「あ。」
ばさりと部活日誌が机の向こう側へ落下した
立ち上がって拾うのが面倒で
腰だけ浮かし机のむこうへ手を伸ばしてみた
まだ誰もいない部室
一人、机にお腹をはりつけさせ
爪先立ちで、懸命に手を伸ばしてみる
「届かない〜…くっそ〜…」
「…」
「ん?」
背後に気配を感じて
少し体をおこして振り返った
何故か間抜け顔で
赤也がドアの前につったっていた
「赤也じゃん、おはよー。」
「……。」
「何つったってんの?早いねーくるの。」
「……あー…。」
よっこらせ、とばばくさく体を起こし
しかたなく、椅子から立ち上がり
結局手が拾えずにいた日誌を拾った
「私もさー今日先生出張でHR早く終わったんだ。」
「…そう、なんスか。」
「うん。………どしたの赤也?」
どうしたんだろうか
このお調子者の二年生は
気持ち顔が赤い気がするのは気のせいだろうか
「なんでも、ないッス。」
「気になるなぁ…なんかあった?」
「いや、全然!なんにも!」
うわ、怪しい
バカだこいつ
普段から、言動おかしいけど
「私と二人っきりで緊張してるとか。」
「えっ!?いや、そりゃ先輩と二人っきりは嬉しいッス…」
「素直だねー若いねーお姉さんは嬉しいよ。」
「一歳しか変わんないじゃないッスか。」
ちょっと不服そうな顔をする赤也
いつもの調子に
私は気のせいか、と思ってまた日誌に目をやる
「……あー先輩。」
「ん?」
「…あ、やっぱなんでもないっス。」
「……なぁに。赤也、さっきから。」
「…あ、や、…」
じぃと、私はむかいの椅子に座った赤也を見た
なんだ、こいつ
惚れてるのか!私に!
「いや、惚れてるのは間違いないッスけど…」
「臆面もなく言うなぁ。若いって素晴らしい。」
「だから一歳しか違わねぇし!すぐ流す…」
「流してないよー」
「じゃあ先輩の好きな人って誰っスか。」
「じゃあさっきから何ドモってるのか、吐け。」
さらり、と私はまた流してやって
追求した
また、赤也はドモりだした
「や、だから、その」
「んー?お姉さんにいえないの?」
「お姉さんって…」
「あ・か・や?」
「〜〜〜〜〜ッ」
おーお調子モンの珍しい表情だ
しかし、本当になんなんだろうか
告白でもするか?なんて。
「その…」
「だから何。」
「…言っても怒らないッスか?」
「?怒らないよ。」
「…先輩。」
「何?」
「パンツ見えてたッスよ。さっき。」
「……。」
「………。」
「…………。」
ガチャ
「うぃーっす。今日も頑張るぜぃっっと。」
「ん、二人とも早いの。」
「まず腹ごしらえでもするかなっ♪」
「ブン太、お前さんさっきも何か食っとったじゃろ。」
「別バラ別バラ〜」
「「…。」」
がやがやと、他の部員達が入ってきた
先に来ていた、その二人は
きちんと椅子に座っている
「…お前ら、どした?」
「へっ?あ、先輩、ちーっす…」
「うちの可愛いマネージャーさんは挨拶してくれんのか?」
「あ、えーっと…それが…」
赤也はどもりながら、弁解しようとする
この二人にさっきの話が、バレたら
羨ましがられ…いや、殺されるかも
「あのー…先輩?大丈夫っすか?」
おそるおそる
無表情で固まったままの彼女を
赤也は覗き込んだ
「――――――――赤也のすけべ!」
「えぇッ!だって先輩が見せてたんじゃないッスか!」
「誰か見せるか!てか本当に見たの!?」
「え、あ、こう、チラっと…赤い」
「ピンクだッ!」
「…」
「…」
「―――ばーか!!!!」
ばしんッと
持っていた日誌を
赤也の顔面にぶつけた
「…先輩。」
「…何。」
「…照れてる顔も可愛いっス。」
「………」
二度目の、乾いた音が響いた
悔しい
いつもは、私がからかってやるのに
本当に悔しいから、恥ずかしいから
ぽかんとしていた仁王とブン太の二人に
若干脚色してバラした
うん、これで今日一日苛められるな
「先輩っ酷いっすよ!俺覗いたわけじゃないのに!」
「見たことには変わりないでしょ。」
「…う゛。」
「…」
私はぎゅっとスカートの裾を押さえながら
彼のの名前を呼んだ
赤也は情けない顔で、私を見上げていた
「…許してないから。」
「え?」
「赤也じゃなかったら。」
「…え?どゆ意味っすか?」
「あ、真田と幸村だ。バラしてこよっと☆」
「ちょそれだはッ!じゃなくて先輩!今の…」
晴天の空の下
赤也の叫びと、のちに悲鳴が響いたとか
響かなかったとか
神様は悪戯がお好き