青学テニス部、部活真っ最中
今日、バレンタインであるこの日
いつも以上の女子ギャラリーに囲まれていた
集中できないという先生の判断により
今日は早めに部活は切り上げられるらしい
彼らにはいい迷惑なのか、でも女の子も必死よ
そして、そんなテニス部の中に兄がいる私は
その兄から『待っててね。』というお達しがきたので
大人しく待機中
どうせ、私を女の子よけにでもする気だろう
…よけにならないと思うんだけど
ただの妹ですから
――――そんなギャラリーの黄色い声と
考えに浸っていたせいで
私は、背後からの気配に気づかなかった
「ちゃん☆」
「ッ…え?」
「…え?嘘ッ!俺忘れられた!?」
「ち違いますっ!なんでこんなとこにいるんですか…千石さん!!」
「えへへー久しぶり♪」
「お久し、ぶりです…」
いつだったか、彼が青学に来た時に始めて会った
その時も急に話かけられた
しかもその時の第一声は『可愛い…。』
「あ、あの…部活はどうしたんですか?」
「今日は伴爺の都合でお休み。ちょーらっきー♪」
「ラッキーなんですか…でもウチはまだ部活中ですよ?誰かに用…?」
「うん、さっきからつまらなそうーな顔で見てたもんね。」
「え、いやっ、そんな…ん?」
さっきから?もしかしてこの人…
満面の笑顔を貼り付ける彼を
呆れ気味で見上げた
「千石さん、見てたんですか…」
「清純って呼んで欲しいなぁって、いつもメールで言ってるじゃーん。」
「…きっ…それは恥ずか…じゃなくてッむっ」
「しー!テニス部の人達にバレちゃうから。静かにね?」
叫びかけた口をそっと手で押さえられ
近くまで顔をよせ、笑顔で制される
その距離に、顔が熱くなる…聞こえるわけないのに
―――彼とは、その青学に来て、可愛いと唐突に言われ
それからうまくノせられ、メルアドを交換し
ちょくちょくメールをしている仲なのだが…
こうして会うのは久しぶりだった
彼とのメールは楽しい…でも
彼の「可愛い」だけは理解できない
私は別に全然可愛くなんかないのに
「んー?どうしたの?難しい顔しちゃって…」
「あ、私…兄待ってるから。…女テニならアッチですよ。」
可愛くないこと言って、顔を横にそらした
待っているのは、嘘じゃないし
そして逃げるようにそこを去ろうとした
「あ、待って!ちゃ…」
「ちゃーん!!どこいったんだろーにゃ。」
「待ってろって…言っておいたんだけどね。」
「んもーこんなに人がいたら探せないよー。」
「あ、お兄ちゃんと英二先輩…それじゃ、千石さん…ま、た。」
そう言って兄…不二周助達の声がする方に向かおうとした
…のだけれど
「わっ」
「ちょっと来てっ!」
「えぇ!?ちょっ…」
ぎゅと手首をつかまれ
断る暇もなく
彼は走り出した
「〜〜・・・はぁっ、は、…千石さん苦しっ…」
「あ、ごめんごめん!…ここらへんでいいかな・・・大丈夫?」
やっと立ち止まり、なんとか息を整える
コートからだいぶはなれた、校舎の裏
木々が生い茂る、裏にしては案外綺麗な場所
気のせいだろうか…今日この日だからだろうか
周りには男子生徒&女子生徒がいつも以上にいる気が…
けれど目の前の彼は
そんなんものは目に入らないようで
「何、するんですか…」
「女テニはいいの!ちゃんに会いに来たんだから。」
「…私、に?」
「そ、本題はココからー。丁度いい場所みたいだしね♪」
「本題…?」
いつものことだけれど
彼の言うことは、本当に唐突で
私は頭の上に?マークを浮かべ彼を見た
「はい。」
「え?」
そして、なにやらポケットから出してきて
ポンと手のひらに乗せられた
…ピンクのリボンに包まれた、可愛らしいソレ
「…これって…」
「今日、なんの日か知ってる?」
「バ、バレンタイン…?」
「正解♪」
「で、でもっバレンタインって…」
「海外では男の人が渡すこともあるんだよ?」
千石はそう言って
今まで以上ににこっと微笑んだ
その笑顔にどきりとする
「あ、えっと…」
「俺ね、ちゃんのことほんとに好きなの。」
「えっ…」
「それが、俺の気持ち。いっぱいこもってるからね。」
「…き、もち。」
いつものような笑顔と
普段みない真剣な目だった
とても、それは優しげだったけど
「…しい。」
「え?ごめん、何?」
「嬉、しい…。」
「…本当に?」
恥ずかしくて
本音だったから、尚恥ずかしくて
伏せながら、コクリと首だけで肯定した
わざわざ
これを届けにきてくれたのか
「〜〜〜〜やっぱ俺って超ラッキー!!」
「こっ幸運とか、そういう問題じゃないんじゃ…っ」
「ちゃんと会えたことが、俺にとって生まれて一番の幸運だよ。」
そんなオーバーな、と思いつつ
自分の顔が今までにないくらい
真っ赤に染まっていくのが分かる
「急に来ちゃってごめんね?」
「ううん、えっと…」
「今日はその言葉を聞けただけで充分!君のこわぁいお兄ちゃんに見つかるまえに退散するよ♪」
「あっ忘れてた…探してるかも…」
「忘れちゃってたの?嬉しすぎてとか?♪」
「なっ…」
「ごめんごめん♪冗談だよ。そういうところが本当可愛いよね。」
臆面もなく笑顔で彼はまた言う
その言葉は嬉しいんだけど…
どうしても
「わ、私、可愛くなんかないと思う…何度も言ってくれるけど…」
「え?なーに言ってるの。」
「だって…」
「すぐそうやって、気持ちが顔に出るとことか、凄く可愛い。」
「…」
「ちょっと不服そうな顔とか、すぐ赤くなる顔とか、始めて会った時もそうだった。」
「…そ、そんなこと…」
強く言い返せなくて
語尾が弱まる
それでも、彼は続ける
「でもやっぱ全部だね♪」
「っ……あ、ありがとう…ございます。」
「あはは、さすがにちょっと恥ずかしいかも。」
「…なんですか、それ。」
彼につられて私も笑った
彼が私を
ちゃんと見ててくれたことが嬉しくて
「あの……き、清純さん!」
「へっ?」
「…あの、お兄ちゃんに先帰ってもらうから…待っててくれる?」
「…全然かまわないよ!喜んで。」
実は、渡したいものがあるのは、まだ黙っておいた
ちゃんと用意していたことは…後で会った時に言おう
彼の笑顔を楽しみにして
おまけ
「――――ふぅん、そういうコト。いないと思ったら…。」
「あッお兄ちゃん!?い、いつの間にっ…」
「げっ…あ、いや、…久しぶり〜♪不二君♪」
「…久しぶり。、どういうことかな?」
「いや、えっと、あの、」
「…千石クン?そう易々と、と付き合えると思わない方がいいよ?」
「お、お兄ちゃ…」
「…俺って、ちょっとアンラッキー…かも?」
覚悟はいいか