「…何してるの?」
「しっ静かに、景ちゃんに聞こえちゃう。」
「聞こえるわけないでしょ。まだHR中だよ。」
「あははそうだね。」
麗らかな午後
部活の始まる数分前
同じクラスである滝の髪をいじって遊んでいる
同じクラスだから
早めにHRが終わり、時間が出来るのも一緒
だから、今誰もいない静かな部室でまったり中
「やっぱ、萩君の髪、綺麗。」
「の髪も、柔らかくて好きだよ。」
「へへー」
へらと表情を崩す
滝は首をひねり
後ろに立つを見上げた
「何?」
「ん、複雑だなぁって。」
「何が?」
「君はカレにそっくりだから。」
私は双子だ、そう「景ちゃん」こと跡部景吾と
顔は見事にそっくりらしい
けれど性格は正反対らしい
「えっと、それは褒められてる?」
「どうかな?」
「…滝君は景ちゃんと一緒なの、嫌?」
「まさか。のその顔、大好きだよ。」
…ばっと顔が熱くなった
そんなにストレートに言われると思わなかった
恥ずかしいけど、でも嬉しかった
「萩君は…急に、すごいことを言うなぁ…」
「事実だよ。っていたた、髪ひっぱってる。」
「あ、ごめん、ちゃんと結ぶね。」
「本当に結ぶんだ。」
「今日の部活は三つ編みで。」
「あはは、断るよ。」
笑顔で断られた
残念
でも、結ぶ手は止めなかった
「ねぇ…滝君。」
「何?。」
「えっと…あの、さ、多分今しかチャンスないから…」
「?」
「これ。」
ばんっ
「うぃーーーっす!ってはえーな二人!」
「がっくん…におっしーも…お疲れ。」
「…なんや、ナイスタイミングっちゅうやつか?」
「あ、えっと、うーん…」
私が今、手にもっているのは
チョコレート
朝皆に既にあげたやつとは、ちょっと違うチョコ
どうしよう
なんか、固まってしまった
中途半端にそれを差し出したまま
「」
「…え?」
「それ、僕に?」
「え、あ、うん。あの、もらってくれるなら…」
「勿論、もらうよ。」
そう言って滝君は、いつものように
にっこり微笑んでくれた
それにほっとして、私も微笑み返した
そして、そのまま渡そうと思ったのだけれど
「…何してんだ、。」
「あ…、景ちゃん。」
「またべたべたくっつきやがって。」
「そんなことないよ。えーっと、髪結んでただけ。」
「そうか。じゃあその手にもってるモノはなんだ。」
「これ?これは、えーっと。」
真打登場…じゃなくて、私の「片割れ」登場
ぎろりと滝を睨みながら
滝はにっこりとそちらにも微笑み返す
「跡部、今日大変だったんじゃない。」
「…ふん、まぁな。」
「さすが、な御回答で。」
「あ、そうだ、私も景ちゃんに渡してって渡されたチョコ。」
「いらねぇ。」
「そう言わずに。私のは受け取ってくれたじゃん。」
「のだからな。」
そう言って、景ちゃんは
チョコを持っている私の手をぐいととって、引き寄せた
いつものことだから気にしない
「俺のとは、また違うやつ渡すのか。」
「…景ちゃんも、皆のとは違うよ。」
「滝のとも違うだろ。」
「うーん…そうだねぇ…」
顎に手をかけられて
間近でその目に見据えられる
顔は同じでも、その目は違う
私にはない強さをもっているその瞳
「似てるねぇ…」
「え?なに、滝君。」
「怖いくらい二人って似てるけど…」
「けど…?」
「やっぱの方が100倍可愛いね。」
「…滝、君。」
また、顔が熱くなる
景ちゃんの前なんだけど
多分、また機嫌が悪くなりそうだけど
「…滝、てめえ、いい度胸してんじゃねぇか。」
「そう?だってむかつくもの。」
「あ?むかつくって、何がだよ。」
「君はいっつもの傍にいられて、僕とは違う特別なチョコをもらってるから。」
「…当然だろ。」
妙な、雰囲気が流れる
岳人と忍足は完全に傍観にまわっている
いつものことだから
でも、今日はちょっと特別で
大事な私の片割れも
今日はちょっと、ごめんねということで
「滝君。」
「…なに?」
「これ、受け取ってください。」
「…」
景ちゃんの手をするりと抜けて
私はいつにない
ちょっと緊張した真面目な顔で、それを差し出した
じっと、滝はそれを見つめる
その間に
少し不安になる
「凄く嬉しい。」
「…あ。」
「ありがとう、。」
「どういたしまして。…私こそ、ありがとう。」
萩君はいつも以上に
すごく柔らかく微笑んでくれた
ぽんと、萩君の手の上にチョコをのせる
そしたら、またぐいと後ろに引かれた
「…もう、用事は済んだな。」
「景ちゃん…子供みたい。」
「あぁ?」
「嘘、嘘。やきもちやさんだねぇ。」
「…さっさと準備しろ、マネージャー。」
不服そうに睨みながら言う彼
渡すのは邪魔したりしなかった
なので、ありがとう、と小さく加えてみた
「ふふ」
「…何がおかしい、滝。」
「いや、前途多難だなぁって。」
「…当然だろ。」
「そのようで。」
それに付け加えて
萩君はもう一度、ありがとうと言ってくれた
私はやっぱり嬉しくて、どういたしましてと言った
「うーん、なんだかんだで二人の世界やな。」
「跡部いるけどな。」
「今日の部活荒れそうや。」
「困った連中だよなー。」
そんな二人の言葉通り
一方は荒れた空気、一方はどこか甘い空気
二つがまじりあったなんともいえない空気が
部活中漂ってたとか
赤い糸の先には