廊下の曲がり角
廊下走っていたら誰かにぶつかって
その人と運命的な恋に落ちる
そんな夢物語
描いたことあるだろうか
これはある時
私がまだ青学へ入学したばかりの頃
私は先生に頼まれた書類片手に、走っていた
廊下を
だだだだだだだだ (足音)
どん (ぶつかった)
ごち (転んだ)
「…廊下を、走るな。」
「な、何で…」
「こうなるからだ。」
「ひ、膝、打ちました。」
「あぁ、転んだからな。」
「はい…」
ぐいっ (ひぱってもらった)
すた
ちなみに書類は死守した (だから膝打ったんだけど)
「保健室行くか?」
「え?あ、あの、」
「何だ?」
「ご、ごごめんなさい。」
「俺に謝るな。膝大丈夫か?」
「膝、大丈夫…です。あのすみません、大丈夫…」
「だから、俺は大丈夫だ。」
淡々と話す人
ぶつかった相手の人は、楽々と私を引き上げた
どういう力してんだ… (私そんな軽くない)
「あ、あの、先輩?」
「…一年生か?」
「うんっ…じゃなくて、はい。」
「何か急いでいたんじゃないのか?」
「あ、あの、ですね…」
雰囲気的に、間違いなく
先輩だと思って先輩と言ってみた
なんだろうこの人の雰囲気
この人は一体誰
「えっと、あの、この書類…」
「…誰かに渡しにいくのか?」
無表情の割りに
協力的
そして思った以上に、その口調は優しかった
「生徒会室へ…あの生徒会長さんに渡せって…」
「あぁ…行事のアンケートか。すまない。」
「え?」
「もらう。」
「え、でも生徒会長宛てだし…じ、自分で持ってきます。」
「俺だ。」
「は?」
…生徒会長が?
…私、生徒会長にぶつかりました?
…すみません、ごめんなさい、もう遅いですか
「…お、お、お願いします。」
「ああ」
「…。」
「…あの、あっと…せ、生徒会長。」
「…なんだ?」
「な、名前聞いていいですか?」
「手塚、国光。」
「手塚…先輩。」
…かっこいいかもしれない
いや、かっこいい
うん
どうしよう
廊下で恋に落ちるなんて
冗談だったのに
あぁでも
生徒会長だし
いゃでも
「あ!手塚部長!!」
「…桃城。どうした?」
「丁度良かったッス。これ俺らのクラスのアンケートッス。」
「あぁ、すまない。」
「いえ!じゃあ、また部活で!」
「ああ。」
たたっと、髪をツンツンにした人が爽やかに去っていった
…あれ、走っているんじゃないでしょうか?
じゃなくて…えええ?
「ぶ、部長…?」
「…ああ。テニス部のな。」
あ、だめ
ちょっとクラリとした
…なんだそれ
「完璧な人って、いるんですね…」
「?」
「…私、あきらめませんから。」
「…?」
「とりあえず、書記目指します!」
「……?」
くる (踵を返した)
だっ (走ろうと)
ぐい (したが捕まった)
「廊下は走るな。」
「…すみません。」
それが、出会い
「覚えてる?」
「…さぁな。」
「…あれから廊下走ってなかったのに、呼び止めたくせに。」
「…」
「手塚さんの方から。」
「…お前が、また走りそうな雰囲気だったからだ。」
「へー」
「…」
「まぁでもあれだね、」
「なんだ?」
「夢物語じゃなかったね。」
「夢物語…?」
「ふふふ。」
書記にはなれなかったが
貴方の彼女にはなれました
廊下で、恋に落ちて
end