調理実習
家庭科の時間、本日は調理実習
班ごとに別れて作業を開始しましょう
なお、包丁の取り扱いには十分注意しましょう
「ご飯、豆腐の味噌汁、卵焼き、お漬物。」
「さん、料理できる?」
「失礼な不二さん。余裕っす。」
「ふふ、そっか。」
家庭科の教科書をぼん、とおきながら
私は同じ班の不二君と話しつつ
やる気満々で腕を捲くった
私と不二君は卵焼き担当
「卵焼き。…電子レンジでやった方が早いかな?」
「面白い冗談だね。」
「え?」
沈黙
「ごめんさん。お願いがあるんだけど。」
「え?なに、不二君。」
「お米といでてもらえるかな?」
「…?任せといて!」
あれ、何がいけなかったんだろう
一瞬彼の目が恐ろしく鋭かった気がするんだけど
特に「面白い冗談だね」の後あたり
「ね、さんって、料理する?」
「さっきも聞かなかったっけー?」
「さっきは、できる?って聞いたんだよ。」
「あ、米粒が逃げる…。ああ、そっか。うん、しないよ!」
「しないんだ?」
「しようとすると、駄目って。」
懸命だね、さんのお母さん
そう言って不二君は凄くにこやかに笑った
よく分からんが、彼が笑ってたので微笑み返しておいた
「米、洗い終わりました!」
「ありがとう。じゃ、次お湯わかしといてもらってくれる?」
「任せといて!班員分…4人分のお湯ね!」
「気をつけてね。」
「―――――――――あつッ!」
「ッ」
ガスで火傷
おお、案外痛い、ジンジンする
そのままぼけっとしてたら、思いっきり腕を引かれた
「…ひりひりする?」
「うん。素早いね、不二君。」
「…本当に、君は目が離せないね。」
「面目ない…ってうわっ」
「?」
「不二君!手!手!赤!!」
「…赤?」
不二君が、私の火傷した指をとって
流水につけてくれているのだが
そこに一筋赤いものが流れてるのに気づいた
「不二君、手ぇ切ってる!」
「ああ、さっきビックリして。」
「も、申し訳ない…。」
「気にしないで。それより、指大丈夫?」
「私はいいから。ちょっと待って。」
絆創膏を取り出し、ぺりと剥がした
彼の指にくるると巻いた
深くないみたいで良かった
「私よく怪我するから常備してるんだよねー」
「…ありがとう、嬉しい。」
「?」
「ああ、気にしないで。」
「いや、えーっと…」
「僕がさんのこと、勝手に気にかけすぎてただけだから。」
「私ぶきっちょらしいからねー…そんなことないと思うんだけど。」
「うん、絆創膏貼るの慣れてるもんね。」
「そうそう。」
ん?今の褒められたんじゃない?
それに気にかけすぎって何だろう?
急に目の前の彼が不思議に思えてきた
「…不二君なんか、楽しそう。」
「そう?」
「うん、怪我してるのに。」
「さんの火傷がたいしたことなくてほっとしてるんだよ。」
「ふーん?」
「あと、絆創膏。」
「常備してて正解だったね!」
「…んーまぁ、そうだね。……中々手強いな。」
「え?」
「ううん。続きやろうか。」
なんとなく、続きの作業はさっきよりも
楽しく感じた
end