「食え。」
「ヤダ。」
「俺の言うこと聞けねぇのか。」
「うん。」
「泣かすぞ。」
「あははは。」
目の前の恋人の顔が歪む
歪んでもお綺麗なお顔ですこと
そしてやっぱり私は目の前の物を無視
「そらはホンマに野菜嫌いやなぁ。」
「なぜ雑草を食べなくては?」
「野菜は雑草じゃねぇだろー!」
「味は同じだよ。がっくん。」
「雑草食ったことあんのかてめぇは。」
「想像だよ跡部、想像。」
「素晴らしい無駄な想像力だな。」
お昼の学食での光景だった
同じテーブルに忍足さんと岳人君
で、目の前にご立腹な恋人
「ったく…成長しねぇぞ。毎回毎回。」
「してるよームクムクと。」
「…ってさー、なんでソレ食えて野菜嫌なの。」
「コレと野菜はちがーーーう!」
「納豆、好きやな。」
「イッソフラボーン。」
「…」
野菜食えと跡部が煩いので
変わりの食材として納豆を食べてる
これで文句ないだろうと私は納豆を練りまくる
「…お前、食堂でンなもん食うな。」
「え?なんで。その食堂で売ってたんだよ。」
「匂いが充満する。」
「…あ。なんや跡部納豆嫌いなん?」
「…べ、別に。」
おお?あの俺様何様跡部様が動揺してる!?
悪戯心と、好奇心がむくむくと湧き上がる
にや、と私は微笑んだ
「け い ご。」
「あ?」
「あーん。」
「…。」
虚を付かれたような、三人の表情
でも私の目には跡部しか映っていない
うむ、なかなか見れないイィ表情だ
「景吾さん?」
「…普段名前で呼ばねぇくせに…いい度胸してんな。」
「えぇーそうだったかなぁー」
「てめぇ…」
ぶりっこして
すっとぼける
こうゆう時に呼ぶから効力を発揮するのだ
あきれ顔の忍足と岳人
いや他の生徒達の視線もちらちら感じる気がする
それでも私は糸引く納豆を差し出す
「けっいごー。食べてくれないの?」
「…じゃあ、お前も食え、野菜。」
「え」
がたんと、跡部は席を立ち
空いていた私の左側の席に座った
(ちなみに右は岳人で、ななめ前が忍足)
そして椅子をひき
ぎりぎりまで近寄り
私と同じように野菜を目の前に差し出してきた
「…り、立派な野菜炒めだね。」
「食えねぇのか?」
「…えっと、景吾、納豆食べてくれないの?」
「お前が食ったら食う。」
どんな交換条件だ
野菜、食べたくない
…やられた、気分だ
誰か止めてくれないかな
何イチャついてんだお前ら!とか
…跡部にそんなこと言える人いないか
「あーごちそーさん。」
「俺もごちそうさま〜。」
「じゃあ後は二人で仲よう。」
「ちゃんと食えよー、野菜と納豆ー。」
「えっ?ちょっ、がっくん!おっしー!」
「よそ見すんじゃねぇよ。」
ヘルプミーと言いかけたところで
顎をガシと掴まれ、クイとそっちに向けられた
端正なお顔で微笑む恋人
怖いって
ごめんなさい
悪戯心なんてもう起こしませんから
「ホラ。」
「…。」
結局私が野菜を食べかどうか
跡部が納豆を口にしたかどうかは
そこにいた生徒達のみぞ知る
交換条件