Vampiяe 12 (last)
「んー…いい天気だねぇ…暑いけど。暑いな…」
「いいのか、悪いのかどっちだ…」
いつも通り、屋上
私は跡部と4限をサボリここに来ていた
壁に凭れて、隣同士で座る
―――あの後
ジローは跡部から血を吸い
すぐに私に送ってくれた
跡部の歯を立てた部分の傷は、塞がっていなかった
「跡部、首、まだ痛い?」
「…跡が少し残ってる程度だ。痛みはねぇよ。」
血を送られた私はすぐ目を覚まし
跡部の傷口に触れ、血を止めた
キズは順調に癒えていってくれたようだ
「…お前…本当にうまく吸ってたんだな。」
「やっぱ…痛かった?」
「…別に。」
「…ヤセ我慢。」
「あぁ!?」
少し申し訳なさそうな顔をしてから
伺うように私は笑った
跡部はチラリと視線を寄こしてからすぐ戻した
ジローは吸うことは出来たけど
やっぱ痛みを抑える事と、傷を治すことは出来なかった
…私がすぐ治したとはいえ、傷痕は残ってしまった
「痛かった、よね…ごめんね。」
ごめんなさい
今こうして元気でいるのも
笑っていられるのも
最初っから全部跡部のおかげで
膝に顔を埋める
体操座りのまま固まる
跡部の溜息が、聞こえた気がした
ばしっ
「…〜〜ったぁ!!」
「馬鹿が。」
「叩いて、その上貶すなんて酷い…」
思いっきり叩かれた頭を、両手で押さえて
涙目になりながら跡部を睨んだ
彼は笑っていた
ぎゅと心臓がつかまれる気がした
別の
涙が流れそうな気がした
「馬鹿。」
「…うん。」
「もう、何も隠すな。なんかあったら、言え。」
「うん。」
ありがとう
髪を撫でる手に
あの時は感じることができなかった温もりを、感じた
「!!」
「うっわビックリしたジロー…あ、もうお昼?」
「チャイム鳴ったよーお腹すいたー」
ジローはへたり込むように
前に腰を下ろした
すぐに別の二人の声がした
「なんや、俺ら邪魔やった?」
「忍足、おつかれー邪魔じゃないですー」
「、もー大丈夫なのか?」
「全快。ありがと、岳人。」
二人にも笑顔を向ける
本当、どうして私の周りはこう
良い人過ぎる
「しかし、吸血鬼ねぇ…」
「ん、なに跡部。今さら疑うの?」
「すんなり信じられるか。」
「いっぱい吸われてるのにね。」
「あ?」
ジローはパンを口に含みながら
さらりと割って入った
まぁ跡部のいうことは最もなのだけれど
「分かるか…てめぇみたいに吸われるならまだしも、」
「俺下手って言ったじゃん。」
「…」
「上手なのが分かったでしょー。吸う状況も完璧だしねー!」
「こら、ジロー。」
「ごめんなさーい。」
何が言いたいのか分かる跡部が青筋を立て
忍足が、血を吸うときの“条件”を思い出し
ニヤリと笑う
「あー…なるほどなあ、血ぃ吸う状況ね。駄目やん、跡部。」
「あぁ!?どういう意味だ…」
「やられとったんやなぁ跡部。いろんな意味で。」
「っ、てめぇ…」
「え、何?どーいう意味だよ。」
「…がっくんてば、純粋なの?お子ちゃまなの?」
「は!?ガキじゃねーし!意味わかんね!馬鹿!」
「…ガキだな」「ガキやな」
岳人が騒ぐ
ジローは楽しそうに笑っている
忍足も、跡部も
いつもと変わらない
「あ、いたいた、先輩!とその他先輩たち!」
「…その他はねぇんじゃねぇ?長太郎。」
「チョタに宍戸、おつかれ〜」
「お疲れ様です。お昼、ご一緒させてもらいますねー」
ざわめきが増す
いつも通り
何も変わらない
変わったのは
私と跡部の肩書き
愛人から恋人
「…物好き。」
「あ?」
私はポツリと呟いた
いつもだったら、もっと卑下の意味を持つ
そんな言葉も、今は心なし軽い
だって
普通じゃない私を
彼は当然のように受け入れてくれたから
「…そばにいさせてくれて、ありがとう。」
「…俺のそば以外、いるとこねぇだろ。」
ええ、そのとおりですよ
そう言ったら、跡部は少し驚いた顔をして
すぐいつものように不適に笑った
私は変わらない
吸血鬼血は、ただ息を潜めているだけで
流れていることには変わらない
けれど彼はその私ごと受け入れてくれる
だから、私は変わらなくていい
変わらずに、彼のそばにいる
end