動販売機前にて









「あ、もう無理。本気でノド乾いた。自販機行ってくるね。」





放課後の教室は暑かった

友達と一緒にテスト勉強していたのだけれど

ノドの乾きがピークにきていた





ぱたぱたと蒸す校舎内を歩いて

自販機を目指す

コップにしようか、ペットボトルにしようか、パックにしようか





「あ。」





自販機3メートル手前で思わず足がとまった

あぁラッキーなのかも

ラッキーなのかな




「跡部君だ…」




なにやら不機嫌そうな顔で

彼は自販機の前で立ち尽くしていた

ほしいものが売り切れだったのか




「―――おい。」


「え」




いつの間にか彼はこちらを向いていて

そしてぼけっとそこに立ち尽くしていた私に呼びかけていた

あ、ちょっと待って予想外だ




「小銭、もってねぇか?」


「え?あ、あ、うん。あるよ。」




彼の財布から覗くは万札

いや、持ち歩くなよ中学生

ちょっと今悲しくなったし私




「大きいお金、使えないみたいだね。」

「あぁ。使えねぇマジ。」

「何、飲むの?」




財布の小銭いれの部分をじゃらじゃらとさせて

100円玉を探す

あと10円玉




「ミネラルウォーター。」

「これ?」

「あぁ。」





がこん

ぱか

冷たいペットボトルを取り出す




「はい。」

「悪ぃ。今度必ず返す。」

「いいよ、これくらい。」

「…お前は、何飲むんだ?」




あれ、さっさと行くと思ったのに

え、どうしよう

考えてなかった、なんか、焦る




あぁしかも今度返すって言ったよね

彼のことだ嘘はない

あぁまた会えるのかなぁ…友達とかに頼みそうだ




「―――あ、っと…えあーファンタ。」

「…コップでいいのか?」

「氷がほしいから、コップがいい。」




100円玉を入れて

待つ

待つって…跡部さん?




彼は、かがんで、手を自販機にかけて

眺めていた

コップに氷とファンタが注がれるのを、透明のドアの外側から




変な、光景

ピと音がなって

彼は小さなそのドアをあけて

ファンタの注がれたコップを取り出す





「ん。」

「え、あ、ありがとう…。」

「…そんなんバッカ飲んでっと太るぞ、お前。」

「うっ…き、気をつけます…」




彼は笑っていた

楽しそうに

そして、私に背を向けて歩き出した




あぁ最後に、何か、声をかけたい

じゃなきゃ、彼と話す機会なんてきっともう

そう思ったら、彼が振り返った




「――――おい…名前。お前の名前。」

「え」

「顔は知ってんだよ、名前だけしらねぇ教えろ。」

「…。」

「…。」

「…うん。」

「またな。」




クールな顔で彼はそう言った

けれどその声色はどこか気恥ずかしそうで

気のせいでしょうか神様




でも私の顔はもう緩んでしまっています

氷が、手の中でジワジワ溶けていくのを感じる

あぁでも今はこのジュースよりも




彼の今の表情と

彼の言葉が何よりも大事なんです




あー

暑い

熱い

…暑くてよかった








end