彼女はテニス部のマネージャーだった

3年生で、不二先輩と菊丸先輩と同じクラス

綺麗で、可愛くて、優しくて、仕事が出来て

皆からの信頼を受けていた





皆から一歩離れる自分に

一番に話かけて来たのが彼女だった

楽し気に微笑みながら

普通に話しかけてきた





始めはぎこちなく話していたけれど

気さくに話しかけてくる彼女に、だんだん慣れていった

いい先輩、マネージャーとして信頼している




マネージャーに、彼女に抱いている気持ちは

本当に、それだけだった

あまりにも、遠いと思っていたから












、仕事終わったら一緒に帰らない?」

「周助。」

「あズルイ不二。抜け駆け!俺も一緒に帰る!」

「あはは、ごめんね。今日はちょっと残ってきたいから。」

「仕事?」

「うん。」

「そっか…頑張るね。でもほどほどにね?」

「次は一緒に帰ろうね〜」

「はいはーい。お疲れ様。」





よく、一緒に帰ろうと二人は誘ってくれる

二人以外にも、遅く帰るのを心配してかよく声はかけられる

でも、最近は断っている





残りたい理由があるから









「いっぬいー。」

「やぁ、。」

「今日も一緒に残り練習?」

「あぁ。」





ゴトリとドリンクの入ったボトルを置く

仕事は、もう終わっていた

でもまだ着替もせずに、フェンス前に立つ乾の隣に立つ





「渡してきたら?ドリンク。」

「マネージャーだしね。」

「…こだわるね。」

「事実でしょ。」





乾は苦笑する

彼、が居残りをするようになってから

気づいたら何度もこうして残るようになっていた






「…いつまで、見てるだけ?」

「…いつまで?ずっとだよ。」

「このまま?」

「頑張ってほしいから。」

「頑張ってるよ、海堂は。」

「…もっと、ずっと。」





いつからだろう

彼を目で追うようになったのは

気づいたら、気づいたら





「…海堂!ちょっと休憩しよう!」

「え。」

「ん?どうかした?」

「いや、別に…」

「せっかくドリンク持ってきてもらったしね。暑いし、水分補給は大事だ。」

「…そっすか。」













「…スンマセン。」

「いえいえ、暇人ですから。」

「別に…わざわざいいッスよ。好きでやってるだけッスから。」

「んーもう帰るよ。コレだけね。」





気を使う彼に、微笑む

あぁ本当に顔に似合わず

目上にはしっかりしてるんだから

どこか寂しく、どこか嬉しい





「毎日、頑張るね。」

「…ッス。」

「頑張れ。」

「…ありがとうございます。」







ぽんとボトルを受け取る

彼はまたコートに戻っていく

乾がまた、苦笑していた





「皆はビックリだよ。」

「えー?」

「憧れのマネージャーに好きな人がって。しかも、」

「それが年下って?」

「いや、一番恋愛に興味なさそうな人にって。」





笑った

笑ったけど

少しだけ、胸が痛かった





気持ちに気づいた時

自分で自分に驚いた

同時に悲しくなった





彼は私を見たことはない

あるとすれば、入部した始めの頃だけだろうか

あっという間に私は立派な“マネージャー”になった





一生懸命な人だった

人一倍自分に厳しくて

真っ直ぐだった





頼りになるよ、とか憧れとか言われるけど

本当は臆病で

自分なんかってすっごいネガティブな人間で

でも彼が、必死になることを教えてくれた





真っ直ぐで、眩しかった

応援したい、頑張って欲しいと強く思うようになった

そんな彼が

好きだった








その想いが届くことは

永遠に、ないけれど




中ばかり見てる