視線

あぁもうダメだ

そう思って私は白状した






「手塚を…見てた。ずっと…前から。」










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