私は貴方の事を全然知らない
だってしょうがないじゃないですか
貴方はお喋りが得意じゃないから
「会長。」
「なんだ?」
「三年生の分のアンケート用紙です。答え別に別けておきました。」
「すまない、助かる。」
終了
ほら
もう終わってしまった
副会長なんてポジション
とってもラッキーな筈なのに
放課後の生徒会室二人っきりなんて
とってもラッキーなシチュエーションな筈なのに
これじゃあ
…いつからだろう、こんな風に思うようになったのは
きっと、いや、当然だけど彼を好きになってからだ
「手塚君。」
「…なんだ?」
「今日は部活、行かないんだね。」
「副部長に断ってある。」
「忙しいね。」
「仕事だからな。」
「えらいね。」
「当然のことだ。」
ある意味淀みないスムーズな会話だよ
色気のカケラもないけど
本当に真面目だまぁ…そこが魅力なんですが
「部長さん。」
「なんだ?」
「休みの日って何してるの。」
「部活だ。」
「…登山もキャンプも釣りも出来ないね。」
「…そうだな。仕方ない。」
「えらいね。」
「テニスも好きな事の一つだ、気にならない。」
いいなぁテニス、アンタ愛されてる
…あ、今ちょっと自分で自分が可哀想になった
…テニスを妬んでどうするよ自分
アンケート用紙をパラパラとめくり
残った分もまとめていく
あー今月の学校新聞どうしたっけ
「あーそうだ…」
「なんだ?」
「…なんだっけ…ゴメン、ど忘れした。」
「そうか。」
すみません
ネタがなかっただけです
貴方への聞きたいことはあらかたもう聞いてます
それでも
それでも
…全く貴方のことを知った気になれないんです
貴方のことが好きです
好きだけど
どんなに頑張っても手が届く気がしません
表向きの、差し障りのないことばかり聞いて
本当の貴方のことは
何も分かっていないという事なんでしょうか
こんなに、近くにいるのに
「。」
「え?」
「…お前は、どうして俺の呼び方がころころ変わるんだ?」
「…え、えっと…そうだっけ?」
「ああ。」
質問された
10回に1回の割合でしか質問されないのに
うわ、え、ちょっと、そんな見ないで頂けますか
「…えっと、なんか、どの呼び方もしっくりこなくて?」
「しっくり、こない?」
「…部長は…私部員じゃないし、手塚君…はなんか慣れなれしいような。」
「…」
「あぁそう思うと、会長が一番しっくりくるかな…私副会長だし。」
「…そうか。」
あ、なんか、いつもより会話っぽかった
何が聞きたいのか分からないけど
まさか彼が本当に呼ばれ方を気にしてるとも思わないし
…知りたい
知りたいのは私の方
もっと色々貴方の事が知りたい
キンーコンーカン…
チャイムの音が虚しく響いた
そろそろお開きだ
「。」
「ん、なに?」
「…お前は俺の事をよく聞くな。」
「え…あーまーうん、…っとそれは――」
「でも、俺が何考えてるとか、そいうことは、お前は聞かない。」
「え?」
「それでも多分、お前が一番俺をよく知ってる。」
「…。」
「趣味とか、好み以外にも。…本当に、多分だが。」
えっとどういう意味でしょう?彼は何を言ってる?
確かに、私は聞かない、貴方の気持ち、とかは
だってあまり、そこまで突っ込むのは怖い気がして
「…手塚でいい。」
「え、え?」
「呼び方。」
「…は、はい。」
「今日はここまでにしよう。」
「…うん。」
やっぱり私は彼の事を知らない
彼の、気持ちも、考えてることも
分からない、読めない
「。」
「はい。」
「聞いてもいいか、俺も。」
「…え?…ど、どうぞ。」
「お前は俺をどう思っている?」
…しばらく、私が固まったのは言うまでもない
本当に、私は貴方の事を知らなすぎたのかもしれない
それは不器用な告白