葉をちょうだい










「お疲れーっす。」

「お疲れさまー。」





本日の部活終了

いつも通り

皆部室に戻り、着替えて、帰宅




一年生がコート整備するから

マネの私もお手伝い

それもいつも通り




ただいつも通りじゃないのは

今日が、特別な日だということ

それは、彼にとって

だから、自分にとっても





「おっつー。」

「岳人。…美味しそうなポッキーだねえ。」

「うまい。」

「…皆まだ仕事中ー慎め!特に私の前!」

「まーまー、それよりもさ」

「もー…何?」

「侑士に、まだ誕生日おめでとう言ってねーだろ。」

「…」





そう、今日は彼の誕生日だった

もちろん、知っていた

だって、友達だもの




クラスが一緒で

昼休みとかよく一緒にご飯食べたり

岳人とかも一緒だけど、それで




あと、たまに一緒に帰るとか

一緒に勉強するとか

マネージャーだから、だろうけど




そして今日の朝、昼とか、部活前とか

とにかく暇な時間、空いた時間

アイツはプレゼント攻めにあっていた




それを見てたら

なんだか

妙に虚しさを感じてしまって





「…もう、皆からさんざん言ってもらってるじゃん。」

言ってねーじゃん。」

「別にいいじゃん…」

「何で。俺には先月言ってくれたっしょ。」

「だって、岳人は、」

「俺は?」





友達だから

…じゃあ忍足は?

…友達…





「…まだ仕事残ってるから。」

「…じゃー、一緒に帰ろーぜ。」

「え?皆と一緒に帰らないの?」

「ううん、待ってるから二人で帰らねぇ?」

「別に、いいけど…。」

「んじゃ、また後でなー!」




バタバタと岳人は走っていった

なんなのさ












…私は、勝手に期待してたのかもしれない

私は他の子とは違うって

他の子よりも、少し仲がいいって




おめでとうってプレゼント渡してる女の子達

それに笑顔で応える忍足

どうしてだろう、私はできなかった





違う

その他大勢と同じことしたくなかったのかもしれない

他の子とは違うと、思いたい

勝手なプライドのせいのせいかもしれない




「バカみたい。私。」















?」

「…忍足。」





岳人にまた後で、と言われ

着替えていつものように、コート横で待っていたら

…そこに来たのは岳人じゃなかった





「「岳人は?」」

「…。」

「…。」

「図られたな。何しとんねん…アイツ。」

「…追いかけたら?まだ皆いるんじゃない。」

「んな面倒なことせぇへんよ。」

「…私、帰るよ。」

「…。」





どうしてだろうか

何故か気まずかった

一緒に帰るなんてはじめてじゃないのに




ただ、おめでとうと言ってないだけなのに

いいじゃないか、言わなくたって

もうたくさん言われてるんだから、なんて一人言い訳する






「暗なると、もう寒いなぁ。」

「んー…そうだね。寒いの、嫌だなあ…」

「せやなぁ…寒がりやしな。」

「うん、苦手。」

「今も寒い?」

「?寒いよ。忍足も寒いって…」





言いかけたとこで

ぎゅ、と手を捕まれた

あったかい…じゃなくて





「な、何?」

「ん?寒いんやろ。」

「いや、だから、って、ちょ」

「嫌なん?」

「…誰かに、見られたら、困るし。」

「俺は困らんけど。」

「何言って、今日だっていっぱい、」

「いっぱい?」





言葉が詰まる

何を言おうとしてるのだ

これじゃあまるで




ただの、ヤキモチじゃないか

恋人でもないのに

ただの友達なのに





。」

「…。」





ぴた、と忍足は途中で立ち止まって

手を離した

彼が目の前に立つ





「なぁ」

「…な、なに…」





彼は、ちょっと悲しそうな、複雑な顔をしていた

と思ったら、何の意味があるのか

胸あたりまである私の髪の先っぽを、軽く引っ張った





「言うて。」

「え?」





そのまま軽く髪を引かれる

痛くないのだが、引かれるまま思わず前のめりになる

忍足の顔が近かった





「な。」

「なに、何を?」





分かってるクセに

本当は言いたくてしかたなかったのに

一番に、誰よりも早く、一番思いをこめて





「…他の子に…いっぱい…言ってもらったでしょ。」

「せやな。」

「…プレ、ゼントも…」

「あぁ。」

「…私、何もないし…」

「せやから、」





「言うて」彼が、静かに言う

心臓が痛い

私の負けだ





「…誕生日、おめでと、侑士。」





子供みたいに…忍足は笑った

涙で枕濡らすとこやった

なんて言いながら




すとんと私の肩に額をのせて

嬉しそうに言う忍足の言葉を耳で聞いて

…私が、涙が出そうになった








end