たし状 








「…ん〜〜…」

「…」

「…う〜〜ん…」

「…そんな悩むこと?」

「だって一年に一度のスペシャルサンクスデイだよ!」

「違わない?それ。」






そう言って不二はため息を吐いた

私は朝からずっと唸っていた

彼はもう一度深くため息を吐いて言った






「誕生日おめでとうって言って渡せばいいでしょ。」

「どんな顔で?」

「笑顔で。」

「どこで?」

「屋上とか。」

「どうやって呼び出すの…?」

「協力してあげるから。」

「…ん〜〜〜…」





不二はまた、深く深くため息を吐いた

いい加減にしろと言いたいんだろう

わかってる、わかってるんだってば






…」

「ん?」

「誕生日、終わっちゃうよ?」

「…そそそそれは困る。」

「動揺しなくていいから。」





用意された、シンプルな包みのソレ

彼が貰って恥ずかしくないように

不二にもいいねって言ってもらえた





「いっそ、もう、なかったことにしようかな?」

「彼自身を?」

「いやいやいや違うよ!」

「違うんだ。」

「真顔で言わんといてください。」

。」

「え?」

「いい加減にしようか。」





私は固まった

ごくりと唾を飲む

突き刺さるような視線を感じる





「…分かった。いってくる。」

「呼び出すの協力しようか?」

「…大丈夫、頑張る。」

「うん、頑張って…、」

「ん?」

「渡すまで戻ってこないでね。」

「…はい。」





冗談交じりで言うならいいけどさ

真顔で?真顔で言うの?

と思いつつ私は重かった腰をやっと上げた

昼休みの終わりまで、あまりもう時間はない
















今日は彼の、手塚君の誕生日だった

朝から、いや、もう数週間前から悩んでいた

そして迎えた本日

やっぱりどうしようもなく緊張して





彼、手塚君とは普通に、普通の友達だ



「あ、おはよう…。」
「おはよう。」
「…朝練お疲れ。」
「あぁ。」
「…頑張るね。」
「いや…」



…くらいの

くらいの!

…会話を成り立たせることが出来るくらいの…友達だ





まぁ言ってしまえば一目惚れに近い感じで

元々同じクラスの不二に誘われて

テニスの試合を見に行った時に





でもそれ以上接点がなくて

さりげなく不二に紹介して頂き

なんとか軽い会話はできるようになったのだけれど





さて、不二の申し出を断った以上

彼をとにかく呼び出さなくては

流石に皆のいる前とか無理なんで

…どうしようか

どうしよう








私は考えた














手塚はちょうど竜崎先生に呼び出され

戻ってきたところだった

次の授業はなんだったかと

机の中に手を入れた時だった


一枚の紙





「屋上で待つ」






果たし状か…

(彼はその時本気でそう捉えたとか)

名前もないが、無視しておくのもどうかと

彼は屋上へ向かうことにした
















そして、屋上

今に至る






「…なんだ、だったのか。」

「だっ誰だと…?」

「戦いを申し込まれてるのかと思ってな。」

「…すみません変な置き手紙ですみません。」

(何て書くか悩みすぎて嫌になってああなったんだよ)

「いや、それはいいが。」

「…」

「…」






沈黙

無表情

時折、爽やかな風





「あああのですね、」

「何だ?」

「ささささっきいなかったね!あ、だから置手紙したんだけど…」

「あぁ、竜崎年生に用があってな。あと…」

「あと?」

「…下級生に呼び出されていた。」

「…」






あ、言い淀んだ

ってことはあれだね

そりゃそうだよなぁ

皆知ってますよね、彼の誕生日くらい






。」

「はい。」

「…いや、なんでもない。」

「はい?」





ちょっとなんか落ち込んで

黄昏ていたら

(なんだか負けた気分だった)

珍しく彼が何か言いかけてやめた





無言

無表情

時折、ちょっと困った顔





何やってるんだ私

呼び出しておいて

そうだこのまま戻ったら不二に殺S

とにかく、頑張れ自分





「あのー…」





意を決した





「いらないと、思うかも…いや、いらないかもしれないんだけど…」





3メートルくらいあいていた間を

詰めた





「なんてゆうか、えーっと…」





シンプルな包装に包まれた

彼への誕生日プレゼント





「…これ。」





顔は見なかった

そんな余裕なくて

あぁおめでとうって言わなきゃ





無言

表情判読不能

下を見ているから (私が)





「…ありがとう。」





その言葉に、やっと顔を上げた

どういたしまして

と、言おうとしたが先に彼が口を開いた





「期待、していたかもしれない…」

「え?」

に貰うのを。」

「…え」

「―…一番嬉しい、気がする。」

「…あ」





え、今笑った?



てか、今の台詞なんだ





「ッた」

「た?」

「…誕生日、おめでとう。」

「ああ、ありがとう。」














無言

無表情…じゃなく

とても、柔らかい、彼の表情







end