「光!」
「…何やうっさいな…」
「昨日、また約束破ったでしょ。」
「…せやった?」
「…ふざけないで。」
「部活で疲れててん。悪かったって。」
「ちょ、どこいくの!」
「部活に決まってるやろ。」
HR後の教室
一応恋人、である彼の教室まできていた
昨日の事で
昨日、部活後一緒に帰る約束をしてた
けど、コイツは来なかった
こうやって約束を破るのは、何度目だろうか
話の途中でも
コイツは全く悪びれた様子なく
鞄を手に教室を出てこうとする
「待ってって!」
「あーなん、今日はちゃんと守るから。」
「…今日は私帰らなきゃいけない。」
「あ、そうなん。」
「だから昨日はって、」
「せやからゴメンて、ほなもう行かな怒られるから。」
「光…っ」
そう言って彼はさっさと歩いていってしまった
本当に腹立つ
何度言ってもいつもこう
でも好きだからいつも我慢してきた
部活で忙しいのも分かってるつもり
でも
**
「…?」
「…」
「おーい、ー?」
「っえ、あ、白石先輩…」
「どないしたん?ぼーとして。」
翌日、保健当番だった為
休み時間に保健室に来ていた
同じ保健委員である白石先輩に声をかけられる
「先輩も今日当番でしたっけ…」
「せやでー水質検査終わった?」
「あ、終わりました。」
「…で、どないしたん?」
じっといつもの人よさそうな笑顔を向けてくる
白石先輩は私達が付き合った時の事も知ってる
ちょいちょい、話を聞いてもらってもいる
「光と喧嘩?」
「喧嘩というか…私が一方的にです。」
「あー…また光約束破ったん?」
「…はい。」
あいつにとって私の優先順位はずっとずっと下
小さな事から約束破ったのは数え切れない
付き合う前はそんなことなかったと思うんだけど…
「甘えとるんやねぇに。」
「甘える…?」
「結局はいつも許したるやろ?」
「…まぁ」
「が優しいから、調子のっとるんやって。」
「…」
だっていつも分かったって
ごめんって言うから
信じようと思って
惚れたもん負けだろうか
好きになったのは私から
白石先輩に助けてもらって今に至るわけで
「は悪くないで。」
「…」
「あんな、、ちょっとおいで。」
「…なんですか?」
「ええこと教えてあげる。」
にっこりと、その整った顔で
白石先輩が笑った
ちょっと、怖い気がするのは気のせいか
**
「…お昼、買ったの?」
「…あれ、今日作ってきてくれる約束やった?」
「うん。」
「悪ぃ。もー買うてきた。」
お昼、今日はお弁当を作ってきた
そういう約束だったから
まぁ案の定忘れられてましたけどね
いつもならここで絶対怒ってる
いや怒ってる
だけど
「友達にあげるからいいよ。」
「ん?」
「だから教室戻るね。そっちも友達いるみたいだし。」
「別に一緒に食べてったらええやん。」
「いやだからお弁当友達にあげるから。」
「あ、そ。」
「じゃあね。」
ばんと屋上のドアをしめる
はーと息を吐く
私、普通だったよね
**
『…もしもし?』
「…今どこ?」
『ん?帰り道やけど、あ。』
「…あーいいよ、どうせ私もう少しやる事あるから。」
土曜日、光は部活が午前中だけ
私は委員会の用事で午前中だけ学校にきていた
だから午後は一緒に遊ぶ約束をしていた
お約束
綺麗に忘れてまた先輩らと帰ってるみたいですけど
携帯に電話してみればその通りで
『あー…お昼先輩らと食ったら戻るわ。』
「いや戻らなくていいよ本当。」
『何で、』
「悪いじゃん。またあさって学校でね。」
何か言おうとしてたようだが
聞かずに切った
丁度その瞬間に声をかけられる
「お疲れさん。」
「…白石先輩。お疲れ様です。」
「休日登校ご苦労さん。」
「先輩も。」
「…光、ど?」
ぼす、と鞄と一緒にベッドに座る白石先輩
私が今日委員会の仕事で来てるのは知っていたから
それで来たんだろう
ついでに
例の事も聞きに
例の事とは、この前先輩がくれたアドバイスの事
「…怒ってませんよ、」
「えらいえらい。」
「でもそろそろ殴りたいです。」
「あはは、あかんあかん我慢しい。」
「ふー…本当に効果あるんですか?こんなの…」
先輩が言ったアドバイスとは
”絶対怒るな”というもの
それだけ
光が何度約束を破っても
怒らず
なんでもないような態度をとれと
そうすれば
自ずと向こうから気にするようになると
…余計調子にのってるような気もするけど
「あるでぇ効果。きっとな。」
「きっとですか。」
「ん。」
「…まぁいいですけどね。」
半分もう諦めてるんだ
自分が本当に嫌になるまで付き合うつもり
あいつがどんなんだって結局私は
「…何しとん、」
掲示板に貼るポスターを塗ってたペンを片付けようとした時
またドアから声がした
なんでここに?
