海堂薫は一匹狼だった

アイツは私の一個下だった

私がマネージャー二年目の時、入部した




学校内でアイツを見かけたことがある

一緒にご飯食べようとうるさいエージから

逃げていた時だった




重箱みたいな弁当目の前に

律儀に手を合わせて

一人黙々とご飯を食べていた




「よぉ、海堂。」

「…。」




ざわつく教室、そりゃそうか、ここは二年の彼の教室

自分は三年生で半端に名の知れたテニス部のマネージャー

んで、こともあろうに海堂の目の前の席に陣取ったから





「なぁ、お前、いいトコの坊ちゃん?」

「…。」

「シカトかよ。まぁいいや。飯食お。」

「…。」




コンビニの袋からおにぎりとパックジュースを出しす

目の前から困惑した視線を強く感じるが

とりあえず無視した




「…先輩、一応聞きます。何でここで食べるんスか。」

「その全然私のこと敬ってねぇのに敬語なのが可愛くない。」

「…可愛くなくて結構です。」




ふうと海堂はため息を吐いた

あきらめたんだろう

普段からこんな感じだから




「エージがうっせーの。クラス違うのに毎回毎回飯食おうって。不二もついてくるし。」

「好かれてるからでしょう。エージ先輩にも不二先輩にも。」

「いいよ別に。不二怖えーし。」




もくもくもくとご飯を食べる

海堂はしゃべる時はわざわざ手を止めつつ、食べている

さっきの会話は、遠まわしにどっか行けって言われたんだろうか





「…お前、私のこと嫌い?」

「…いいえ。」

「間がある。ひでー。」

「…先輩。」

「ん?ひゃひ?」




カタンと海堂は箸を丁寧においた

本当、普段睨み効かせてスネイク打ってるような奴には見えない

そんな彼にパチと視線を合わされた

思わずパンを頬張っていた手が止まる




「前々から言おうと思ってました。」

「あ?――んぐ。…何を?」




「もう少し女らしくしたらどうですか。」




「…。」




教室が一瞬静まり返った

生徒達が聞き耳たてていたのがよく分かる

さしずめ「言っちゃったよ。」とか思ったんだろうな

失礼な奴らだ




「…どこらへん?」

「行儀が悪い。片足椅子に乗せないで下さい。ぽろぽろこぼし過ぎです。

 何より…その言葉遣いどうにかならないんッスか。」

「…ならねーよ。物心ついた時からこうだったかんな。」




男兄弟の仲で育った、親はあきらめている

他のテニス部員も最初は突っ込んでたが、今はあきらめてる

クラスメイトの女子からは逆に人気がある




でも海堂薫がそれに未だ不服だったことは知ってる

コイツに話かけるといつの眉根を寄せる

見たと違って、こいつの中身は真っ直ぐだから




「お前も口悪りーじゃねーか。」

「目上の人間と…認めた人間には気をつけてます。」

「お、んじゃ、私認められてるってことじゃね?」




お、口を噤んだ

いいとこついたのか

いい気分になって、私は調子にのって

やってみた





「でもさぁ…」

「…何スか。」




椅子に乗せていた片足を下ろした

パンを置き、手を太ももの下にいれ

じっと、覗き込むように、伺うように目線を送って




「女らしくしたら、かいどーくん、気持ち悪いって、思ったりしないかな?」

「げほっ」




こいつ…―――――むせやがった

文句言ってやろうと思ったら

…海堂の頬が気持ち赤いように見えた




「…あれ可愛かった?気に入った?」

「な、ば、ふざけっ…」

「…惚れた?」

「なっ」

「あはは冗談。」

「…」

「なぁどっちがいいんだよ、今みたいんな私とー普段の私と。」

「……」




それは意地悪な質問だったんだろうか

案の序、彼は紅潮する顔で黙りこくった

にやりと私は笑んだ




「私はテニスやってるこわーい海堂も、」

「…」

「弁当食ってる時みたいに丁寧なお前も、好きだけど?」

「…何、言ってるんスか。」

「事実。…さてと、んじゃ教室帰る。部活でなー。」














そそくさと私は立ち上がった

本当は、ここまで来るのにすっごい勇気が要った

顔が赤いのは、彼だけじゃないから

なんてやつに惚れてるんだ、私は





筋縄じゃいかない