「おはようさん、。」

「…おはよう、詐欺師。」

「…えぇ挨拶じゃの。」

「…。」









私は、無表情で不平を口にする仁王を見た

嫌味に応えてないその顔に

朝っぱらからいらっとした

挨拶しなきゃ良かったかななんて








にしても、寒い、めっちゃ寒い

休日の部活動

マネージャーな私も朝っぱらから







そして、私は

この詐欺師―ペテン師が、どうも苦手である

なんていうか、全て見透かされているようで









(ブンちゃんとか、来ないかな…気まずい…)

(それ以前に、鍵を持ってる人早く…)

(帰る時自分でもらっとけば良かった。)










ひたすら、心の中で一人ごとを言っていた

会話がないことを、気にしないように

彼を気にしないように










「…。」

「…。」

「…。」

「…。」










静か

寒い

誰も来ない










「…誰も、来おへんのう。」

「…うん。困るね。」

「困るんか。」

「寒いから。」










沈黙

少し、緊張

そして、寒い










「なぁ、何、警戒しよる?」

「えっ」










しまった

思わず過剰反応してしまった…

私のバカ








「ん。」

「ん?」









でも彼は特に気にした様子もなく

それを差し出してきた

何をって、彼が首に巻いていた

グレーのマフラーを








「…、俺の名前、知っちょる?」

「…詐欺師?」

「…騙したりせんよ、お前だけは。」








くるくると、マフラーを私の首に巻きながら

仁王は、らしくない言葉を吐いた

だから、私はピンときた









「もしかして、君、比呂士くん?」

「…は?」

「あ、でもそれじゃ逆か…。」









その行為と言葉が優しいから

比呂土くんが仁王に化けてるのかと思ったけど

でも、ちょっと詐欺師の皮を剥がせたようだ









「は?って今、普通の喋り方ぽかった。」

「…あー…」

「うわ、面白い。標準語?」

「…なんで、そんな面白そうなんじゃ。」









寒さでおかしくなってきたのかな私

でも仁王のスキを見たみたいで

嬉しくなってしまった








仁王の無表情が、少し崩れた気がする

なんだか、不可解って感じの顔をしている

もしかして、私今結構勝ってるかも








「…あ、比呂土くんだー。」

「…。」









遠くに、比呂士くんの姿を発見した

真田がまだってことは

鍵を持てるのは彼かと

思考回路をそちらに向けたところで










「…なぁ。柳生来る前に、一つええか?」

「何?」

「名前で呼んでみんしゃい。俺のこと。」

「え?」

「柳生呼ぶみたいに。」

「比呂士くん?」

「…名前知らんっちゅうなら…」

「…なら?」










「キスする。」














詐欺師は、無表情だった

標準語だった

遠くから、赤也の声もしてきた気もする










「ごめん。」

「ん?」

「下の名前、なんだっけ?マジで。」

「…。」









詐欺師が、ちょっと傷ついた顔をした

すぐに元に戻ったけれど

したらまた直ぐに

今度は不機嫌さを醸し出した表情をした









「嘘でも、傷つくの…」

「…。」

「詐欺師呼ばれるのは別にええけどな、」

「ねぇ、」

「…なんじゃ?思い出したか?」









「キスしてくれないの?」








「は」

















二度目の

スキをついた

圧勝だ、今日は私の









「…さて、部活だ部活だ。」

先輩ちっす。」

「比呂士くんおはよ!赤也もおはよー!」

「お早う御座います。」

「寒ぃのに朝から元気っすねぇ」








仁王が何か言いかけたとこで

思いっきり声を張って、二人に声をかけた

それから鍵を預かりさっさと準備に向かう









「…仁王君?どうかしました?」

「くっそ…」

「仁王?」

「手強いの…」

「…?」














その後

気分よく、準備を始めようとしたら

赤也に巻いていた仁王のマフラーを指摘され

さんざんからかわれる事になるのだけれど





ょっとした意趣返し