「え、光?」
「…」
「何って…光こそ、帰ったんじゃなかったの?」
「戻る言うたやろ。」
「先輩とご飯は?」
「…切り上げた。」
「どうして、」
本当に驚いてる
普段は約束破って
フォローするようなことなんてしなかった
てか何でいらついてるの
そのくらいなら顔見れば分かる
でも何で私が睨まれなきゃいけないの
「…何してんスか先輩は。」
「えー?後輩の様子見に来ただけやで?」
「…わざわざ?」
「どっかの誰かさんは置いて帰ってしまったみたいやからなー」
「…」
睨んでた目を私から白石先輩に変える
あからさまに刺がある態度に
見ていて少しハラハラする
「あーあの、先輩、もう切り上げるんで。」
「ん?そ。ほな俺も帰ろ。」
「わざわざ来てもらってすいません。」
「ええでー可愛い後輩の為やし。」
どうもと笑って返す
ペンをしまい
書き途中のポスターを共用机にしまう
「最近、」
「え?」
カバンに筆箱をしまったとこで
ぽつと光がつぶやいた
聞こえなくて、聞き返す
「静かやと思ったら浮気なん?」
「…………はぁ?」
何を言うかと思ったら
浮気?
誰が?誰と?
「…何言ってんの?」
「そのまんまやけど。」
「ぶっ…」
「何がおかしいんスか部長…」
「あースマンスマン、俺は先に帰るから。」
あとはお二人でーと
仮にも浮気相手と称された当人は
笑顔で手を振ってさっさと保健室を出ていった
「…」
「…」
怖い顔でそっぽをむいたままの光に
とりあえず言われたことと
状況を整理してみた
今まで約束を破られて時はずっと怒鳴ってきた
白石先輩のアドバイスで最近は何も言わないようにしていた
したら浮気だと言われた
…へぇ
気にしたってことか
なんだ効いてるじゃん
「浮気とか、してないよ。」
「じゃあ何で最近…」
「約束破りまくってること、自覚した?」
「…」
「怒鳴るのやめてみたらって白石先輩にアドバイスされたの。」
「…」
「そうした方が、光が気づくって。」
本当だったみたいだね
と笑顔で言う
バツが悪そうな顔をする彼
「…お前、優しいから」
「好きだからね、光の事。」
「…俺も好きやし。」
「じゃあもう少し頑張れるよね?」
子供扱いすなやと
また睨まれる
それは照れ隠しでしょ
ああ一歩ひくとこんなに見えてくるんだね
好きだなんて言われたの
告白した時以来だよ
「…さっさと帰んで。」
「うん。」
ああ本当に珍しい
そっぽは向かれてるが
つながれた手はあったかい
「…、」
「ん?」
「あんまあの人と二人っきりになるなや…」
「あの人?」
「白石。」
先輩、部長を呼び捨てかい
突っこもうとしたけどやめた
それより
「それは、約束したほうがいい?」
「…せや。」
「分かった約束する。」
「…ん。」
だから、絶対にあなたも約束守ってね
言わなくても分かってくれてるよね
今度は
叫んでも叫び足りないから、黙ることにした