わしの人魚








海にいるのは

あれは人魚ではないのです

海にいるのは

あれは浪ばかり






私の一方的な一目惚れでした

一目惚れに一方的とかそうでないとか、あるっけ?

まぁいいや





とにかく私は彼に恋をした

美しい瞳と瞳と顔と心に

心は、透けて見えた





「見えねぇだろ。」

「見えたって。」

「どんな。」

「顔だけ人間であとは鳥。」

「化け物だろうがそれは。」





セイレーン

半分人間半魚の美しき海の化け物

美しい歌声と、美しい容姿で旅人を惑わす





「あとべは、セイレーン?」

「それをいうなら女のお前がセイレーンじゃねぇのか。」

「いや、美しくないから。惑わしてないし?」

「俺も惑わした覚えはねぇな。」





うそ、うそ

惑わした、惑わした

その瞳と声と顔と身体としぐさが全て





ずるずるずるずると引き込まれて

あぁ私はオデュッセイアにはなれなかった

縄を自ら食いちぎってしまった





「何の話だ?」

「ギリシアとトロイエの戦争で勝ちを導いた英雄オデュッセイア。

彼はセイレーンの惑わしに負けないように自らを縄でくくって動けないようにした。

そして彼は誘惑に勝った。美しきセイレーンの声と姿に。」

「お前は?」

「負けたから、貴方が…好きになってしまった。」





プールが見える

濁った汚い水溜り

ゴミと何かの死骸が浮いた巨大な水溜り





「セイレーンは、下半身が艶かしい魚の足ではなく、鳥だとも言われていた、らしい、よ。」

「それで、鳥。」

「うーんけれどやっぱ跡部は跡部だろうね。」

「当たり前だろ。…やっぱお前がセイレーンだな、。」

「どうして?」

「俺にとってなんでもない存在だったお前は、俺を惑わして好きという感情を生ませた…からか?」





…愛の告白、返し?

今、この場で言っちゃうわけ?

困るなぁ、言い出したの私だけど

いや予想外で困ってるんだけど




あ・チャイムなちゃった

お昼の時間終わるなぁ

しかたないから跡部君の5限目の時間もらおう

うん、その権利はあるハズだ




「あの、一緒にプール見に行きませんか、セイレーンでも探しに。」

「バーカ。」

「じゃあ正式な愛の告白と受け取っちゃうけど。」

「じゃあお前も認めるんだな、セイレーン。」

「…私が、惑わされたんだってば…」






彼は笑っていた










end