あぁそう私はおかしいかもしれない
でもおかしくない
おかしくないって私は思っている
だって、好きだから
ただ好きなだけだから
好きで好きで、仕方ないだけだから
「干からびちゃうよ。」
「…干からびねぇよ。」
「頑張りすぎだよ。」
「足りねぇよ。」
彼はそっけなく言って
受け取ったドリンクに少しだけ口をつけて
直ぐに返してきた
私は一個先輩だから
いつも彼は私に敬語で話すけど
二人っきりになると、タメ語で話す
私が強制したのだけれど
それが物凄く
好き
「薫ちゃん。」
「その呼び方やめろつったろ。」
「そろそろ帰ろうよ。」
「先帰れ。」
「分かった。」
「…。」
すごく、困ったような顔で見られた
自分で言ったんじゃん
不器用な子だなぁ
「手、つないでもいい?」
「…」
「ありがとう。」
帰り道だった
照れる、困った、恥ずかしい、そんな色を顔に浮かべて
彼はポケットに入れていた手を、無言でだしてくれる
ちょっとこっちに向けていた視線は
もう前に向いている
手が、少し震える
「私まで、照れるなぁ」
「…知らねぇ。」
「ふふ。」
知らねぇ、そう言った声はとても小さかった
柔らかくて、弱々しかった
優しかった
「薫ちゃん。」
「…」
「だってこの呼び方好きなんだもん。」
「…」
好きだって、私がそう呼ぶの好きだって
言い訳するまでもなく彼は知ってるから
呆れつつ、「やめろ」って何度も言うことはなしない
彼は怖いってみんな言う
でも怖くなんかない
ちょっと、踏み込んで突っついてやると
それこそ、怖いくらいに真っ直ぐで
真っ直ぐで、純粋だった
純粋って言いすぎかもしれないけど
彼が喧嘩っ早く思われるのは
純粋で単純だから
相手の意思にも、自分の意思にも
まっさらで、そのまんまで
止めるものなんかない
だから
「薫ちゃん、好きよ。」
「っ」
「あはは、なれないねぇ。」
「…っ」
ほら、全部顔に出てる
何か言おうと、彼の口が小さく開いて
遠慮がちに、視線を送られる
ほら、足が止まった
一生懸命応えなくちゃと思ってる彼
つながれた手に力がこもってくる
「…あ、そうだ。はい、これ。」
「…」
あえて遮って
渡そうと思っていたそれを鞄から取り出した
実はバレンタインだった今日
「チョコレート。」
「…あ…さんきゅ。」
「甘さ控えめ。食べてくれる?」
「食う。」
つないだ手に、更に力が込められる
痛くはない
暖かい、言葉足らずな彼の気持ちだから
それは本当にそう思うから、素直にそう言うから
自意識過剰とか、妄想だとか
私が本当は、勝手に、彼の気持ちを想像して
決めているだけじゃないかとか
周りからはそう思われるかもしれない
でも、それでもいい
それがおかしいというのなら
おかしくていい
だって私が、彼が好きで
好きで、好きで好きで
だから、その気持ちを
それを否定するくらいなら、おかしい方がいい
ぐい
「わ」
「…」
手を引かれて
彼との距離が、ゼロになった
すごい、鼓動が早い
ほら
おかしくてもいいじゃないか
私は、こんなに幸せ
セカイでいちばんキミが好き