「…お前、犬以下だな。」



ため息を吐きとともに

私は彼に

そう呟かれた

ひどい男だ













「やー自由時間はいいねぇがっ君!」

「でもお前泳げねぇじゃん。」

「…。」




どん

どぱーん




「ぶはっ何すんだっ!」

「いやっいい天気!こんがり素敵に焼けそう!」




合同体育の選択授業にて、ただいま自由時間中

テニス、バスケ、水泳の中であえて水泳を選び

今プールサイドに座っている




「あれ、泳がれへんの?」

「あれ忍足さん。あなたもテニス部のクセにテニス選ばなかったのね。」

「中途半端にやりたないもん。」

「ごもっとも。」

「お前だって泳げねぇのに水泳選んでるんじゃねーか。」




どん

どぱーん




「ぷはっ!こら!何で俺が落とされアカンねん!言ったん岳人やろ!」

「あははは油断してやんのゆーし!」

「ヤダっ!忍足さんには花柄のウキワが似合いそうね!」




ハタから見れば楽しそうな三人を

水泳を選んだ他の生徒達がチラチラと見る

そこへ一番、そんなお嬢様方の目線を引く奴がやってくる




「…何やってんだ、お前ら。」

「おぃッス跡部隊長!宍戸達はいないの?」

「あいつはテニス馬鹿。ジローは日向で寝てる。」

「水泳選んだ意味ないなぁジローちゃん…」

「で、お前泳がねぇの?」






…ぎりぎりぎり




「…何しようとした、今…」 ギリギリ

「か、か弱い乙女の両腕を…押さえるったぁ、どういうことかな…」 ギリギリ

「ふざけろ…お前、今突き落とそうとしただろうが…」 ギリギリ

「あほ!」

「てめぇがな!」




とまぁ見ての通り、いや、ちょっとばかり私は

泳げなかったりする

八つ当たりの被害者が岳人と忍足さん




「水は敵だよ!だから倒さなくても生きていけるんだって!」

「敵は倒すんもんだろうが。ほら、泳いでみろ。」





どん

どぱーん













「わーー!沈んでる!沈んでるって跡部!」





*しばらくおまちください*




「げほげほげほ!」

「…、お前人間って浮くもんだぞ普通。」

「うるさい人殺し!お前らなんか女子の目の保養になってしまえ!」

「いや、意味わからんしな。…まぁほら、せっかくの機会やから、跡部に教えてもらったらどや。」

「跡部先生ご指導お願いしまーす!!報酬は弾むよ!」

「切り替え早ッ…」




ってことで

周りの羨ましげな疎ましげな恨めしげな視線を受けながら

跡部先生の指導を受けることになった





「…とりあえず、お前、浮け。」

「どうやって?」

「…仰向けになって力抜けば浮く。」

「へえ。」





くる

ばしゃ

…ぶくぶくぶく




「あー…なんだ、お前、バタ足はできるか?」

「任せといて。」




きゅ

ばしゃ

どたんばたんどたん





「…お前、犬以下だな…」

「…。」





ってことで




「おー進む進むー」

それ恥ずかしいって思うとこだぜ。今時中学生でビート板って。」

「そう?跡部が引いてくれるから超ラクだよこれ。」

「可愛いなぁ。親子みたいや。跡部先生手ぇ離したらアカンよー」

「煩ぇ…。こんな生徒いるか。」

「せやな、好きな子やもんな。」

「――ッな、何言ってやが」

「うわっ」

「あ」




ぶくぶくぶく…




ってな感じで、四人でどたんばたんやってたら

あっという間に体育の授業は終わった

ちなみに私は泳げないままであるが





「泳げなかったけど面白かった!」

「それは良かったな…」

「おうよ。…そういえばさっき忍足さんなんて言ったの?」

「…さぁなんやったかなぁ。」

「えぇ私そのせいで手離されて三途の川だったのに。」

「お前がヘタだっつってたんだよ。」

「酷ッ…まぁいいや。ありがとね跡部。また宜しく!」






言って

にっこり笑って手を差し出した





「…少しはうまくなれ、バカ。」












跡部はぎこちない手つきで

そう言って握り返してくれた

うん、満足



手をどうぞ