「治らねぇな。」

「え?」

「…手。」

「あー私の握力にビックリだね。」

「アホ。」




あれから、部室で手をカッターで切ってから

その傷が思いの他深かったらしく

跡部は律儀に私を毎日送ってくれていた

その他、お世話少々




「…痛むか?」

「うーん、ご飯食べる時とかご飯食べる時とか…」

「お前はそれしかないのか。」

「でも跡部が大抵手伝ってくれるから平気。」

「…そうかよ。」




今両手には何もない

跡部がきっちりと私の鞄を持ってくれてるから

物凄く珍しい光景だと

普段ほとんど何も考えていない私でも分かる




「…跡部は怪我人には優しいんだね。」

「…余計なお世話だ。」

「あ、…た、大変…」

「あ?」

「おなかすいた…」




冷ややかな視線を送られた

が小さくため息を吐いて

コンビニへ入ってくれた




「何食うんだ?」

「…まさか本当に入ってくれるとは思わなくて、考えてなかった。」

「…お前。」

「チュッパチャップスでお願いします。」




跡部の青筋を見てあわてて頼む

短気だなぁと思いつつも

跡部は奢ってくれた




ガザガザと紙を向いて

無造作に飴玉を渡してくる

満足気に私はそれを受け取る




「跡部って、優しいねぇ。」

「怒らせてぇのか?」

「今度は素直に褒めたのに…」

「黙って食ってろ、落としてもしらねぇからな。」

「りょうふぁい。」

「…。」




ぷらぷらと

部活後の薄闇の中を

一定の距離を持って歩く




なんだか物足りなくて

私はどうでもいい今日の出来事をしゃべりだした

飴玉をくわえたまま




「ふぁばんもろうふぁ?」

「は?」

「ふぁふぁん。」

「鞄?」

「ぷは。うん、カバンもてるよ。手ぇあいた。くわえてるから。」

「…転んだ時手ぇつけねぇだろ。」

「いやいや子供じゃあるまいし!」

「そうだな、子供以下だ。」

「…。」




不服に思いながらも

飴を口の中で転がしながら

何かいいことはないかと考える




「あ。」

「…今度はなんだ。少しは黙って」

「手ぇ繋ごう!」

「…――――は?」

「それなら物足りなくないし、転ばない!」

「お前、それ俺が巻き込まれ…」




最後まで跡部のセリフをまたずに

あいた左手で

跡部の右手を取った




「よし。」

「…何がよし、だ。アホ。」
















それでも跡部は手を離さなかったので

うん

満足



手をつないで君と