『…なぁ、、昨日何しとったん?』
「…昨日?」
『ん。』
「えーっと友達と遊んでたよ?」
『…そか。』



お風呂にも入りベッドでごろごろしてたら
彼から電話がかかってきた
会話が途切れた時に、ふと切り出してきた



彼とは一応付き合っている
けれど
さっき返した言葉は、嘘



本当はクラスで誘われた男の子と遊んでいた
彼は部活だった筈だけど
誰かに見られたか



まあ別にいいんだけどね
だって彼は
何も言わないから




**




「今日の帰り?」
「良かったら一緒に帰らないかなって…」
「うーん…別にいいけど。」
「本当に!あ、駅前のカフェ寄らない?奢るよ!」



あ、それはラッキー
期間限定のケーキ
今日までだった



声をかけてきたのはこの前遊んだクラスメイト
相手は誰でもいいんだけど
笑顔で机に戻ったら、謙也に話しかけられた



「なぁ…誰なんアレ?」
「んー?なんか最近よく話しかけてくる人。」
「浮気やないやろなー…」
「えー」
「白石君泣かせたらアカンで?」



笑顔で返した
周りには隠してるけど、彼は付き合ってる事を知ってる
そして浮気なんて、するつもりはない



ただ
私はただ
彼に




**




。」
「…蔵ノ介。おはよう。」



半分閉じたままの目で
下駄箱でふらふらと上履きに着替えてたら
彼に声をかけられた



「…昨日、駅前で寄り道したん?」
「…いや、してないよ?」
「ほんまに?」
「うん。」



にこりと笑顔で返す
周りに人がいないことを確認して
軽く抱きついた



彼も返してくれる
そか、と小さく声が聞こえる
うんと返事を返す



「週末、親出かけるんだ。遊びにこない?」
「ええよ、部活終わったら寄るな。」



包帯のまかれた方の手で撫でられる
休みも部活か
真面目だね、本当



そしてやっぱり



「教室行く?」
「保健室寄ってかなかんから。」
「じゃあまたあとでね。」



ひらひらと手を振る
お互いいい笑顔で
ねぇやっぱり



それ以上何も言わないんだね
本当に信じてる?
また昨日も誰かに教えてもらったんでしょ?



私を信じてるから?
違う
そうじゃない



彼の姿が見えなくなるまで見送って
教室に戻ることにした
あいつを捕まえる為



「謙也!」
「うぉっびびったー何やねん。」
「ちょっと、屋上いこ。」
「は?今から?授業始まるやろ。」
「いいから。」



ごねる謙也を無視し
屋上に連れ出す
遠くでチャイムの音が聞こえた




**




「謙也、蔵ノ介に何か話した?」
「はぁ?なんも言うとらんよ?」
「…あそ。」
「喧嘩でもしたん?」
「まさか。怒るわけないじゃんアイツが。」



そう彼は怒らない
何をしたって怒らない
その浮気が本当だったって



浮気が確信だって気づいたら
彼もいよいよ怒ると思った
だから謙也が話したかと思ったのだけれど



「この前の男のことバレたら怒るやろ。」
「絶対怒らない。私が否定したらそれで終わり。」
「信用されとるんやなぁ」



違う
だから違う
それは信用じゃないの



「信用やなきゃなんやねん。」
「認めたくないだけ。」



そう認めたくない
彼は認めたくないだけ
自分の彼女が浮気してるだなんて



「アイツは完璧なの。」

「傷つけられたくないの、自分のプライドを。」

「だから何も言わない。」



認めない
見ない
なかったことにする



「…それは、考えすぎやろ…」
「私がここで謙也とキスしたって言っても認めないよアイツ」
「するか!」
「冗談だって。」
「…はぁ、聞いたらええやん白石に。」
「…」



腹割って話せって?
本当は浮気してましたって
私の事本当に好きなら怒ってって?



…でも
もしかしたら
素直に言ってしまったら



「お前、それで本当に嫌われんが怖いん?」
「…」
「…あっほやなぁ…」
「しょうがいないじゃん…」



だって好きなのは私だけ
告白したのも私
何かに誘うのもいつも私



自分で言うのもアレだが
見た目は悪く言われたことはない
成績もそこそこ運動もできる



だから、彼に認められただけ
”彼女”としていることを
それでも浮気ごっこをしたのはせめてもの反抗



「方法悪すぎやろ…」
「…分かってる。」
「とりあえず浮気ごっこはやめや。」




分かってる
それはもうやらない
…だからちゃんといい子にする



捨てられたくないから
好きだから
たとえ好きだって言葉がもらえなくても




形式の”彼女”でも
彼の傍に居られるならそれで
それくらい、馬鹿みたいに好きだから



**



「蔵ノ介。」
。」
「いまから部活?」
「せや。」
「今日、待っててもいい?」
「遅くなるけど、ええの?」
「うん。」



伝わる筈ないけど
お詫びのつもり
もう浮気ごっこはしない



でも彼にとっては普通に事だろうな
今まで付き合ってた子は
きっとこうして毎日待ってたんだろうな



元カノの話なんて聞いたことないけど
途中まで一緒に歩く
何気ない、会話



「蔵ノ介、」
「ん?」
「私、蔵ノ介の事好きだからね。」
「なん今更。しっとるよ。」



笑顔で、また頭を撫でてくれる
「好き」で返してくれたことは無い
それでもいい




「また、あとでね。」
「終わったらメールするな。」
「うん。部活頑張ってるね。」




今こうして彼を見送れるのは私だけ
今こうして彼を待ってられるのは私だけ
”彼女”でいられるのは私だけ



だからちゃんとイイ子で
私は彼の”彼女”になる










を縛る鎖なんて、本当は最初から無かったんだ